居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第19回/守るべきこと・・・

Life of the izakaya detective DAITEN
居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第19回    【地域別】 【時間順】 【がっかり集】



 守るべきこと・・・・


 「居酒屋」とは、酒と食事を楽しむ為の場所である。
 そして、庶民としては、出来るだけ低い予算で飲める店に入りたいのは当然である。
 しかし、「居酒屋」に求めるものは価格だけではない。
 こころよく飲める店を選びたいものである。
 やはり、感じさせてもらいたいものはお店の側の「誠実さ」だ。

 ある街でのこと。
 小さなお店があった。
 食材を選びメニューをひとつひとつ作って、酒を選び、地道な商売を続けてきたのである。
 居抜きの地味な店構えで、従業員も使わず、常連客を少しずつ獲得してきた店である。

 ある時、隣接地にずっと規模の大きな店が出来た。
 その店は、前述の小さな店の店名と自分のところの店名を並べて掲げて、同じ酒の価格を一覧で表示した看板を出した。自分の店の方が安いことを示したかったようである。
 小さな店の店主は意気消沈した。まさに「がっかり」である。

 全国展開する巨大居酒屋チェーン相手に価格競争を挑むというのならば、まだ解るような気もする。
 しかし、相手は一軒の小さなお店である。
 そういう看板を思いついて、相手の店の前に掲げてしまう。
 そんな方法をどうして思いついてしまったのだろうか。
 不可解である。

 守るべきことがやはりある。 
 
 
   ※  ※  ※


 前回で紹介したお店が399軒目となった。
 つまり、次の紹介店が400軒目ということになる。足かけ8年の月日がかかってしまった。
 読んでくださる読者がいらっしゃる限り、できるだけ続けてゆきたいと思う。
 まるで、小さな居酒屋のように・・・。

   ※  ※  ※

 追記
 その後、この誠実さを欠いたお店は、地元の方々に受け入れられることもなく撤退した。
 そして、地道な商売を続けてきたお店は今でも盛況である。


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居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第18回/どちらを向いているのか解らない・・・・

居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第18回   【地域別】 【時間順】 【がっかり集】



 どちらを向いているのか解らない・・・・


 約1年ぶりの「がっかり録」である。

 様々な理由からあちらのちらの居酒屋を探して彷徨う回数が格段に減ってしまっている。故に、飛び込みで店に入ってみて、がっかりしてしまう回数も減ったのである。

 それでも、今回は久しぶりに書いてみることにした。
 少し前のことである。ある私鉄沿線の「おしゃれな」という表現でマスコミで語られる街を歩いていた。そこから少し歩いた隣町で、ある焼き鳥店に入った。

 お店はまだ新しいようだ。入口に持ち帰り出来ることが書かれており、焼き台は外に向かっている。
 焼き鳥は1本120円だから高くもないけれど、安い訳でもない価格である。
 中に入ると、カウンター席が3席あるのみ、独り客相手の店としてはつらい。少し離れて奥には暖色の壁に囲まれ、照明を落としたスペースがあり、掘り炬燵やテーブルが並び、高めの値段設定の串焼き店のような感じである。しかし、この場所は外からはよく見えない。ゆえに、始めてのお客さんが外から中を見て、カウンター席が一杯な時は帰ってしまう可能性も高い。損である。

 サワー類、生ビールなどは400円代後半という値段設定は高い。簡単なカクテルを作れるような酒瓶が並んでいて、定番カクテルがメニューに書いてある。焼酎や日本酒もあるけれど、やはり比較的高い値段設定になっている。しかし、特に銘柄にこだわりを感じない
 食事メニューも何種類かあり、一種類だけれど「定食」も用意されている。

 来店中、店内に入ってくるお客さんは1人もいなかった。ただ、お土産の焼き鳥を買う為に何回もお客さんが来訪されて、中には1本だけ焼いてもらって食べているお婆さま等もいる。したがって、そちらの方が優先になってしまい、こちらの簡単な注文も間違えてまっていた。
 買い物帰りの主婦を狙ってのお持ち帰りの焼き鳥店なのか、独り客を相手にした定食屋兼居酒屋なのか、家族連れを相手にしているのか、学生を相手にしているのか、サラリーマンを相手にしているのか、よく解らない。 

 一言で言えば、「どちらを向いているのか解らない」という印象のお店であった。このような感じの新しいお店を時々見かける。断取りの悪さなどを見ていると、やっている方は経験の浅い方なのかもしれない。

 飼料の値上げが続いている現在の状況では、大量の飼料を必要とする牛肉は原価率がどんどん上がってゆくので、これからますます「鶏」を売るお店の方が手を出しやすいかもしれない。しかし、焼き鳥屋といっても店によってまったく違うのである。店を選ぶ側としても難しい領域である。

 何か特徴が無ければ埋もれてしまう。しかし、奇をてらった店構え、過剰な宣伝をされても疲れる。
 少なくとも、さりげない解りやすさは必要であると思う。

 どちらを向いているのか解らないお店には、やはり、足が向かない。



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居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第17回/こんな夢を見たような・・・

居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第17回   【地域別】 【時間順】 【がっかり集】



 こんな夢を見たような・・・


 ある用事を済ませた後、横浜の住宅街をあてもなく歩いていた。
 気がつくと、青く塗られた大屋根が目の前にある。
 屋根の一番高い位置に「神奈川スケートリンク」という看板があった。建物の裏側である。表側まで回り込んでみた。5歳くらいの頃の記憶がよみがえってくる。父親と母親に連れられて、このスケートリンクに来たことが何度かあった。満州生まれの父は、満州での学生時代、アイスホッケーの選手であったという。若くして死んだ父の広いリンクを高速で滑る雄姿は、本当の記憶なのか、私の脳が創り出してしまった夢の記憶なのか、もはや定かではない。スケートリンクの建物を見あげながら短い追憶の時を過ごした。

   神奈川スケートリンク ←「神奈川スケートリンク」

 神奈川スケートリンクの前は第二京浜国道(国道1号線)であり、その向こう側にはJR線の線路が通っている。やがて、京浜東北線の青い車両が通り過ぎていった。
 道の向こうを眺めていると、そこにあろうはずのない水辺が見えた。不思議に思い、道を渡ってみると、第二京浜国道の下の暗渠になっているところから川がちょうど地上に出てきていた。そこから川が始まっていたのである。川沿いを少し歩いてみることにした。
 川沿いの道はJR京浜東北線と東海道線のガード下を抜け、さらに京浜急行線の下もくぐった。

 ここで思った。
 「あの酒場は、たしか第一京浜国道と細い川の交わる場所にあったのではないだろうか」
 しばらくして橋を渡った。川沿いに遊歩道が造られている。
 
   滝の川 ← 滝の川

 どうやら、滝の川という川のようである。遠くに高速道路が通っているのが見えた。そこまで歩いてみる。気が付けば大通りに出てしまっていた。第一京浜国道である。少し戻ってみる。すると、角地の古い建物の高い位置に看板を発見した。「市民酒場みのかん」と書いてある。

   みのかん ← 市民酒場「みのかん」   「暖簾が出ていない・・・」

 以前から行ってみたかった「市民酒場みのかん」にたどり着いたのである。しかし、暖簾が出ていない。休みであろうか。だが・・・人の気配がする。

 しばらく躊躇ってから入口の引き戸に手を掛けた。中をのぞいて驚いた。満席である。左手の4人掛けテーブル席三つ。右手のカウンター席10席ほど。全て満席の様子。カウンターの一番奥の中側に大将らしき方が立っている。特に何も言う様子もない。しかし、こちらのお店の接客については承知しているので気にしなかった。

 カウンターの中央辺りに一席だけ椅子を発見した。左右の方にお願いして、ずれてもらいそこに座った。
 左隣の白いシャツにネクタイの方が「今日は、出てくるの遅いですよ」とおっしゃる。
 「そうなんですか、びっくりするほど混んでいますね」と答えた。
 大将が近づいて来て、
 「今日はどういう訳か混んでしまって、何も出来ないんですよ」とおっしゃる。
 手でグラスを飲み干す仕草をして「これだけでもダメですか?」と言ってみる。
 大将は奥に行って、調理場の中の女将さんと相談をしていた。
 少しして、女将さんが調理場の中から顔をだした。
 「今日は、もう何も無くなってしまって、お出し出来ないんですよ」と申し訳なさそうに言う。
 これ以上の無理強いをしても仕方がないので、「それじゃ、帰ります」と言い、左右の方に礼を言ってから外に出た。
 すると、店の外で男女二人連れの方に出会った。
 「あれ、終わりかなあ」とおっしゃる。
 「私も今、入ってすぐに出されちゃったんですよ」と答えた。
 常連の方らしく「珍しいなあ・・・」とおっしゃりながら中に入って行かれた。
 その方々もまた断られて出てきた。すると、中から鍵が掛けられてしまった。
 閉店前の野毛は「武蔵屋」のようである。

 こちらのお店に関する情報はインターネット上にたくさん掲載されている。味わいのある建物で、これだけ安く飲める店は他になかなか無い、午前中から営業しているのも利点である。ゆえに土曜日ともなると遠くから多くの方々が訪れるに違いない。私もそんな一人であった。その為、夕方になって地元の常連の方々が来てみると入れないということになってしまう。

 お店の存続の為にお客様は必要である。しかし、あまりにも集中して混み合ってしまい、お店の方々が消耗してしまっては元も子もない。痛し痒しの問題である。

     ※   ※   ※

 仕方なく第一京浜国道を川崎方面に向かって歩いてみた。しばらくして、左手に曲がると京浜急行の仲木戸駅についた。仲木戸駅の東側にはJR京浜東北線の東神奈川駅があり、二つの駅は150メートルほどしか離れていない。
 ここで、仲木戸駅から京浜急行に乗ってみることにした。電車は500メートルほど離れた次の神奈川新町駅で長い間止まった。急行の通過を待つ為である。京浜急行の各駅停車に乗っていると、こういう通過待ちは当たり前である。しかし、今日はなにやら酷く損をしたような気がした。

 やっと走り出した電車は、やはり500メートルほどしか離れていない次の子安駅まで妙にゆっくりと走っていった。少し苛立った私は、その次の京急新子安駅で降りてしまうことにした。こちらの駅前には有名な大衆酒場、市民酒蔵「諸星酒場」があるのだ。

 京急新子安駅の改札を出て、右手の階段を降りてみた。すると、目の前にJR京浜東北線の新子安駅が見えた。左手には京浜急行の踏切がある。この踏切を渡って来なければJRの新子安駅前に入ることは出来ない。
 この踏切を渡ると、京浜急行、JR線、第一京浜の上を渡る神奈川産業道路の陸橋が右手に見え、そこが駅前ロータリーになっていた。陸橋の上から回転しながらロータリーに降りることが出来、そのまま第一京浜に出ることが出来る。
 その駅前ロータリーに面して市民酒蔵「諸星」はある。前述のお店が市民酒場でこちらのお店は市民酒蔵、横浜市民は「市民」という言葉が好きである。店の前に立った。

   諸星 ← 市民酒蔵「諸星」   「シャッターが閉まっている・・・」
   
 シャッターが閉まっていた。土曜、日曜、祝日が定休日であった。土曜は営業していると思いこんで来てしまったのである。

 なにやら悪夢のようだ。

 そのまま、新子安駅からJR京浜東北線に乗りこんだ。沿線にある様々な酒場が頭に浮かんだ。候補は10軒以上ある。
 蒲田駅で降りると、駅周辺の何軒かの酒場の前まで行ってみた。しかし、どこにも入る気持ちになれない。
 最後にある店の前に立った。名前が気になってずっと入りたいと思っていた店である。曇りガラス越しに外からお客さんの背中が見えた。しかし、すでに午後7時近いというのに暖簾が出ていない。見知らぬ人の背中が恐かった。

 しばらく考え、店に入ることが出来ぬままその場を離れた。ついにその夜はどこの酒場にも入ることが出来なかったのである。

 ずっと以前、こんな夢を見たような・・・そんな気がした。

 
 (了)


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居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第16回/地獄耳であることの不幸・・・

居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第16回    【地域別】 【時間順】 【がっかり集】



 地獄耳であることの不幸・・・・



 居酒屋における不幸な話を書きたいと思う。
 ある某有名大学近くの居酒屋に入った時のことだ。寒い夕暮れ時の静かな街を歩いているうちに冷え込んでしまい、仕方なく入った店である。居酒屋にしては不思議な名前の店であった。元々は喫茶店であったのだろうか。実は入りたくないという気持ちが強かったのである。しかし、同行者が他を探すことを渋ったのでそのまま入ってしまったのだ。

 中に入ってみると、妙に不自然な作りの店であった。店内は広い。壁際はボックス席のようになっている。元々はちょっと高級志向の店であったのかもしれない。途中から居酒屋という業態に移行したような感じであった。さらに、とてもびっくりしたある特徴がある。しかし、それを書いてしまうと店を特定できてしまうので、ここには書かない。
 店内には2つのグループがいた。女性一人を含む10人ほどの頭の良さそうな学生たちが教授らしき方を囲んで集まったという感じのグループ。もうひとつのグループも8人程でこの店の常連のような男女たち。さらに、男性二人が飲んでいた。

 店の奥の調理場にママさんらしき方が一人。フロアには若い女性が一人だけであった。その女性に注文をする。外観と言葉の感じでアジア系の外国人の方であることが解った。
 
 頼んだつまみはなかなか出てこない。前述のような大人数のグループ客の注文に対応出来ないでいることがすぐに解った。
 若い女性が注文をとる。それを奥のママさんに通す。しかし、あやふやな部分がある。すると、ママさんが叱るのである。
 自分の耳が特別に良いことが恨めしかった。調理場でのやり取りが全部聞こえてしまうのである。
 生ビールの注文が入った。タイミングが悪いことに生ビールのタンクが空になってしまった。若い女性はどうして良いか解らない。ママが調理場から走って出てくる。すると、常連らしき男性が酔った声で「ママ、焼酎あったっけ?」と、のんきなことを言う。ママさんの笑顔が引きつっている。この焼酎を探すのにまた時間がかかる。
 
 優等生グループのおぼっちゃまたちは、議論に夢中で、一番端の若い女性一人に全てをまかせ、氷が無くなろうが品物が出来て来ようが、少しも助けようとしないのである。将来、そのままエリートコースを歩んだ末、晩年になって妻から突然に離婚を突きつけられ、その理由がわからない、そんな男性の典型となるのではないだろうか等と心配してしまう。

 若い女性は調理場の中でも働いている。ママは切れそうだ。いや、すでに切れている。若い女性は引きつった笑顔で私達の頼んだ品物を持ってくる。彼女なりに頑張っているのだ。
 同行者も、他の皆さんも調理場で起きていることが聞こえていないようだ。それが私には聞こえてしまう。
 簡単に言えば、許容量を超えた顧客の受け入れをして、それを処理できず、その責任を仕事に慣れていない新人の外国人女性に押しつけているように見えた。そうではないのかもしれない。しかし、少なくともそう見えたのである。

 酒飲みは勝手なもの。でも勝手になれない自分がいる。怒っても仕方がない。とにかく、大人しく待ち続けた。数種類のつまみが全部出てくるのに1時間以上かかった。それぞれに事情があると思う。でも、全居酒屋経営者のみなさんに申し上げたい。「客は調理場で起きていることに気付いています。気をつけてください」と。

 くつろいで酒を飲みたいと思って居酒屋に入った。懸命に働く外国人女性がかわいそうで不愉快になっている自分がいる。でも、何もしてあげられないのである。せめて、怒って帰ってしまうようなことはしなかった。
 そして、学問的議論に夢中で空気の読めない頭の良い青年たち。不条理は身近にあるのである。

 久しぶりの「がっかり録」であった。調理場の険悪な空気を感じて、その店に行かなくなってしまう。そんな経験をしたことがある方も多いに違いない。それは、客の側にとってもお店にとっても不幸なことだ。何よりも人間が一番大切だということ。勉強になった夜であった。

 
 (了)


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居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第15回/マニュアル酒場はいただけない・・・

居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第15回   【地域別】 【時間順】 【がっかり集】



 マニュアル酒場はいただけない・・・



 最近、もつ焼き店の出店が目につく。城南地区に次々に出店しているあるチェーンの新しい店を見つけた。疑似レトロの店内は、まるで、お台場のレトロ系アミューズメントパークのようである。昔の酒のポスターなどを使って、無理につくったレトロな雰囲気の中、マニュアル接客の従業員が作り笑顔で元気に接してくれる。実はこれが五月蠅いのだ。

 ジョッキが空になると、「お飲み物は?」とすぐに言う。食べ物が無くなると、「何かお作りしますか?」と聞く。マニュアル通りなのだから仕方ないとは思うが、ゆっくり考えさせて欲しい。何を飲むか即決即断できる人ばかりではないのである。
 古い酒場にある「客を放っておいてあげる」というあの感覚はここにはない。

 庶民的な古いもつ焼き屋の雰囲気を作っているが、それはまさに雰囲気だけで、酒類の単価は強気であり、決して安くはない。まず、ホッピーが500円近いというのはいただけない。生ビールの中ジョッキも高く、600円以上するビール中瓶の価格には驚きを覚えた。
 
 もつ焼きの価格も一本単価が高い、一本単価を高めにした場合、一串の肉の量を多くしてお得感を出すものである。しかし、それがない。
 煮込みは、臭みが無いようにちゃんと処理されているが旨みもあまりない。値段の割に量が少ない。一言で言えば貧弱なモツ煮込みである。塩味が強すぎて、甘みと奥行きに欠け、旨みがないのである。

 フランチャイズ料を支払い、高い家賃と人件費を考え、原価率を抑制しなければならないのだからたいへんである。しかし、小規模親父酒場好きの酒飲みは、店側の微妙な戦略に実は敏感である。ホッピー、サワー、生ビール、瓶ビールのこの4種の価格を見て瞬時に店の方針を読む。新規開店時にやってきて、すぐに自分のお気に入りの古い店に戻ってゆくのである。
 あまり量を飲まないような人、「もつ焼き店」に馴れていない若い女性などが初めて入るには良い店といえる。しかし、日常的に酒場にやってくる「親父たち」を見方につけなければ、もつ焼き店は続かないと思うのである。
 
 「高級焼き鳥店」という業態がある。「もつ焼き店」はそれに対して対局にあるように思う。低価格居酒屋という業態が大手を中心に伸びているという。そんな中、客のターゲットをきちんと絞るべきではないだろうか。いや、絞った結果「親父たち」は切り捨てられたのか。それを感じた客は潮が引くようにいなくなるものである。

 それにしても、あのマニュアル接客はどうにかならないだろうか。活気があるのと騒々しいのは別である。

 騒々しいといえば、やきとりではないある物の店頭でのお持ち帰り販売を中心に、片手間で立ちのみ店をやっているチェーンがある。先日そんな店に入ってしまった。調理場では、大声で店の人間が叫び続けている。活気を作りだしているのである。お持ち帰り販売の為に忙しくしている様子。店内で飲む人間は一人もいない。

 食べ物を少し頼み、飲物も頼んだ。支払いも先に済ませるシステムとなっている。待つ。10分たっても何も出てこない。待つ。たくさんいる従業員はお持ち帰り販売にかかり切りである。待つ。15分過ぎて、食べ物だけがやってくる。それから、飲物に入れるレモンが無いという。最初に言えば、違うものを頼んだり、レモンなど不要だと答えることが出来る。15分後に言われても困るのである。
 「ただいま、レモンをご用意しているところなのですが・・・もし、それでは駄目なようでしたら御返金も出来ますが・・・」と言う。酒飲みを最初の一杯で15分待たせるのも凄い。御返金という提案にも驚かされた。

 臨機応変な対応が出来ないマニュアル的従業員しかいないというのは寂しい。この業態で酒を売るのは無理があるに違いないと結論づけて、食べ物に手をつけず、返金してもらい外に出た。

 あまり、そういう気分にはならない方であるが、たぶん、今後どちらのチェーン店にも行くことはないであろう。

 マニュアルよりも人間の経験感覚が重要である。
 
 (了)


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居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第14回/ときめかないお店

居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第14回   【地域別】 【時間順】 【がっかり集】



 ときめかないお店


 私鉄沿線の駅の近くのある店に入った。出来て間がない様子なので、外観はとてもきれいである。特に取材をしたいとも思わず中に入った。
 照明は暗めである。照度が低いという訳ではなく、天井から下がった照明器具が低い位置まで下りてきているので、天井に近い部分が暗いのである。店内には、やや大きめにバラード系のアメリカン・ポップスが流れている。棚には焼酎の一升瓶が並んでいて、カウンター廻りの壁を埋め尽くしている。つまみは、まさに和風創作料理系という雰囲気。よくあるスタイルの店だ。サワー類は私の好きな古典酒場系の店より全体に100円ほど高い。ホッピーを置いているのは良い。しかし、なぜか、セットで550円といった高い価格設定になっている。ホッピーセットの価格を高くするという考え方は、どこから出ているのであろうか。氷を入れたジョッキには多めの焼酎を入れてある、ホッピー瓶を添えて、サワーなどに比べ焼酎も多いから高い設定ということだろうか。

 この手の店に来るといつも同じある感慨をもつ。
 一人きりで音楽を聴きながら、和風のつまみで静かに飲むというのは、実はとても落ち着くのである。しかし、ときめかないのである。
 ときめかない理由は、この手の店には「歴史」や「背景」を感じないからである。店が古くなり、やがて味わいが出てくる前に、閉店してしまうか、またはリニューアルしてしまうであろうことが最初から解るからである。いわば、今まで付き合い、これからも付き合うであろう「友」ではなく、やがて去ってゆく、「行きずりの人」のようなのである。
 
 古くなってしまった壁の味わいある短冊。時の流れの中、自然に飴色に変色した竹製の壁や天井が裸電球の明かりに照らされて淡く輝いている様子。無理矢理照明を落として暗くしているのではない自然で適度な明るさ。そういう味わいはここにはない。

 この手の店のカウンターに時々いる「店主の友人」のようなお客さんも気になる。一段高い位置から他の客や店の従業員を見ているその様子。「自分は違う」という姿勢が見えてしまう時がある。 
 私のような新参者に、その店のローカル・ルールを教えてくださる「古典酒場」の先輩たちとその人たちは違う。何が違うといえば、少し高めの価格設定の店に来られる方の「きどり」かもしれない。
 長く続いている良い店は、客との「距離」を適度に保っているように思う。「店主の友人」的客と店主が話し込んでしまい、料理への気配りが心配になるような店もある。

 もう、私は「今時」には、ときめかないのである。それは歳のせいばかりではないように思う。
 「個性」「ときめき」も必要無い、とても疲れた日の夕暮れ時、記事のことも考えず、自分独りになりたい時、こういった店に入ることにしている。そして、同じ店に繰り返し来店して顔を覚えられたりしないように気を配り、「店主の友人」のようにならないように注意するのである。すぐに仲良くなりたいと思う、自分の本来の性格を知っているので、それを隠して飲むのである。

 (了)


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居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第13回/焼き鳥の無い焼き鳥屋について

居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第13回    【地域別】 【時間順】 【がっかり集】



焼き鳥の無い焼き鳥屋について



 渋谷の「とりすみ」という居酒屋さんには、「焼き鳥はありません」と書かれた小さい紙が入口の引き戸に貼ってある。そして、店名が「とりすみ」であるのに焼き鳥も鳥料理も置いていないのである。でも、入る時に張り紙を見れば解るのでそれほど問題はない。「とりすみ」は好きな店である。
 しかし、ちゃんと「焼き鳥」あるいは「串焼き」と看板に書かれた店であり、「焼き鳥はありません」といった「張り紙=情報」も無いまま、中に入ってみると焼き鳥が無かったという場合がある。これは少し問題である。先日、東急沿線の某駅の近くでブラリと入った店もそうであった。

 焼き鳥で軽く飲んで帰ろうかと思い、目に入った「串」の文字を含む店名の店に入った。扉を開けると客は誰もいない。奥で女将さんらしき人が電話をかけている。電話をすぐにやめて相手をしてくれた。ビールの銘柄を聞くとサッポロである。さっそくビールをいただく。さて、何を食べようかと壁の短冊を見ていると、ここで女将さんが申し訳なさそうに言う。
 「やきとりは今やってないんですよ・・・」
 「ああ、はい・・・それじゃ、丸干し焼いてくれます・・・」
 そんな会話である。

 焼き鳥という食べ物を安定供給するのは難しいに違いない。串打ちという作業が伴う上に、店の構造にもよるが、焼いている時は焼き台から離れることが出来ないので、一人きりで店を切り盛りしている場合はなかなかに難しいのである。
 大将あるいは女将さんがきちんと客をしつけ、客を待たせることが出来るか、それでも客がついてくれるか、その方の資質の問題かもしれない。
 以前入ったことのある東急線の駅近くのもつ焼き店の店主は凄かった。調理場は長く広い。長いカウンター席がある。焼き台は右手の端にあり、そこから5メートルほど離れたところに、酒類を造ったり作業をする調理台がある。
 三十人ほどは入れる店に一人きりである。焼き物を頼むと調理台から焼き台まで、串を何本か持ってゆく。離れた焼き台の上に、焼きものを放り出すように乗せて離れてしまう。左手の調理台に戻ると、開店から2時間近くたっているのにもかかわらず、肉を串に刺している。
 「その作業は昼間のうちにやっておくべきではないか?」と思う。
串を打ちながらチラッと焼き台を見る。サワーなどを注文すると作る。
 「焦げちゃうのでは?」と、客である私が心配をする。「代わりに焼き台を見てましょうか?」と思う。
 串打ちは続く。何か変わった注文が入ると作る。サワーを作る。走る訳でもなく焼き台に行く。もつ焼きを裏返す。やってきたもつ焼きは噛みきれない程に焼き過ぎであった。

 さて、先日行った店の話に戻る。
 私は、手羽元や野菜をお酢を使って煮ている煮物をいただいた。なかなかにうまい。
 常連の方がやってきた。お通しが出てくると、「昨日と同じだなあ」と言う。すると女将さんが違うものと取り替えた。生ビールを飲んだ後、私と同じ煮物をもらって、御飯と味噌汁を注文している。こうやって、毎日夕ご飯を食べているのであろうか。
 こういう店も必要なのである。しかし、入口に小さく「串焼きありません」と書いていただけるとうれしい。私のように知らない街で知らない店に入ってしまう客もいるのである。これもまた「経験」として受け入れるしかない。最初に店を出てゆけば良いと思われるだろうがそれもかわいそうな気がする。
 入口の換気扇から煙りの出ていない「焼き鳥、もつ焼き、串焼き店」の場合は気を付けた方が良いかもしれない。しかし、私は丸干しを注文していた。煙はあたりに一杯になり、換気扇から出ていった。換気扇から出ている煙を目で見るだけではダメである。匂いをかいで、それが焼き鳥の匂いであるかどうか確認しなければいけない。
 なんとなく「不完全燃焼」のまま、外に出た。

 (了)

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居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第12回/様々な業態の店を歩いて、がっかり

居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第12回   【地域別】 【時間順】 【がっかり集】




※2008年11月22日 180,000カウント通過 感謝!

様々な業態の店を歩いて、がっかり


 最近、一番多くなっているのは、既存の大衆酒場やもつ焼き店を模倣した店である。椅子やテーブルを簡素にして、安いイメージを作っている。そんな店に入った。
 しかし、入って座ってみると、もつ焼きの1本当たりの価格は140円以上と高い、その上、外税なので税込みでは147円になる。ホッピーなども高く売っている。焼酎(中)とホッピー(外)が別に表記されており、2つを合わせ税込みにしてみると500円を超えてしまう。私は、500円を超えるホッピーをもつ焼き店で飲みたいという気持ちにはなれない。
 これからも有望な業態と思う。しかし、店によって差がある。薄利多売で客をやしている店と、すぐに馬脚を表して閑古鳥が鳴いているケースも見る。ネットなどで情報を得てから入店することをお薦めする。


 東急線のある駅の近くにあったレトロ調の店に数人で入った。粉物系のつまみが多く、メニュー全体は貧弱である。しかし、小さなジョッキを使い自分自身でつぐ発泡酒だけを飲めば安く済ませることが出来る。
 客筋はすべて若者たちである。飲み放題を選んで、繰り返し甘い飲み物や発泡酒を飲んでいる。しかし、接客は雑だ。店内が殺伐としている。若い先輩が仕事を間違えた新入バイト嬢のミスを「この娘~入ったばかりで馴れないんで~」と指摘する。その場の雰囲気が悪くなる。レトロ調の懐かしい緩やかな雰囲気を作ろうというコンセプトは、店員からは完全に無視されているようである。
 さらに、お通しではなく席料を一人300円取るのである。たとえば、この時も飲み代は4人で6,910円であったが席料を加えて8,110円となり、外税の為、消費税が加算されて支払いは8,515円になった。イメージとは異なり、実際にはあまり安くはないのである。


 東急線のある駅前にできた、所謂「半立ち」のバールに入った。バールという形態は嫌いではない。しかし、同じ料金で座ることの出来る人間と立っていなければならない人間が出来てしまう「半立ち」の店は好きではない。入ると比較的広い店の真ん中に大きな円いテーブルがある。その入口近くは立呑み空間になっている。しかし、奥まで行くと、テーブル席があり、さらに奥は椅子付のカウンター席である。カウンター席の手前まで行った。先客が一人カウンターの一番端に座っている。大きな声でカウンター内の人に話しかけている。
 「立っている方が好きなんで・・・」と言って、きびすを返し、入口近くに戻った。

 常連らしき男性は、店の人間相手に自説をぶち上げている。店の人間も受けたり、笑ったりしている。時々見かける光景である。我が物顔の酔客に、店を占拠されないように祈るばかりである。話に夢中になって、注文を取りに来るタイミングも遅れた。
 表の手書きメニューに大きく書いてあった「煮込み」を頼んでみたら、仕込みが間に合わなかったという。手書きメニューは消しておくべきである。

 それにしても誰も入って来ない。駅前の好立地である。黒で統一された外観、看板の照明も少なく、入口全体が暗くて、やっているかどうか迷ったほどである。午後7時過ぎでこれではまずいのではないかと思った。
 一部安いものもあるが、分量が少ない。全体に酒類は高い。量はともかく、食べものは安い設定にしてある。一考が必要である。頑張っていただきたい。


 居酒屋探偵をしていると「居酒屋探偵DAITENの生活」で紹介できない店に出会ってしまう場合も多い。良いと思って紹介した店も、変わってしまうこともある。口コミとは違う結果となる場合もある。やはり、足で探すしかないのである。

 (了)

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居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第11回/放浪の探偵、街を彷徨う

居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第11回   【地域別】 【時間順】 【がっかり集】



 放浪の探偵、街を彷徨う

  路地裏イメージ写真

 みずからの手帳を見て驚いた。「居酒屋探偵DAITENの生活」に書いてない一人飲み、飲み会がとても多いのである。もちろん自宅での酒は書かない。原則としてチェーン居酒屋は記事にしない。中華料理店や蕎麦屋等での外食兼用の酒についても紹介しない。最近紹介記事を書いたばかりの店に直後に再訪した時は、読者にとって重複になるので書かない。数えてみると7月だけで実は15回も飲んでいるのに、書いた記事は少ないのである。

 自分で決めた事の為に、なかなか記事を書くことができないのである。
 今回は、そんな欲求不満を解消する為に、「居酒屋探偵DAITENの生活」に書かなかった店について、あえて少しだけ、【居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」】に列記させていただきたいと思う。

 7月6日は、SAKURAと二人、稽古帰りに自由が丘の「土風炉」に入った。ここは、「土風炉」「鳥元」「日本橋亭」を始め30種類以上の業態を全国に展開している「株式会社ラムラ」が経営する店である。年商283億円というから凄い。
 「土風炉」は大規模チェーン店の中では比較的好きな業態である。特に自由が丘店は広くて落ち着く。ただし、客単価は4000円から5000円であろうか。ちょっと食べて飲んでしまうと高くなる。しかし、ホッピーをいち早く置いてくれた点だけで採点が甘くなってしまう。

 7月10日には、仕事関係のパーティーがあり、その後でダーツバーに行き、それから「戸越のひもの屋」で待っている仕事仲間のところに行くことになった。
 ここの「ひもの屋」で何度か宴会をやったことがある。 「ひもの屋」は東急池上線の蓮沼駅近くに本社のある株式会社八百八町が展開する業態の1つである。「八百八町」「ひもの屋」「かたりべ」などの業態があるが、どの店もボトルなど酒の値段が安いところに特徴がある。
 この八百八町の社長は、あの有名な1970年代に急成長した居酒屋チェーン「つぼ八」の創業社長石井誠二氏である。氏の著書「居酒屋の道」によれば、居酒屋「つぼ八」は1973年に札幌で創業、8坪の店からのスタートであったという。その後、「つぼ八」を離れ、1987年に「八百八町」を再び創業した立志伝中の人物である。
 居酒屋「八百八町」は江戸の町をモチーフに、「かたりべ」は江戸時代の農村の囲炉裏端のイメージ、「ひもの屋」は江戸時代の漁師小屋をイメージした店であるという。どの店も壁は黒く、照明は暗めに抑えられている。
 私としては「ひもの」に特化した「ひもの屋」が気に入っている。

 7月13日は、稽古帰りに自由が丘から緑が丘まで歩き、さらに石川台まで歩いた。この途中、以前にあるブログで知った店にSAKURAと入った。ここは、外観と内装は居酒屋の作りであるがボトルキープされた酒を常連の皆さんが飲む店であり、酒やツマミの単価も高く、スナックに近い店であった。しかし、焼いてもらった魚はおいしかった。カラオケがあったりする、この手の疑似居酒屋スナックのような店は多い、少しづつキープボトルを飲みながらママさんと話をするのが主な目的のこのような店は、ブログを見た人が初めて訪問するには向かない。ゆえに、良い店であったとしても「居酒屋探偵DAITENの生活」では紹介しないのである。

 7月17日には、自宅の近くの酒屋兼コンビニが「ワインバー」を初め、その初日に伺うことにした。まずは、私がワイン2杯と小生ビールを飲みに行き、夜遅くなってからSAKURAと二人でもう一度行ってしまった。再びワインを2杯飲む。レジの隣にワインやビールを受け取る場所があり、それからレジで金を払い、少し離れた立ちのみカウンターに行って飲むという形式である。パーテーションで囲まれたその場所には、CS放送が流れており、店内の酒も追加料金を払えば飲むことが出来るそうである。いわゆる「立ちのみ」に近い店であり、酒店の売値でそのまま呑める「角打ち」とは違う形態である。

 店に入った瞬間から記事にしないと決めて飲むのは楽である。手頃な店が無い時、人数が多くて仕方なく大規模チェーン店に入った時、記事にするような特徴的な点が少ない店等、理由は様々だが、書かないと決めてしまうと、記録も取らないし、実にリラックスして酒が飲めるのである。そんな時は酔いが回るのが早い。
 酒を楽しむ為なのか、記事を書く為なのか、なにやら本末転倒の感もある。

 ただ街を彷徨い歩く時も多い。
 あの寺山修司のように路地裏を歩くのが好きなのである。最晩年に、寺山修司は“のぞき”の罪で罰せられた。「路地裏の探索をしていただけだ」と寺山修司は釈明した。私はそれを信じる。
 街を彷徨い、居酒屋を探偵するのは、どこかハンティングに似ている。新しい店を探して路地裏を歩く時、私はどんな顔をしているのであろうか。見えない猟銃を片手に鋭い目をしているのかもしれない。

 (了)

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居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第10回/池袋を彷徨い、疲れた背中を見る

居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第10回    【地域別】 【時間順】 【がっかり集】



 池袋を彷徨い、疲れた背中を見る




 先日の日曜の午後、池袋へ行かなければならない用事があった。ちょうど東京メトロ副都心線が開通したばかりなので、用事を済ませた後、池袋から渋谷まで新線に乗ってみることにした。池袋は副都心線の開通の為であろうか大変な人出であった。
 今から25年ほど前、当時勤務していた会社への通勤途中の乗換駅であり、また、サンシャイン60ビルの中に得意先があったので、毎日のように池袋の街に来たものである。さらに、先輩や友人たちと仕事帰りに酒を飲むのも池袋が多かった。
 西口ならばロサ会館のあたりでよく飲んだ。終電を逃してしまい、深夜営業の映画館で始発を待ったこともあった。東口ならば、駅前の明治通りを渡って、グリーン大通りを進み、東口五差路から60階通りに入ったあたりによく出没したように思う。

 グリーン大通りと60階通りに挟まれた三角地帯にある「美久仁小路」、「人世横丁」、「栄町通り」といった闇市から生まれた飲屋街のある場所を歩いてみることにした。
 「栄町通り」と書かれたアーケードを見上げていると、若い男性が二人、その中に入って行った。後からついてゆく。すると、二人は「すごいね」「昭和だね」などと、しきりに感心している。もちろん、日曜の午後である。やっている店は一軒もない。その路地は30メートルほど進むと右に曲がり、すぐ終わってしまった。路地を出て、右に曲がる。先ほどの「栄町通り」の入口に近い方へ戻ると、「美久仁小路」と書かれたアーケードがあった。「通り抜けられます」とアーケードの柱に書かれている。なにやら、懐かしい気持ちになる。「美久仁小路」を30メートルほど進むと、道は左に折れ、すぐに右に折れて、クランクになっている。その折れ曲がる角の部分に、有名な居酒屋「ふくろ」美久仁小路店がある。以前から紹介してみたいと思っていた店である。しかし、西口の「ふくろ」は日曜でも昼間から営業しているが、こちらの店は日曜日が休みである。仕方なく、店の外観を撮影する。クランクの部分を過ぎて、30メートルほど歩くと出口がある。その出口を右に曲がると、右手の建物と建物の間に狭い路地を発見した。「通り抜けられます」と書いてある。この路地を入ると、先ほどの「ふくろ」の脇に出られるようになっているのである。

 さらに進み、交差点を右に曲がった。すぐ左手に、また路地の入口を発見する。「人世横丁」である。この「人世横丁」は実に面白い形状をしている。私が入った路地を30メートルほど進むと、全長50メートルほどの路地にぶつかる。この二つの路地を途中からつなぐ15メートルほどの斜めの道があり、ちょうど横丁の中心部分に三角形の地域が出来上がっているのである。まだ、営業している店は無いようである。写真を撮りながら歩いた。すると、出口に近い一軒の店の入口が開いていた。中に数人の人影がある。暖簾も出ていないので、中がよく見えるのだ。カウンターの中に、高齢の女将さんらしき人が立っている。薄暗く狭い店の中に、数人の老人たちが座っている。ビール瓶やコップが彼らの前にある。しかし、暖簾も出ておらず、入口に看板も何もないので、営業中とはとても思えない。私のような新参者が入り込める雰囲気ではない。

 「人世横丁」から外に出ると、その場所から「栄町通り」「美久仁小路」の入口が見えた。頭がクラクラするような感覚をおぼえた。なにやら、迷宮に迷い込んだようである。
 たくさんの酒飲み達が、この迷宮を彷徨い、痛飲したのであろう。昔は老いも若きもよく飲んだ。泥酔し前後不覚になる者、肩を組み横一列で道をふさぐ酔っぱらい、道端で寝込む者、立ち小便する姿、飲み過ぎて吐いてしまう者、本当に酒飲み達が危うかった。それに比べれば、マナーが特に良いとは思えないが、今の若者たちはずっと上品に見える。

 迷宮のような路地を彷徨い、歩き続け、実に面白かった。しかし、疲れた。早い時間から営業している店を見つけて飲みたいと思った。
 近くに、「紅とん」の支店を見つけたが営業開始まで時間がある。そこで、「清龍」東口店に行ってみることにした。再び、60階通りを渡り、サンシャイン通りに向かう。
 しかし、四階建ての「清瀧東口店」は、シャッターが閉まり、閉店状態になっていた。表に貼り紙がある。建て替え工事のお知らせであった。230円という安さで酎ハイが飲める。酒も一合270円である。昔の単価は百円代であったように思う。
 「清瀧東口店」から駅の方へ向かい、三越が角にある交差点を渡り、駅のすぐ近くに残る横丁に入り込む、その中に「清瀧本店」はある。のぞくと店内は満席であつた。

 仕方なく、他の店を探すことにした。しばらく探して、一軒の寿司屋を発見する。入ってみようと考えた。しかし、ちょっと嫌な感じがする。後で解ったことではあるが、そこは、SAKURAが以前に話していた、「一期一会」の店、「がっかりな店」であった。
 寿司屋に入ることは止めにして、その地下の居酒屋に入ることにした。入口の生ホッピーの文字と7時まで200円という「キャッチ」につられて階段を降りてしまった。なんとなく、この店には昔入ったような気がするのである。もちろん、昔のままの店名や経営とは限らないが建物は昔のままのようである。

 さっそく、200円の生ホッピーを頼んだ。ジョッキも冷えており、一瞬生ビールを間違えて持ってきたのではないかと錯覚してしまった。
 午後7時まで200円の値段のつまみがたくさんある。生ホッピーを呑みながらメニューを見ている。味玉そぼろと生のり酢を頼んだ。どちらも200円である。量の少ないお通しが最初に出てきた。これは300円である。200円のつまみより300円のお通しの方が貧弱なのはどうもバランスが悪い。
 新しい客が入ってくる。店員が走ってゆく、注文をとって戻ってくる。カウンターの中にいる料理担当の人間に、注文の内容を告げると、その人間が「なんだ、全部200円かよ」と言った。気持ちは解るが客の前では言わない方がよい。
 やがて、二人客がやってきた。四人席に座ろうとする。脱兎の如く店員が走ってゆく。そして、四人席に座ってしまった客を立ち上がらせ、大テーブルに移動させた。店内はガラガラである。そこまでする必要もないのではないだろうか。
 店の一番奥にいる店主らしき親父がその店員を酷く怒っている。何かに対する反応が遅かったようである。店員教育は必要であるが客の前ではやめた方がよい。

 やがて、初老の男性客が若い女性を連れて入ってきた。まだ、店全体は空いているのに私の左隣のカウンター席に座らされる。年齢的にバランスの悪いカップルである。女性は真四角の化粧バックを手にしている。それをカウンターの上に置いた。邪魔である。これでは料理を置く場所もない。女性がトイレに行って来ると言う。すると、あまり景気が良さそうな顔をしていない男性客が何か言った。声が小さいのでよく聞こえない。それに答えて、「○○は~○○さんには隠し事はしてないから~」などと舌たらずに言う。明らかに、キャバクラ出勤前のキャバ嬢と同伴出勤の客のように見える。歓楽街の近くで良く見かけるような不自然なカップルだ。「池袋だなあ」と思う。
 日曜日の夕暮れ時だからであろうか、次々に入って来るお客達がなんとなく疲れた雰囲気を背中に漂わせている。生ホッピーを呑みながら、全部がお通しのような、冷めたツマミを食べる。なにやら、酷く貧しい気持ちになってきて店を出ることにした。お勘定は1400円であった。

 思えば、1階にSAKURAが「がっかり店」だと言った寿司屋があり、地下に私が発見した「がっかり店」の居酒屋があったのである。時間もまったく違うのに、お互い打ち合わせもせずに、それぞれ上下に存在する「がっかり店」に入ってしまったのである。もしかして、同じ経営者ではないだろうか。

 この後も池袋の街をずいぶんと歩いた。副都心線に乗って帰ることにする。副都心線の改札を目指して地下道を歩く私自身の背中も酷く疲れて見えたに違いない。

 (了) 

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居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第9回/3つのがっかり

居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第9回    【地域別】 【時間順】 【がっかり集】




 3つのがっかり

 浮気をした報い

 私の場合、酒を呑んだことを「居酒屋探偵DAITENの生活」に全て書いているわけではない。疲れていて、記録をとることも面倒な時もあるのである。
 そんな行きつけの店のひとつに東急目黒線の大岡山駅近くのもつ焼き「三鶴」がある。とても良い店であるが、ホッピーは焼酎の量が多いとはいえ500円と高い。それが唯一の「がっかりな点」である。しかし、ホッピー原理主義的に氷無しのジョッキから焼酎をコップへ移動。途中で「ホッピー外」をもらって残りの焼酎を呑むのである。ゆえに、私は実際には500円より安い価格でホッピー一杯を呑んでいる。
 今日のがっかり店はこの「三鶴」ではない。 「三鶴」に入る前に、ついつい「浮気」をしてしまった店である。昔入ったことのある駅前の大箱店に入ってみたのである。

 その大箱店に入って、通された席は、周囲を囲む様に座ることの出来る巨大テーブルであった。巨大テーブル1つに20人以上が座れる。その巨大テーブルが二つ並んで置かれている。その二つのテーブル席に座らされた。問題は、客が座ってしまうと、巨大テーブルと巨大テーブルの間に通路がまったく無くなってしまうことである。従業員が奥の席まで行けない為、我々よりも奥の席に座っていた客に品物を出す時、我々のすぐ脇にきて、我々の目の前で手を伸ばして品物を渡さなければならない。さらに混んで来た場合は、手前の客に代わりに渡してもらっている。一つのグループ客なら良いが、テーブルには3組の別々の客が座っていた。小さな個人経営の店なら客同士お互い持ちつ持たれつであるから許せる。しかし、これだけ大きな店である。たくさん客を詰め込めば良いというものではない。根本的にテーブルの配置が間違っているとしか思えない。

 さらに、若いグループ客が巨大テーブルのひとつを占有していた。凄い騒ぎようなのである。通路もない、お互い背中が着いてしまうような位置で大騒ぎをされると、二人で話をすることも出来ない。
 瓶ビールを注文し、着きだしを出されて、すぐに結論を出した。「やはり、三鶴に行こう」である。荷物をまとめ、黙って立ち上がった。さすがに店の人間も解ったようである。「申し訳ありません」と謝ってくれ、瓶ビールだけで着きだしの値段は取らなかった
 急いで、「三鶴」へ移動した。ホッとした。最近は個室を持たない大箱店に入る気力が無いのである。そのことを改めて思い知らされた。


 大規模チェーン店のホッピー

 私はチェーン居酒屋の記事は出来るだけ書かないことにしている。ただし、チェーン居酒屋に行かない訳ではない。先日の日曜日も打ち合わせと称する内輪の飲み会で、「さくら水産」の都立大店に入った。
 最近、大手チェーン居酒屋でもホッピーを置くようになっている。しかし、氷を入れることが当たり前になっている店が多い。3冷など望むべくもない。また、価格も高い。
 しかし、「さくら水産」のホッピーは350円である。実は一年程前に値上げしているがそれでも安い方である。 「氷を入れない方がおいしいです」とメニューにも書いてあり、氷無しを頼むと、ちゃんと「ホッピージョッキ」を冷やし、焼酎も業務用ホッピー瓶も全て冷えた状態のホッピーが出てくるのである。焼酎もホッピージョッキの下から1つ目の星の量で適量である。実にうれしい。最近、ホッピーを出す大規模チェーン店が多い。しかし、「さくら水産」のようにきちんとした出し方で出す店は少ない。氷り入りしか想定していない場合が多いのだ。
 先日行ったモンテローザグループの「魚民」では、ホッピーは業務用リターナル瓶ではなく、一般用の容量の少ないタイプの瓶であった。この点だけでも点数は低くなる。そして、氷無しホッピーにも対応出来ていない。
 また、焼酎+ホッピー、だけではなく、巨峰酒+ホッピー、梅酒+ホッピーという飲み方をすすめていた。これも新しい提案として面白いかもしれない。しかし、こういう奇をてらったやり方以前に、「さくら水産」を見習って、「3冷」に近い状態で出す努力をするべきではないだろうか。


 名酒居酒屋閉店

 「古典酒場」編集長のブログによれば、虎ノ門の「鈴傳」が2008年4月25日で閉店したという。その様子を取材されたようで、後日、「古典酒場」で読むことが出来るに違いない。
 虎ノ門「鈴傳」には、過去何度も行ったことがある。しかし、「居酒屋探偵DAITENの生活」を書き始める前であった。ゆえに、虎ノ門「鈴傳」の記事を一度も書かぬまま終わってしまった。
 名酒酒場では私は三杯しか飲まないことにしている。それ以上呑んでも何を呑んでいるか解らなくなるからである。しかし、良い酒を安く売ってくれた虎ノ門「鈴傳」では、そうはいかなかった。ついつい飲み過ぎてしまうこともあった。良い酒を高く売る店は多い、だが、納得できる良い酒を納得出来る価格で売る店は少ない。そんな店がまた一軒無くなってしまったのである。
 
 (了)

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居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第8回/中目黒・金曜日の杞憂

居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第8回    【地域別】 【時間順】 【がっかり集】



中目黒・金曜日の杞憂




 SAKURAと二人向かったのは、居酒屋ファンならば誰でもが知っている中目黒の有名店である。
 ある舞台関係の社長さんからその店を教えていただいたのは、もう十数年前であった。「店は小さいけれど、安くてうまい物を出す居酒屋がある。でも、いつも混んでいるので今日は入れるかどうか・・・」とおっしゃる。行ってみると、やはり満席で入れなかった。
 それを機に、中目黒での稽古帰りに数人で時々寄るようになった。お連れした俳優の皆さんやスタッフも喜んでくれた。裏通りの小さな店なので、ふりの客は少ない。ほとんどが常連客のようであった。それは、お店の方がほとんどのお客さんを名前や愛称で呼ぶのですぐに解った。これがこの店の客との距離感なのだなと思ったものである。それからずいぶんと時が流れた。


 ある金曜日の夜、今日も入れないことを覚悟しながらその店の前までやってきた。しかし、春の嵐とも言える大雨の日であり、すでに午後10時を過ぎているので、少しは空いているかもしれない。
 引き戸を開けてみる。だが、予想に反して、店内はほぼ満席の様子であった。
 普段は通路になっている場所に席を作ってくれ、やっと入ることが出来た。

 瓶ビール大瓶を頼み、のどを潤す。店は十数年前に比べて数倍に拡張されていた。その広い店内が客でいっぱいである。私の座らされた場所がちょうど要の位置なので、私の身体が人通りを止めてしまうのではと心配になる。帰る客がいる。どんどん入ってくる客もいる。すぐ近くのトイレの前に列ができた。とても午後十時過ぎとは思えない盛況ぶりである。
 店内は混乱していた。すでに、品切れとなっているツマミも多かった。ホッピーの氷無しを頼んだのに、氷入りで出てくる。しかし、特に怒ったつもりはないが、反応した私の声が大きかったのか、顔が恐かったのか、すぐに気がついて取り替えてくれた。

 次々に注文が飛び交う。店員が通りかかると、どんどん注文の声がかかる。すでにお客さんたちもずいぶんと酔っているので、自分の注文を通すことだけを考えている。大声で叫ぶ。店員と客のタイミングも合わない。まるで、アメリカのドラマ「ER」の手術シーンを見ているように言葉が飛び交うのである。実に落ち着かない。
 
 やがて、常連客らしい年輩の男性がやってきた。店の人がカウンターの左右の客に声をかけてづれてもらい、そこに椅子を持ってきて、やっと座ることが出来た。
 店内のほとんどが若い客である。女性比率も高い。男女の合同コンパのような雰囲気の団体もいる。会社帰りのサラリーマンらしき集団もいる。ほとんどがグループ客なのである。その中に大声で騒ぐ若い娘がいた。太く雑音の多い声質である。自分の声がどんなに他人にとって耳障りなのか解らないようである。周囲の客がその娘を見る。しかし、本人は気づかない。今時の言葉を使えば「KY=空気が読めない」なのである。こういう女性客はチェーン居酒屋でよく見かける。店の人は無視をしている。やはり、さりげなく注意をするべきである。

 そんな喧噪の中、ボトルキープされた焼酎を飲みながら、窮屈そうに一人座っている常連らしき男性客。昔はこの店の主役は、このような男性の独り客であったに違いない。何かが変わってしまった。
 SAKURAが「あの頃の常連さんは、ほとんどいないでしょうね」と言う。

 今や予約をしないと入れない店になってしまったそうである。30分ほどで外に出ることにした。お勘定をお願いする。価格は昔ほど安くはない。お通しの価格が高かった。

 店の外に出る。ホッとする。
 「金曜日に来たのが失敗だね」と私が言うと、
 「もう私はこの店に来ることはないと思う」とSAKURAが言った。
 もの皆、変わってゆくのである。

 今日の私の一言、「店にとって最大の見方も最大のも客である」

 (了)

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居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第7回/池上線・またひとつ消える灯火

居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第7回    【地域別】 【時間順】 【がっかり集】



池上線・またひとつ消える灯火



 ある日の夕暮れ時、普段乗り降りをしない駅で降りてみることにした。実は、いつも電車の中から線路沿いにあるその店の赤提灯が気になっていたのである。
 赤提灯はかなり年季が入った物のようで、ずいぶんと傷んでおり、店の名前を示す文字もかすれて読みづらい。入口の引き戸もだいぶ傷んでいる。入口の上に「ホッピー」と書かれた小さな赤提灯がいくつか下げてある。

 多少の躊躇いを振り切って、引き戸に手を掛けた。あまり明るくない店内である。右手にカウンターがあり、6、7人が座れるようになっている。カウンターの中は調理場である。すぐ目の前の左手に四人掛けのテーブルが2つ。その奥に小上がりが2卓あり、さらに右手奥には座敷があるようだが、天井の電灯が消してあってよく見えない。
 一番手前の小上がり卓の一つが妙に散らかっている。ソース、しょうゆ、ドレッシングなどが乱雑にならび、時刻表やえんぴつ削り、雑誌、スポーツ新聞等が卓を埋めている。しかし、客が帰った後という訳ではない。その席にマスターらしき初老の方が座っており、タバコを吸いながらテレビを見ている。まるで万年床のように、いつもマスターが控えている場所に違いない。男所帯のアパートにおじゃました気分である。「いらっしゃい」と言いながら、弱々しげに微笑み、マスターが立ち上がる。
 カウンターには二人のお客さんが静かに座っていた。ビールなど飲みながら画面の乱れたアナログ放送を眺めている。

 ホッピーを注文する。後から「氷無しでお願いします」と言ったが、マスターの耳には届かなかったのか、サワーグラスに入って出てきたホッピーは氷入りであった。ホッピー原理主義はまったく通じないようである。突きだしはメカブである。
 マスターは実に丁寧に対応してくれる。しかし、どこか儚げな風情である。私は、ある情報からこの店があと数カ月で閉店であることを知っているのだ。古い雑居ビルの再開発による立ち退きである。もう何かを努力する必要はないのかもしれない。

 「厚揚げ」をお願いした。丁寧に焼かれた厚揚げは、食べやすい大きさに切ってあり、分葱のみじん切りがたくさん掛かっている。実においしかった。レモンサワーも頼んだ。
 マスターは、他のお客さんに何か料理を出す度に、「味つけは辛くありませんか」等と聞いている。とても優しい。しかし、声に力がない。何かが終わっているのだろう。
 マスターは料理を出すと、再びさきほどの定位置に座ってタバコを吸い始めた。

 男が四人。みんなで黙ってテレビを見ている。NHKのニュースである。今日の相撲の結果をニュースが伝える。マスターが相撲の話題をお客さんたちに持ちかける。私も少し言葉を返した。一人の男性客が帰ってゆく。また静かになった。

 やがて、テレビでは独り暮らしの高齢者を扱った番組が始まった。今、独り暮らしに関する本が売れているという。
 マスターとお客さんと私の三人でじっとテレビを見る。さらに静かな時間が流れていった。「子供と同居したいか」という親世代に対するアンケートの答えが示される。1995年は60.9バーセント 。2006年は40.1パーセントであるという

 四十分ほどの時間が過ぎた。お勘定をお願いする。紙に数字を書いてくれた。その数字が1380円に見えた。他の客に金額が解らないようにという心遣いであろうか。小銭を用意して、1380円をテーブルに並べた。すると「1300円です」と言う。「字が汚くてすいませんね」と微笑むマスター。私も微笑み返した。

 今回の「がっかり録」は、この店そのものにがっかりしたから書いたのではない。この人がやっているこの店があと数カ月で消えることに、とてもがっかりしたから書くことにしたのである。

 帰り道、家の近くの書店で〈ヴィレッジブックス刊 リディア・フレム/著 友重山桃/訳「親の家を片づけながら」(1260円)〉という本を見つけ、購入した。

「親の家を片づけながら」

書籍紹介には次のように書かれていた。
 「父亡きあと、ひとり暮らしをしていた母が逝った。ひとり娘の私に残されたのは、両親の思い出に満ちたこの一軒の家だ。私は途方に暮れた。あまりにも多くの「物」が、ここにはある。今までは触ることすら禁じられていた両親の大切な私信や思い出の品々。しかたなく片づけるうち、やがて姿を現したのは、まったく知らなかった両親の素顔と、ふたりが生涯抱えていた深い心の傷だった―。」

 古い酒場の灯火が消える時、私たちの中の何かも、またひとつ消えてゆくのである。

 (了)

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居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第6回/下町・名居酒屋の街の「一期一会」の店

居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第6回   【地域別】 【時間順】 【がっかり集】



下町・名居酒屋の街の「一期一会」の店



 ある芝居を東京の下町の小さなホールで見た帰りのことである。芝居そのものはとても質の高いものであり、SAKURAと二人上機嫌で外に出た。
 その街の名前を聞いただけで、居酒屋ファンならば「店選びが楽しくてしょうがない」という気分になるような街が周囲にたくさんある地域である。私は色々と情報を得て、行く店もある程度決めていた。しかし、SAKURAは早く呑みたいと言う。そのホールから2ブロックほど歩いたところで、名店にたどり着く計画はすぐに消えてしまった。

 すぐ目の前にある割烹料理の店をSAKURAが指さす。「居酒屋探偵」にとって、良い居酒屋を探すことは「狩猟」に近い。「狩猟」の楽しみを知らない人に、それを理解してもらうのは、なかなかに難しい。寒い冬の山道を獲物求めて延々と歩くハンターの気持ちは、ハンティングをしない人には解らないのと同じである。

 その店の外観を見ると、いわゆる魚に力を入れている割烹料理の店に見える。それほど古くもなく小綺麗な雰囲気である。しかし、外に「本日のおすすめ」の板も出ていない。値段も書いていない。少しだけ嫌な予感がした。その予感をうち消し、「刺身でも少し食べてすぐ外に出よう」と思いながら、店に入ることにした。

 入ると左手には7、8人が座れる白木のカウンターがある。カウンターの上の段に大皿がいくつか並び煮物らしき物が盛られている。右手は小上がりである。四人席が二つ、奥の方は少し広くなっており、六人程度が座れる席になっている。

 カウンター席の入口近くに七十歳くらいの御老人。その隣に連れらしき年輩の女性が座っている。少し奥のカウンターには、やはりお年寄りのご夫婦。その向こうに、ちょっと品の良いお婆様が一人座っている。カウンターの中にはエプロンをかけた女性が一人。その女性が「いらっしゃい」と言う。すると、入口近くの御老人の連れの女性が立ち上がる。よく見るとエプロンをしている。「この人も店の人なのか」と思う。店のどこにも白衣を着た板前さんの姿はない。

 瓶ビールを頼み、さっそく乾杯をした後、メニューを眺める。刺身類を頼もうとしたが無い。メニューに書いてある煮物を頼む、すると、「煮物は盛り合わせ出来ます、その方がお得ですよ」と言われる。「郷にいらば郷に従え」のたとえもある。その通りにした。

 さきほどのカウンター上の大皿から大きめの皿に煮物を取り、すぐに持ってきてくれた。甘辛い味付けである。ビールを飲みながら先ほどの芝居の話などする。周囲の皆さんを観察すると、異様に平均年齢の高い店内であるのに、全員がずいぶんと酔っている。
 入口の御老人が楽しそうに話している。身内だったら、「もう止めておいた方が身体によいですよ」と忠告したくなるような酩酊状態である。エプロン姿の年輩の女性がずっとその隣で話を聞いてあげている。二人の身体は妙に密着している。その様子を見て、SAKURAが「お酒以外のサービスもあるのね」と小声で言う。
 老人は「酒もう一本」と言う。「飲み過ぎよ」と言いながらも、300ミリリットル入りのいわゆる「生酒」の瓶をすぐに持ってくる。「もっと小さい方が良いのでは」と心配してしまう。

 店に入ってから私たち以外のお客さんがつまみを頼む様子を見ていない。酒だけはどんどん注文される。この店は、御老人たちの社交の場なのである。お年寄りなので、つまみは煮物程度で十分に違いない。
 「こういう店もあるのか・・・」と改めて思った。店の造りを見ながら勝手な想像を巡らせる。あのカウンターの中の女将さんの御主人が腕のいい板前で、数年前まではこの店もちゃんとした割烹料理店として営業していた。しかし、ギャンブルと酒が好きな御主人は、身体を壊してしまい、六十歳の若さで他界。跡取りもいない中、やはり早く夫を失い未亡人となっている妹と二人、生きる為に店を続けることにする。人情のある下町である。同情した周囲の人々が集まり、営業を続けることが出来た。時は流れ、まるで公共施設としてよくある「老人憩いの家」のような店が出来上がった・・・。誠に失礼極まりない勝手な想像ではあるが、当たらずとも遠からずではないだろうか。

 お勘定をお願いする。安くはない。高くもない。忘れてしまう程の金額である。店の外までエプロン姿で見送ってくれた。明るく元気である。まさに「一期一会の店」である。ゆえに、もう来ることはないに違いない。名居酒屋の街だからといって、すべてがそうであるというはずもない。「未亡人たち」の幸せを祈って夜の街を歩く。もう一軒店を探すには時間も遅く、帰り道も遠い。急いで地下鉄の駅を目指す二人であった。

 (了)

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居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第5回/その伝説は継承されず

居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第5回    【地域別】 【時間順】 【がっかり集】


その伝説は継承されず



 友人と「1軒だけ飲もう」ということになった。他にも候補はいくつかあったが、最終的に選んだのは、一年以上前に、数回行ったことのある五反田の店であった。
 その店は、レモンサワー発祥の地として伝説の店となっている某有名店と同じ名前である。フランチャイズや直営で様々の業態の店をたくさん経営している会社が「伝説の店」のノウハウを踏襲して作った店であるという。

 午後7時少し前、かなり混んでいることを想定して店に入った。しかし、思いの外、空いている。中央に大きなコの字カウンターがあり、20人ほどが座れるようになっている。左手には、4人掛けのテーブルが7つほど並んでいる。
 コの字カウンターには、3人ほどのお客さんが座っていた。テーブル席も半分程度の入り。私たち二人はすぐに一番奥の方のビールケースを積み重ねて、板を乗せた席に座った。

 私は、ホッピー氷なしを頼んだ。友人は、麦焼酎お湯割りを頼んだ。つまみは、マカロニサラダたこぶつを頼んだ。焼き物は、たん、はつ、かしら各2本を塩である。
 しかし、どうも注文がうまく通らないのである。アジア系外国人の女性従業員がよく解らないというのは仕方ないと思うので、あまり気にならない。しかし、日本人の若い男性もメニューの内容をまったく理解していないようであった。

 ホッピーをすぐに飲んでしまい、私はレモンサワーに移行した。
 「伝説の店」の名物飲み物は「サワー」である。250円という安い価格で、氷と焼酎の入ったジョッキに、炭酸1瓶、二つ割のレモン1個、搾り器がセットでやってくるのである。

 しかし、ここには、「サワー」というものはメニューに無い。焼酎200円、炭酸100円、レモン100円というバラで売られている。合計すれば400円になる。一般的な居酒屋での「生レモンサワー」の価格からすれば安い方ではある。
 250円という価格に、インパクトを受け、店の誠意と努力を感じていた私のような人間からすれば、これは大きな違いである。この1点だけで気持ちが萎えるのである。
「ここは、別のお店なんだ」と思い知らされた。
 
 レモンサワーの後は、ホイスである。つまみは、あつ揚げ(180円)、もつ煮込みを頼んだ。180円のあつ揚げは安い。しかし、壁に「価格破壊」と大きく書くほどのことはない。

 クエン酸サワーという飲み物を頼んだ。酸味が強く私は好きな味であった。友人は、ホッピーと、焼酎(中)を繰り返し飲んでいた。生キャベツ、穴子煮も頼んだ。この穴子煮は、妙な酸味があり不思議な味であった。

 電波の状態が悪く、画面が荒れた状態で放送内容がまったく解らない「白黒テレビ」が付けっぱなしになっていた。誰も見ていない。内容が解らないので見る人はいないのである。「昭和レトロ」な雰囲気を作るためであろうか。しかし、地球温暖化の時代、電力の無駄としか思えない演出である。

 約1時間半ほどの滞在。二人で5,410円であった。価格的にもインパクトはない。もつ焼きや煮込みの味にもこれといって特筆するべきものはない。何も知らず入れば、町中にある普通の店として客は入ると思う。しかし、伝説のあの店の名前とノウハウを継承する店としては力不足となってしまっていた。

 「そうだ、伝説のあの店に近々に行こう」、店を出てすぐにそう思った。


 (了)

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居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第4回/下北沢の心配

居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第4回    【地域別】 【時間順】 【がっかり集】



下北沢の心配



 先日、あるお芝居を見に行った。お芝居がはねて、出演者の1人である先輩俳優が外に出てきてくれた。どこか近くで飲みますかと言うので、場所を決め、店名を伝えて先に行くことにした。

 なかなか店が見つからない。場所を知ろうと電話をしたが、満席であるという。こちらは3人である。先輩俳優がいらっしゃると4人になる。小さい店でも大丈夫だなと判断して一軒の店を選択した。携帯電話で場所の変更を伝え、3人でその店に入った。

 ここは、コの字カウンターが素敵な老舗である。中に入ると、店内はガラガラであった。二十人近く座れるカウンターには、2人の客が座っているだけだった。奥の座敷にも誰もいない。午後9時とはいえ、今日は金曜日である。空いているのが不思議だった。

 いやに元気で威勢のいい若いお嬢さんが対応をする。その他に若い男子に、中年の男性がいる。何か違うなとすぐに気づいた。
 空いているので、カウンターの曲がり角の場所に4人座ると、ちょうど話し易いのでそこに座ろうとした。すると、若いお嬢さんに「こちらでお願いします」と、カウンター中央に4人並ぶように言われる。しかし、こちらが黙っていると、若いお嬢さんは背後を振り返った。すると、奥の中年男性が「いいですよ、後で混んできたら動いてもらうけど・・・」と、言った。

 今日は、噂に聞いている「やさしい女将さん」の姿がない。この店の「良い雰囲気」というのはその女将さんが作っているものらしい。しかし、今は、この中年男性が店を仕切っているようである。

 まずは、ビールを頼み、おでんを頼むことにした。壁にある値段表を見ると、やや高い価格設定である。おでんというものは安い店と、高い店でかなり差のある商品である。
 行きつけの大衆酒場の安いおでんの価格に慣れている私には、この店のおでんの価格はずいぶん高く感じられた。

 店の作りは古く、聞けば50年という時がたっているらしい。この古く落ち着いた店に対して、その場にいる「人間」が、なんとなくそぐわないのである。
 元気なお嬢さんと、今時風のお兄ちゃん、そしてあの店主がビートルズの曲名のことで、盛り上がっている。

 やがて、先輩俳優さんが入口から顔をのぞかせた。これで4人揃うなと思っていると、他にも人がいるとおっしゃる。なんと、若い女性を4人も連れて来たのである。
 これは困った。

 「あの店主は断るな、断られたら外に出よう、ちょうどいい」と思った。

 ところが、店が空いている為か、店主は「いいですよ、でも団体さんは1時間にして」と入ってきた女性たちに向かって言った。カウンターに、なんと8人も座ってしまったのである。

 この店に若い女性4人はなんとなくそぐわない。でも、どの女性も育ちが良いのか、品よく俳優さんのお話を聞いている。
 ただし、一度だけ、俳優さんの話に呼応して、大きな声で彼女たちが笑ってしまった。すると、すかさず店主は「他のお客さんがいるから静かにして」と彼女たちに言った。神楽坂「伊勢藤」の真似だろうか。自分たちが私語を続けているのに、客が笑うと注意する。何かちぐはぐである。

 しばらくして、かなり酒の入った男性3人組が入ってきた。店のことをよく解っていないのか。いきなり「ウーロンハイ」などと言っている。焼酎はシソ焼酎しか無いと言われる。たしかに、シソ焼酎をウーロンハイにすると、あまりうまくないかもしれない。心の中で独り笑ってしまう。さらに数人が入ってきてカウンター席は8割ほど埋まった状態になった。

 どうやら、午後10時が一つの区切りらしい。午後10時過ぎに中を覗いた客たちに、「もう今日は駄目、無理」と店主が乱暴に言う。あきらめて彼らは帰って行った。私たち3人が店に入って、ちょうど1時間たった。店側の提示した「団体さんは1時間」という設定の時間である。しかし、先輩俳優に注意する訳にもいかない。3人共に翌日が早かったので、ここで、私たち3人だけ先に外に出ることにした。一度締めてもらうと、お勘定は13,000円を越えていた。先輩俳優に私たちの飲んだ分を託して、外に出た。店に迷惑をかけたくないと思い、店側の提示した条件に合わせたのである。

 外に出て、心配になった。下北沢のこの店は名店の誉れ高き居酒屋であったはずである。しかし、その名店らしさを醸し出していた女将さんが1人いないだけで、その雰囲気は噂に聞いていたものとは、まったく違ってしまっていた。行く末が心配である。このまま「一期一会の店」にならぬことを祈るばかりである。

 (了)


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居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第3回/煙草の煙 裏通りの某焼き鳥店

居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第3回    【地域別】 【時間順】 【がっかり集】



 煙草の煙 裏通りの某焼き鳥店



 先日、待ち合わせの時間まで少し時間があるので、東横線沿線の某駅の周辺を散策していた時のことである。路地裏に赤ちょうちんを見つけた。
 中に入ってみると、驚く程に狭い。カウンターのみで7人座れば一杯である。カウンターの中には、身体の大きな店主が1人立っており、カウンター席には常連客らしき男性が2人座っている。手をあげると手がついてしまうほどに天井も低い。

 生ビールらしき名前のものが390円とある。頼んでしまってから「発泡酒」であることに気づいた。飲んでみるとやはりそうであった。
 常連客たちと店主が盛んに話している。やがて、私の隣の男性客がチェインスモーカーであることが解った。彼は私が来店してから帰るまでの45分間、一度も手から煙草を離すことは無かった。
 「この人は、家で奥さんから煙草を吸うことを禁止されていて、禁断症状の末に、この店に来て思い切り煙草を吸っているのだろうか。」などと、勝手な想像をしてしまったほどである。とにかく、ずっと煙い。そして、店の換気も悪いのである。これだけ狭いのだから、換気扇を多用して換気をよくするべきである。

 焼き鳥を試しに少し頼んだ。部位によって、1本180円、200円、250円の価格設定である。高い。店舗に高い設備投資をした中央の高級焼き鳥店の価格設定である。銘柄鳥であることを示してあったが、食べてみると、これといって感動が無いのである。
 さらに、決定的なのはサワー類であった。大手飲料メーカーが提供している、サーバーから液体が出てくる出来合いのサワーなのである。コンビニで売っている甘いサワー類の味そのままなのである。焼き鳥店のサワーは、あまり甘くない「ハイサワー」の味が基本である。どうして、甘いサワーを店売りするのか私には解らない。

 やがて、店に新しい客が現れた。そのお客さんは、みるからに130㎏以上はありそうな人であった。その人が店に入る為に、中の客たちが全員立ち上がる必要があった。こんな狭い店にこのお客さん。店主も100㎏以上の巨漢である。そして、私も負けずに大きな身体である。まるで、昔あったドリフターズのコント番組のようだ。まさに、「もしも、焼き鳥屋の店主も客も全部相撲取りだったら・・・」である。

 
 (了)

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居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第1回/がっかりは渋谷センター街から

居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第1回    【地域別】 【時間順】 【がっかり集】




 がっかりは渋谷センター街から


 「居酒屋探偵DAITENの生活」では、自分が比較的良いと思えた店だけを紹介するようにしている。ゆえに、紹介できる店を探してずいぶん飲み歩いてもいるのである。その中で、「はずれの店」も多々あり、がっかりさせられる場合も多いのである。だからといって、その店の名前を公表して、本文である「居酒屋探偵DAITENの生活」の中で酷評、逆宣伝をするエネルギーも私にはない。

 しかし、「これは考えものだな」と思う店に出会った時のやり場のない思いをなんとかしたいのである。
 私の基準は特別に高いわけではない。「比較的質の良い食材を提供してくれ、ごく普通の皆さんが気軽に寄ることが出来る雰囲気であり、価格の安い店であること。」それだけである。さらに、儲ける為だけを考えた「方法」「システム」「マニュアル」が露骨に見える店も好きにはなれない。

 今回から居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」というカテゴリーを増やさせてもらうことにした。がっかりした店について、店名を伏せて「愚痴」を言わせていただくのである。


11月某日 渋谷の某立ち飲み店

 その店の場所は渋谷で最も若者たちが集まるであろう地域である。日曜日の午後4時であるから店の前の道に会社員は歩いていない。ほとんどがカジュアルなファッションの若い男女ばかりである。
 日曜だけ午後4時からやっているという。広い店内に丸い立ち飲み用の高いテーブルが点在しており、その向こうにも、同じように胸の高さの立ち飲みL字カウンターがあり、その中が調理場になっている。70人位は入ることが出来るのではないだろうか。大箱店である。
 
 店の外にあった生ビール200円という看板に誘われて入ったのである。さっそく、生ビールを頼む。カウンターに小さなカゴが置いてあって、その中にお金を入れておくと、店の人間が値段を言いながら、精算してゆくというシステム。客の出入りを監視する必要が無いので店側としては便利である。客側も最初に金を入れておいて、今日はこの予算で飲むと決めてしまえば、それ以上飲まずに済むので良いかもしれない。

 しかし、後から小銭をカゴに追加すると、いくら払ったから解らなくなってしまうので、割り勘には不向きかもしれない。やはり、自分の呑んだものは自分で払うと決めてカゴを人数分用意するか。全部俺が払うという人が中心の飲み会に良いのかもしれない。領収書が必要な場合も不向きである。まぁ、こんな大箱の立ち飲み店で領収書をお願いする人はいないだろうが・・・。

 飲み物のメニューを見ると、ホッピーセットが500円であった。二杯目の飲み物として、実験的に「ホッピー1つ」とだけ言ってみた。すると自動的に氷と焼酎の入った小生ビールグラスにホッピーの瓶がついてやってくる。中身の焼酎を他のジョッキに移して量を計ってみると、所謂、ホッピージョッキの下の星程度の量であった。少ない焼酎の量で500円というのは、家賃の高い場所であるにしてもちょっと考え物である。

 この店は、他の飲み物も全部500円という単価になっている。最近のあまり酒を飲まない若者、1杯の甘いドリンクを前に置いて、1時間も話し続ける若者たちを相手に商売をするには、仕方がないのかもしれない。 ドリンクを500円という高い価格に統一したのは商売として、これが戦略なのかもしれない。しかし、何杯も飲みたい親父世代にはそっぽを向かれるかもしれない。事実、私たちの後に入って来たカジュアルなかっこうをした壮年男性はビール1杯を飲んだだけで出ていってしまった。

 フード関係は、300円から500円、何品か取ってみたけれど、ちゃんと量と価格のバランスを考えてあって、客側から見たお得感はない。特にうまい訳でもないが、まずい訳でもない。無難な線を出ない。
 日曜日の夕方という時間であるから、平日に来てみないと解らないけれど、若者たちが呑みながら話をするカフェの延長のような店なのかもしれない。

 今回書いたような店を私は「一期一会の店」と呼んでいる。仲間と話す時も、「今回は一期一会だったね」と話すことにしている。「こんな店、二度と来ない」などとお下劣な言い方はしないことにしている。
 
 居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」に、最後までおつきあいいただき、まことに申し訳なく思うのである。そして、また、このような「愚痴」をこれからも書いてしまうことをお許し願いたい。


 (了)


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居酒屋探偵DAITENの「がっかり」集

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「居酒屋探偵DAITENの生活」

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第19回 「守るべきこと・・・」 2013年5月

第18回 「どちらを向いているか解らない・・・・」 2011年6月

第17回 「こんな夢を見たような・・・」 2010年6月

第16回 「地獄耳であることの不幸・・・」 2010年2月

第15回 「マニュアル酒場はいただけない・・・」 2009年9月

第14回 「「今時」には、ときめかない」 2009年6月

第13回 「焼き鳥の無い焼き鳥屋について」 2009年2月

第12回 「様々な業態の店を歩いて、がっかり」 2008年11月

第11回 「放浪の探偵、街を彷徨う」 2008年7月

第10回 「池袋を彷徨い、疲れた背中を見る」 2008年6月

第9回 「3つのがっかり」 2008年5月

第8回 「中目黒・金曜日の杞憂」 2008年3月

第7回 「池上線・またひとつ消える灯火」 2008年3月

第6回 「下町・名居酒屋の街の「一期一会」の店」 2008年3月

第5回 「その伝説は継承されず」 2008年1月

第4回 「下北沢の心配」 2007年12月

第3回 「煙草の煙 裏通りの某焼き鳥店」 2007年12月

第2回 「高級半立ち呑み店で立たされる」 2007年12月

第1回 「がっかりは渋谷センター街から」 2007年12月

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プロフィール

新岳大典

Author:新岳大典
新岳大典(ARATAKE DAITEN)
作家・コーディネーター。

居酒屋探偵daiten(izakaya detective DAITEN)として活動。劇集団咲良舎制作。多目的スペース「かたびら・スペース・しばた。」クリエイティブ・ディレクター。
演出家守輪咲良のブログ「さくらの便り」ブログ「人間日和」を運用中。
2011.7よりfacebook参加。2011.8より「ブクログのパブー」にて居酒屋短編小説を中心に発表開始。
 2014年9月6日より独自ドメイン取得によりURLがhttp://daitenkan.jp/に変更。

 なお、ブログのプロフィール写真は仙台四郎(せんだいしろう)の人形を撮影したもので新岳本人ではない。
 その時代、仙台四郎が訪れる店は繁盛するとして各地でもてなされたそうである。没後は商売繁盛の「福の神」としてその写真が店に飾られるようになったとのこと。

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