居酒屋探偵DAITENの「アート録」Vol.3 「立ち飲みで座って飲んで良いのは俳優大滝秀治だけである・・・合掌」

居酒屋探偵DAITENの「アート録」Vol.3



立ち飲みで座って飲んで良いのは
俳優大滝秀治だけである・・・合掌。


 俳優の大滝秀治(おおたき・ひでじ)さんが亡くなった。

 舞台、映画、ドラマと幅広く活躍、名脇役として有名な俳優の大滝秀治(おおたき・ひでじ)さんが10月2日、午後3時17分に肺扁平上皮がんのため、都内の自宅で死去された。87歳。
 高倉健さんと共演した、8月公開の映画「あなたへ」が遺作となった。

 ここ数日、テレビのニュースショーでは大滝さんが亡くなったことを伝えている。
 
 1950年、故・宇野重吉さんらの劇団民藝に研究生として参加し、すぐに劇団員となった。
 宇野さんから「オマエの声は壊れたハーモニカのような不協和音だ。役者になるのを考えたらどうか」と言われたという話は有名である。
 劇団の裏方をつとめた後、小さな役から俳優となり、努力が実って1970年に舞台「審判」で「紀伊國屋演劇賞」を受賞。この時、すでに45歳になっていたそうである。
 その後は劇団民藝の看板俳優として舞台に立ち続けた。
 「お葬式」(1984年)、「たんぽぽ」(1985年)、「マルサの女」(1987年)「あげまん」(1990年)、「ミンボーの女」(1992年)などの伊丹十三監督作品では、いつも楽しませてもらった。


 
 しかし、居酒屋ファンの間では、庶民的な酒場を愛する「酒場の達人」としても有名であった。
 もっとも好きだったお店は、2009年12月28日(月)第297回で私も紹介している、渋谷の大衆立呑酒場「富士屋本店」である。

 芝居一筋の大滝さんにとって、唯一の楽しみがお酒を飲むこととのこと。
 亡くなる前日も御家族と一緒に食卓を囲み、お酒を飲んでおられたそうである。

 「富士屋本店」に大滝さんが来られた時のエピソードがテレビで紹介されていた。
 あまり、混んでいない時間にきて、いつも決まった場所に立ち、ごく普通に周囲に溶け込んで静かに飲んでおられたそうである。
 
 そして、こんな大滝さんの言葉も紹介されていた。

 「おごると、偉そうになる。おごられると、卑屈になる。だから、自分の金で飲む。」

 「『自信』の上には『おごり』があり、『謙虚』の下には『卑屈』がある」

 その味わいある声と演技と人柄が大好きだった。

 幼い時の中耳炎右耳が聞こえなかった。
 肺結核で左肺を切除されていた。
 そして、肺ガンで逝かれた。
 亡くなった日にも「台本」を手放さなかった。

 最後まで、演技と戦った人だった。

 御高齢となって弱られてからは、本来、立ち飲み店である富士屋本店でも、お店の方が身体を気づかって椅子を出したとのこと。

 「立ち飲みで座って飲んで良いのは俳優大滝秀治だけである。」

 そんな言葉が頭に浮かんだ。

 ゆっくり座って飲んで下さい・・・大滝さん。

 合掌。

テーマ : 演劇
ジャンル : 学問・文化・芸術

浅川マキ追悼

居酒屋探偵DAITENの「アート録」Vol.2



浅川マキ追悼

 浅川マキが死んだ。

 ニュースによれば、次の通り。(毎日新聞ニュースより) 
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 歌手の浅川マキ(あさかわ・まき)さんが17日夜、公演で滞在していた名古屋市中区のホテルで死亡しているのが見つかった。67歳だった。愛知県警中署によると、病死とみられるという。同署によると、同日午後7時45分ごろ、ホテル室内の浴室で倒れている浅川さんを事務所スタッフらが見つけた。浅川さんが公演で滞在中で、時間になっても部屋から出てこなかったためスタッフらが様子を見に行ったという。

 浅川マキは石川県生まれ。67年「東京挽歌/アーメン・ジロー」でデビュー。翌年、新宿のアングラ劇場、蠍(さそり)座で寺山修司演出の独り舞台に出演し評判となった。山下洋輔さんや坂田明さん、坂本龍一さんらと共演。70年代にかけ、ジャズやソウルに影響を受けた愁いを帯びた声と全身黒ずくめの衣装で歌い「アングラの女王」として、全共闘の若者を中心に人気を集めた。代表曲に「夜が明けたら」「かもめ」など。
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 私にとっては、吉祥寺の「曼荼羅」というライブハウスで生ライブを見たのが17歳の頃であった。母と母のお店の女性たちやお店のお客さんたちと行ったのである。その後、二十代のはじめにファンになったジャズ・ピアニストの板橋文夫氏の名曲「グッド・バイ」を浅川マキさんが歌った。「マイ・マン」というアルバムの中にこの曲は入っている。その歌詞に泣いた。
 夜の街を彷徨う二十代であった。何の為にあんなに彷徨っていたのか。今、居酒屋を探して路地裏を巡り歩く自分がいる。この歌詞の中の男と自分が重なり合う。いや、重なり合うことを望んでいる。


グッドバイ
作詞/浅川マキ 作曲/板橋文夫

今 しずかな夜
ちょうど いい季節
誰も知らない抜け道を
急ぐ あなたが見える

自分にさえもサヨナラした
あなたの 背中がゆく

もう愛せないの
闇を駆ける さすらいびと


浅川マキ、中上健次、十九歳の地図、新宿、路地裏・・・。
久しぶりに、新宿へ、そして、吉祥寺に行ってみたいと思う。

 
人が次々に亡くなってゆく。今夜も追悼の酒を飲む・・・。

テーマ : 女性アーティスト
ジャンル : 音楽

中目黒 楽屋「中西俊博・鬼怒無月」デュオ

居酒屋探偵DAITENの「アート録」Vol.1



中目黒 楽屋「中西俊博&鬼怒無月デュオ」


 携帯電話のバイブが振るえた。永年の友人、マッシーモ氏からの電話である。彼がオーナーである中目黒「 dining bar & Live music 楽屋(らくや)」 」へのお誘いの電話であった。

 今日のライブは、バイオリンの中西俊博、ギタリストの鬼怒無月のデュオ。
 中西俊博のライブを楽屋で聞くのは2回目である。現在、中西俊博は、青山円形劇場で11月21日から12月26日まで上演されている公演、青山円形劇場プロデュース「ア・ラ・カ・ル・ト~役者と音楽家のレストラン~」に音楽監督として参加している。出演する役者は高泉淳子、白井晃、陰山泰、visitorと呼ばれるゲストは羽場裕一である。ミュージシャンは中西俊博(violin)、クリス・シルバースタイン(bsss)、竹中俊二(guitar)、林正樹(piano)の4人に加え、ROLLY(guitar)が12月19日までの平日にゲスト参加する。

 高泉淳子、白井晃、陰山泰は、80年代演劇ブーム時代の人気劇団「遊◎機械/全自動シアター」のメンバーであった。
 同劇団を始めて見たのは、1986年7月23日から27日に行われた「第5回公演 僕の時間の深呼吸~ぼくは夜中に台所でこっそり懐中時計を呑み込んだ~」である。同公演は1986年6月25日から29日に新宿・タイニイアリスで上演された後、大阪・扇町ミュージアムスクエアでも大阪公演が行われ、さらに高田馬場・東芸劇場で追加公演として行われたものである。
 古いアパートを改造した同劇場では、1984年に劇団第三舞台が「宇宙で眠るための方法について」を下北沢ザ・スズナリで上演した直後、追加公演的に上演をしていた。なお、東芸劇場は1987年に閉館している。

 「僕の時間の深呼吸」では、高泉淳子がランドセルを背負った小学生山田のぼるとして客席後方から登場した途端、彼らの劇世界に放り込まれてしまった。その時の衝撃をよく覚えている。あまりに面白かった為、追加された公演をすぐに予約して再度見てしまった。この頃、OZAKI先生やマッシーモ氏とも同劇団の公演を見ている。
 その後も「遊◎機械/全自動シアター」は劇団としては解散。青山円形劇場を中心に演劇と音楽の融合ともいえる作品をプロデュース公演として数多く上演している。また、我が咲良舎も青山円形劇場は馴染みのある劇場である。 先日、シアターΧで上演した「愛と偶然の戯れ」を1996年に上演した劇場は青山円形劇場であった。
 中西俊博は1989年からずっと音楽監督として「ア・ラ・カ・ル・ト」に関わっている。今年で20周年であるというから驚かされる。ファーストアルバム『不思議の国のヴァイオリン弾き』は10万枚を越す大ヒット、以降は井上陽水、桑田佳祐、坂本龍一、布袋寅泰らのアルバム制作やコンサートに参加。TVドラマやCM音楽、映画音楽など数多く手がけている

 長くなってしまったが、「遊◎機械/全自動シアター」の中心メンバーと青山円形劇場で共演中の中西俊博が劇場公演の休演日の夜に行う貴重なライブ。是非、見たいと思い、マッシーモ氏との共通の友人であるOZAKI先生と「楽屋」で待ち合わせることになった。

 午後9時に「楽屋(らくや)」に到着する。すでにマッシーモ氏とOZAKI先生はワインを飲んでいる。この日も結局、二人はワインを赤白2本空けたのである。血糖値が心配な私は付き合う程度にした。本日2回目のライブは、まだ始まっていない。実は7時から8時の60分の予定の1回目のライブは、約80分ほど演奏され、終わったのが9時頃であったという。

 午後9時30分、第2回が始まった。
 1曲目はボサノバである。静かで繊細なやり取りが続く。軽く肩慣らしではあるが、これからの心地よい時間を予想させる。
 2曲目はスパニッシュ・ミュージックである。徐々に情熱的になってゆくバイオリンの音をギターがリズム楽器となって支え盛り上げる。まるで、タンゴを踊る男と女のように絡み合う音。そして、カタルシス。そしてもう一度。今度はギターのソロである。バイオリンはウクレレのように演奏され、バイオリンがバッキングに回る。
 3曲目はロドリーゴの「アランフェス協奏曲」。おなじみの名曲である。バレエを見ている気分である。
 4曲目はエレクトリック・ギター、エレクトリック・バイオリンにそれぞれ持ち替えての演奏。これが凄かった。サマルカンドにいるような気分にさせられる曲。
 雅楽のように聞こえる導入部。様々なエフェクターで音を重ねてゆく中間部はキング・クリムゾンやピンク・フロイドのようなプログレッシブ・ロックを思わせる。さらに、エフェクターで創り出されたミニマル・ミュージック的音楽の上をバイオリンとギターが自由自在に滑ってゆく。ジャンルに囚われないミュージシャンの凄さを感じた。
 「食べたり呑んだりする雰囲気ではない曲でしたけれど、次もますます、食べたり呑んだりできないのをやります」というMCの後に演奏されたアンコール曲は「アメリカン・ウェイク」。曲調はアイリッシュ・ミュージックである。まさに、音楽の世界の旅である。快い緊張感とさわやかな後味。
 さらに、一度地下の楽屋に戻ってからアンコールに呼び戻され、再度短いアンコール曲。盛大な拍手。お客さんが本当に満足していることが解る素晴らしいライブであった。

 明日からも青山円形劇場でのステージが続く。また、「ア・ラ・カ・ル・ト」や「僕の時間の深呼吸」の演出家である吉澤耕一氏の演出で「中西俊博コンサートLeapingbow2009」が2009年1月24日と25日の両日、再び青山円形劇場で行われる。

 「楽屋(らくや)」では咲良舎として「咲良舎・ランチ・シアター」という演劇ライブを、2005年7月と2006年1月の過去2回上演している。咲良舎が「楽屋(らくや)」で始めた土日の「ランチ・シアター」という公演形態を今後も続けてゆきたいと思っている。オーナーのマッシーモ氏も全面的に協力してくれるという。心強い話である。
 今回は本当に素晴らしい演奏に立ち会うことが出来た。マッシーモ氏に感謝である。

楽屋ロゴ

中目黒 dining bar & Live music 「楽屋」
住所 目黒区上目黒2-5-16
電話 03-3714-2607
LUNCH TIME 11:30~3:00(L.O. 2:30)
LIVE TIME  6:00~10:30 pm
BAR TIME  10:30~1:00 pm(L.O. 12:30)
定休日 基本的に年中無休
詳細は楽屋ホームページ

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新岳大典

Author:新岳大典
新岳大典(ARATAKE DAITEN)
作家・コーディネーター。

居酒屋探偵daiten(izakaya detective DAITEN)として活動。劇集団咲良舎制作。多目的スペース「かたびら・スペース・しばた。」クリエイティブ・ディレクター。
演出家守輪咲良のブログ「さくらの便り」ブログ「人間日和」を運用中。
2011.7よりfacebook参加。2011.8より「ブクログのパブー」にて居酒屋短編小説を中心に発表開始。
 2014年9月6日より独自ドメイン取得によりURLがhttp://daitenkan.jp/に変更。

 なお、ブログのプロフィール写真は仙台四郎(せんだいしろう)の人形を撮影したもので新岳本人ではない。
 その時代、仙台四郎が訪れる店は繁盛するとして各地でもてなされたそうである。没後は商売繁盛の「福の神」としてその写真が店に飾られるようになったとのこと。

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