野毛 ホッピー専門店「ホッピー仙人」
Life of the izakaya detective DAITEN
居酒屋探偵DAITENの生活 第621回 2016年8月1日(月)
【横浜市】 【池上線】 【その他】 【時間順】 【がっかり】
野毛 ホッピー専門店「ホッピー仙人」
~ 横浜野毛都橋商店街のホッピー専門店へ ~

行ってみたいと思い、長い間行けないでいる場所というものは誰にもあるものだ。
美しい景色の半島の突端であったり、靜かな山寺であったり、地方の小さな美術館であったり、思いはあってもなかなか行けない。そんな場所。
私の場合、やはりそれは「酒場」になってしまう。
野毛といえば居酒屋好きの中でも有名な横浜の飲み屋街である。
そして、野毛の飲み屋街の東側に流れる大岡川沿い、都橋商店街と呼ばれる二階建て建物も有名だ。
永瀬正敏主演、林海象監督の映画『私立探偵 濱マイク』シリーズのロケ地が都橋商店街。主人公濱マイクの母、濱リリー(鰐淵晴子)のお店「スナック幸子」がこの都橋商店街にあるという設定だった。
都橋商店街の中でも遠くからこの場所を目指してやってくるお客様が多いのが野毛都橋商店街「ホッピー仙人」だ。
ホッピー仙人は、ホッピー好きの間では「聖地」とも言える場所である。
しかし、私は十年前に初めて知ってから一度も入店できずにいる。何度かトライして、様々な要因が重なって実現できなかったのである。
「都橋商店街」のゆるやかな建物の曲線が美しい。建物の一階は通り沿いに入口が並んでいる。建物の南側の端にやってくる。
そこには都橋より上流にある別の橋、宮川橋があった。
つまり、「都橋商店街」と呼ばれる建物は二つの橋から橋の間、大岡川の西岸をなぞるように建っているのである。

「都橋商店街」の一番南西側の階段から上がり、大岡川に面した二階の廊下を歩く。
川風が気持ちよい。カーブした廊下を歩き、「ホッピー仙人」の看板を見つけた。
ずいぶん前、初めてこの看板を見た時は休みの日であった。ゆえに、入れなかったのである。
(入店できなかった時のことについての記述が第282回にある。)

扉を開けてみた。
混んでいるのは当たり前である。予想通り、開けた扉のすぐ向こうに、立っているお客様の背中があった。
カウンターの中に、マスターであるホッピー仙人のお姿。
「立ちのみでよければ入ってください」とおっしゃる。
店内には右手から左手奥にかけてL字カウンター。席はすべて埋まっている。右手のカウンター席背後には立っている方々。
左手の角の小さな立ちのみテーブル前にもお客様が立たれている。
しかし、左手のカウンター奥に空間を発見、そちらへ行かせてもらうことにした。
「すみません」と言いながら、左手の角の小さなテーブル前に立つ皆さんの脇を通り、左手前から奥にかけてのカウンター席に座る方々の背中側に立った。
「本日は、サーバー白と黒、瓶白と黒です。」
「サーバー白、お願いします」
サーバーに入れられたホッピーを生ビールのように注いでくれるのである。
その仙人の動きを感動しながら見ていた。
そして、ホッピーサーバ白(五〇〇円)が手元に来ると、全員とのホッピー仙人の乾杯が始まる。私も並びの方と乾杯させてもらった。
お客様は次々に入ってこられる。並びに男性客が二人、立たれた。
お一人はホッピー初体験の方で、関西弁。少し戸惑う様子であった。
サーバーの白、クリーミーな泡のサーバーホッピーを美味しくいただいた。
「次は、瓶、白お願いします。」と言う。
ホッピー瓶といってもここでは「氷」はあり得ない。
冷やしたホッピージョッキに冷やした焼酎金宮をホッピー仙人が顔の前でシッカリと注ぐ。
そして、ホッピー仙人考案の注ぎ方、トルネード投入である。これで奇麗に撹拌されるのだ。
ホッピー瓶白(五〇〇円)がやってくる。
シンプルに上手い。氷など入れてはいけないと改めて思う。
私の目の前の方が帰られた。自動的に座らせてもらうことになった。
並びに座っている方々とホッピー仙人とのやりとりを聞いて、46種類の泡盛を独自にブレンドしたものを割ったホッピーがあるとのこと。一杯千円。
「トイレに行きたいんですけど」とお客様。
「白い札持って行ってください」と仙人。
ここでは、女性は赤い札のついた鍵を借りて外部にある女性トイレへ。男性は白い札のついた鍵を借りて男性トイレへ行くのである。ゆえに、私のように奥に座ってしまうと、途中でトイレに立つのは周囲の方に迷惑になってしまう。必然的に長時間滞在はするべきではないことになる。
青リンゴサワーと白ホッピーのハーフ&ハーフ(八〇〇円)もある。
これは、「堀越さん」というネーミングの飲み物である。
新しいお客さんが入ってくる。座っている方が席を空けて帰る。
すると、後ろの方が座る。しかし、それはレディファーストになっているそうだ。
「うちでは、女子が先に座るルールなんです」と仙人。
隣の若い男性とお話をした。
「私、初めてなんですよ。」と私。
「そうですか、びっくりしました。僕も初めてなんです。」
「十年前から一度は来てみたいと思っていたんです。」と私。
「ゆったりされているので、大常連の方かと思いました。」
「いえいえ、それは、恐縮です。」と私。
三杯目をお願いする。
「サーバー黒、お願いします。」
ホッピー仙人が注いでくれた、美しい泡の「サーバー黒ホッピー」(五〇〇円)である。(写真)

あまりの美しさについつい、店内写真と知りながら一枚撮影させてもらう。
常連の方々とホッピー仙人の会話にはあまり参加せずに一人感動していた。
ホッピーの聖地である場所に来ることが出来ただけで感慨深いものがある。
三杯目のホッピーをゆっくり飲ませていただき、一人黙ってくつろがせていただいた。
さて、楽しい一時は早く過ぎていった。御勘定をお願いする。
「名刺お渡ししましたっけ?」
「初めてなので、もらってません、ずっと来たかったんです」
「そうですか、どうぞ、どうぞ」
と、名刺をいただく。
「ホッピー原理主義なもので・・・・総本山に来たような気持ちです。感動いたしました。」
などと小声で言って、お客様の間を通らせてもらいお店をでた。
外に出る。再び大岡川の川風を感じる。
そして、野毛の街を歩いた。
様々な居酒屋の名店の看板を眺める。
「時間があれば寄りたいなぁ」
独り言を声に出している自分に驚き、野毛の街を小走りに歩いてゆく。
追記
先日、ホッピービバレッジ社長、ホッピーミーナこと、石渡美奈社長の「社員教育」に関する講演会を品川で聞かせていただく機会があった。ホッピーの飲み方のようなお話はもちろんまったく無く、学問的で高度な内容に驚き、お話の運びがシャープで、勉強になった。
野毛 ホッピー専門店「ホッピー仙人」
住 所 横浜市中区宮川町1-1-214 都橋商店街 2F
電 話 045-242-1731
営業時間 19:00~22:00
定休日 日曜祝日休
公式サイト http://hoppysen.web.fc2.com/
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
演出家守輪咲良の劇集団「咲良舎」と演技私塾「櫻塾」
街の手帖については、コトノハ/街の手帖編集部へ。
居酒屋探偵DAITENの生活 第621回 2016年8月1日(月)
【横浜市】 【池上線】 【その他】 【時間順】 【がっかり】
野毛 ホッピー専門店「ホッピー仙人」
~ 横浜野毛都橋商店街のホッピー専門店へ ~

行ってみたいと思い、長い間行けないでいる場所というものは誰にもあるものだ。
美しい景色の半島の突端であったり、靜かな山寺であったり、地方の小さな美術館であったり、思いはあってもなかなか行けない。そんな場所。
私の場合、やはりそれは「酒場」になってしまう。
野毛といえば居酒屋好きの中でも有名な横浜の飲み屋街である。
そして、野毛の飲み屋街の東側に流れる大岡川沿い、都橋商店街と呼ばれる二階建て建物も有名だ。
永瀬正敏主演、林海象監督の映画『私立探偵 濱マイク』シリーズのロケ地が都橋商店街。主人公濱マイクの母、濱リリー(鰐淵晴子)のお店「スナック幸子」がこの都橋商店街にあるという設定だった。
都橋商店街の中でも遠くからこの場所を目指してやってくるお客様が多いのが野毛都橋商店街「ホッピー仙人」だ。
ホッピー仙人は、ホッピー好きの間では「聖地」とも言える場所である。
しかし、私は十年前に初めて知ってから一度も入店できずにいる。何度かトライして、様々な要因が重なって実現できなかったのである。
「都橋商店街」のゆるやかな建物の曲線が美しい。建物の一階は通り沿いに入口が並んでいる。建物の南側の端にやってくる。
そこには都橋より上流にある別の橋、宮川橋があった。
つまり、「都橋商店街」と呼ばれる建物は二つの橋から橋の間、大岡川の西岸をなぞるように建っているのである。

「都橋商店街」の一番南西側の階段から上がり、大岡川に面した二階の廊下を歩く。
川風が気持ちよい。カーブした廊下を歩き、「ホッピー仙人」の看板を見つけた。
ずいぶん前、初めてこの看板を見た時は休みの日であった。ゆえに、入れなかったのである。
(入店できなかった時のことについての記述が第282回にある。)

扉を開けてみた。
混んでいるのは当たり前である。予想通り、開けた扉のすぐ向こうに、立っているお客様の背中があった。
カウンターの中に、マスターであるホッピー仙人のお姿。
「立ちのみでよければ入ってください」とおっしゃる。
店内には右手から左手奥にかけてL字カウンター。席はすべて埋まっている。右手のカウンター席背後には立っている方々。
左手の角の小さな立ちのみテーブル前にもお客様が立たれている。
しかし、左手のカウンター奥に空間を発見、そちらへ行かせてもらうことにした。
「すみません」と言いながら、左手の角の小さなテーブル前に立つ皆さんの脇を通り、左手前から奥にかけてのカウンター席に座る方々の背中側に立った。
「本日は、サーバー白と黒、瓶白と黒です。」
「サーバー白、お願いします」
サーバーに入れられたホッピーを生ビールのように注いでくれるのである。
その仙人の動きを感動しながら見ていた。
そして、ホッピーサーバ白(五〇〇円)が手元に来ると、全員とのホッピー仙人の乾杯が始まる。私も並びの方と乾杯させてもらった。
お客様は次々に入ってこられる。並びに男性客が二人、立たれた。
お一人はホッピー初体験の方で、関西弁。少し戸惑う様子であった。
サーバーの白、クリーミーな泡のサーバーホッピーを美味しくいただいた。
「次は、瓶、白お願いします。」と言う。
ホッピー瓶といってもここでは「氷」はあり得ない。
冷やしたホッピージョッキに冷やした焼酎金宮をホッピー仙人が顔の前でシッカリと注ぐ。
そして、ホッピー仙人考案の注ぎ方、トルネード投入である。これで奇麗に撹拌されるのだ。
ホッピー瓶白(五〇〇円)がやってくる。
シンプルに上手い。氷など入れてはいけないと改めて思う。
私の目の前の方が帰られた。自動的に座らせてもらうことになった。
並びに座っている方々とホッピー仙人とのやりとりを聞いて、46種類の泡盛を独自にブレンドしたものを割ったホッピーがあるとのこと。一杯千円。
「トイレに行きたいんですけど」とお客様。
「白い札持って行ってください」と仙人。
ここでは、女性は赤い札のついた鍵を借りて外部にある女性トイレへ。男性は白い札のついた鍵を借りて男性トイレへ行くのである。ゆえに、私のように奥に座ってしまうと、途中でトイレに立つのは周囲の方に迷惑になってしまう。必然的に長時間滞在はするべきではないことになる。
青リンゴサワーと白ホッピーのハーフ&ハーフ(八〇〇円)もある。
これは、「堀越さん」というネーミングの飲み物である。
新しいお客さんが入ってくる。座っている方が席を空けて帰る。
すると、後ろの方が座る。しかし、それはレディファーストになっているそうだ。
「うちでは、女子が先に座るルールなんです」と仙人。
隣の若い男性とお話をした。
「私、初めてなんですよ。」と私。
「そうですか、びっくりしました。僕も初めてなんです。」
「十年前から一度は来てみたいと思っていたんです。」と私。
「ゆったりされているので、大常連の方かと思いました。」
「いえいえ、それは、恐縮です。」と私。
三杯目をお願いする。
「サーバー黒、お願いします。」
ホッピー仙人が注いでくれた、美しい泡の「サーバー黒ホッピー」(五〇〇円)である。(写真)

あまりの美しさについつい、店内写真と知りながら一枚撮影させてもらう。
常連の方々とホッピー仙人の会話にはあまり参加せずに一人感動していた。
ホッピーの聖地である場所に来ることが出来ただけで感慨深いものがある。
三杯目のホッピーをゆっくり飲ませていただき、一人黙ってくつろがせていただいた。
さて、楽しい一時は早く過ぎていった。御勘定をお願いする。
「名刺お渡ししましたっけ?」
「初めてなので、もらってません、ずっと来たかったんです」
「そうですか、どうぞ、どうぞ」
と、名刺をいただく。
「ホッピー原理主義なもので・・・・総本山に来たような気持ちです。感動いたしました。」
などと小声で言って、お客様の間を通らせてもらいお店をでた。
外に出る。再び大岡川の川風を感じる。
そして、野毛の街を歩いた。
様々な居酒屋の名店の看板を眺める。
「時間があれば寄りたいなぁ」
独り言を声に出している自分に驚き、野毛の街を小走りに歩いてゆく。
追記
先日、ホッピービバレッジ社長、ホッピーミーナこと、石渡美奈社長の「社員教育」に関する講演会を品川で聞かせていただく機会があった。ホッピーの飲み方のようなお話はもちろんまったく無く、学問的で高度な内容に驚き、お話の運びがシャープで、勉強になった。
野毛 ホッピー専門店「ホッピー仙人」
住 所 横浜市中区宮川町1-1-214 都橋商店街 2F
電 話 045-242-1731
営業時間 19:00~22:00
定休日 日曜祝日休
公式サイト http://hoppysen.web.fc2.com/
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
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