川崎 もつ焼き「島田屋」
川崎 もつ焼き「島田屋」




本日は「川崎昼酒ツアー」と銘打ち、居酒屋探偵事務所のメンバーASIMO君やOZAKI先生と、午後2時30分にJR川崎駅の改札で待ち合わせた。
今日の目的の店は、大井町の「大山酒場」の回に登場した友人の熱血ビジネスマンRAM元帥から教えてもらった店であり、ずっと行ってみたいと思っていたところであった。
最初はタクシーで移動するつもりだったが、珍しくOZAKI先生が待ち合わせ時間ぴったりに登場。開店の時間まで30分もあるので、タクシーでは店に早くつきすぎてしまう。ゆえに、歩いて移動することになった。
川崎駅の東口駅前は、川崎中から到着するバスやタクシーの乗り場が広がっている。その地下がアゼリアと呼ばれる地下街になっている。地下街には降りず、右側から回り込むようにして京浜急行のガードをくぐり、デパートさいか屋を右手に見ながら川崎駅前南というスクランブル交差点を斜めに渡る。
銀柳街商店街の入口を左手に見ながら、新川通りという大通りを歩いてゆくと第一京浜国道に出る。そのまま新川橋という交差点を渡り、歩道橋が掛かる皐橋という三叉路に出る。歩道橋を渡った向こう側、二股に別れた場所の右側の道を歩き、すぐに左に曲がる道がある。その道は、50メートルほどで、さきほどの二股に別れた左側の道につながっている。
その右側に、目的の店もつ焼き「島田屋」を発見する。思ったよりも小さな店である。開店の午後3時の5分程前である。暖簾も出ていない。
2階建ての古い建物の右半分が「もつ焼き・煮込み 島田屋」である。残りの左半分は「牛・豚内臓卸・小売 島田商店」という看板が上がった店になっているが、今日は開いていない。

事前に調べた通り、内臓肉の卸売屋さんがやっているもつ焼き店なのである。
中を覗くと、すでにカウンターに座っている人が一人。どうやら暖簾など元々無いようである。赤提灯などを下げる気配もない。少し早めに中に入ることにした。
店内は左側にL字カウンターがあり、十人ほどが座れる。右側に4人席が二つ。奥側にも4人席が二つある。25名で一杯といったところである。勝手に予想していた店よりも小さく地味な印象であった。
川崎駅から20分ほど歩いてきた。翌日の2月3日は珍しく関東圏にも雪が降った日である。この日もとても冷え込んでいた。冷え切った身体を暖める為に、熱燗をもらうことにした。
「熱燗を3杯お願いします」とASIMO君が言う。清酒(240円)である。
つまみは何にするか考える。壁にはモツが6種類レバ、シロ、たん、なんこつ、かしら、はつ、と書いてある。すべて50円である。話には聞いていたが驚異の安さである。さらに煮込みも150円である。
ASIMO君が「150円は安すぎます。きっと小皿ですよ、小皿。3つもらいましょう。」と言う。
私もOZAKI先生も反対する理由もない。250円くらいの値段で、やや深い小皿に5、6切れのモツ肉といった店は多い。頭の中に浮かんだ図はそんなモツ煮込みだった。それでも150円は安いなあ。そう甘く考えていた。ASIMO君がお店の女性に「煮込み、3つお願いします」と言った。
「今、お酒やっちゃいますからね、ちょっと待ってね」という女性。まず、我々の前に厚手のグラスが3つ並ぶ。そして、再びやってきた女性は酒燗器チロリを持っている。よくある小さなチロリではない。大きなチロリである。それも口まですり切りいっぱいに酒が入っている。
「四杯以上入ってるけど、呑んじゃって」と言う。すごい量である。この量で720円である。
さっそく3人で乾杯をした。冷え切った身体に燗酒がしみてゆく。
ASIMO君とOZAKI先生は再会の乾杯である。フリーのプログラマーであるOZAKI先生は夜仕事をして、昼過ぎに起きるという生活をおくっているので、午後3時に呑むというのは珍しいことである。
「ちょうど、旅行行って、旅館の朝飯の時にお酒を呑んでいるような感じでしょ」と、私が言う。
すると、OZAKI先生は「どうも、調子が出ないですね、僕はマイペースで行きますからお二人はどんどんやってください」と言う。
次々に常連の皆さんがやってくる。杖をついたり、足をひきずっていたり、どの人も年齢の高い方ばかりである。
次のお店の開店が午後4時半なので、この店の滞在時間は1時間の予定である。すぐに焼き物を頼むことにした。焼き物の右端に「焼き物は3本以上でお願いします」と書いてある。これを私は、1種類3本以上と勘違いしてしまう。
「6種類ありますから全部食べますか」とASIMO君。
「それじゃ、6種類3本づつお願いします。」と、お店の方に言う私。完全に舞い上がっている。「きっと、1本は少ないと思うし、3種類くらい少しづつ出てくるんじゃない」と、勝手な憶測を言う私。
いつも小食のOZAKI先生はやや不安な表情であった。
酒がどんどんすすむ。身体も暖まり始めた。楽しそうに話し続ける私とASIMO君。
そこへ、煮込みがやってきた。全員、黙ってしまう。3つ運ばれてきた煮込みは一つが「小どんぶり一杯」の量であった。それも、野菜なども少しは入っているが、ほとんどが様々な部位のモツ肉でうめつくされている大盛り。しかも価格は一つ150円である。
「3人で1つで十分でしたね・・・失敗でした、まさか150円でこの量とは思いませんでした」とASIMO君。
「ということは、モツ焼きは・・・」、そう言った時、モツ焼きがやってきた。
モツ焼きは全部一度にやってきたのである。しかも、よくあるこじゃれたモツ焼き屋の小さく切った肉とは違う。ブツブツと大まかに切られ、串にさされたおおぶりの肉が、皿の上に二段に積み上げてある。それが二皿やってきたのである。
ここは内臓肉の卸店がやっているモツ焼き屋さんであった。その事を完全に忘れていた。
おおぶりのモツ焼きが18本、目の前に並ぶ。すごい量である。
再び、3人とも黙ってしまった。
「これ全部で900円ですよ。すごい安さですね」とASIMO君。
驚異的な安さである。1本150円のチェーンのモツ焼き屋だったら、6本しか食べられない値段である。
飲み物を追加する。ウイスキー(270円)と、瓶ビール大(460円)を頼んだ。
「ウイスキーは水割? ロック?」と聞かれる。「水割でお願いします」とASIMO君。
やってきた水割りをASIMO君と分けあって呑む。「水本当に入れたの?」と思うほどに濃い。「ダブルじゃなくて、トリプルみたいです。だいたい、色がウーロン茶みたいに濃いですものね」とASIMO君。
ビールは「アサヒスーパードライ」である。この点だけは玉に瑕である。しかし、大量のモツ肉を食べ続ける我々の口には、さっぱりとしてうまく感じたのである。
店内を見回す。コブクロ、みみ、ガツの3種類の肉の刺身がある。どれも150円である。
今回はこれ以上とても食べる気持ちになれないが次回は試してみたい。
たとえば、一人で来て、モツ焼き3本で150円、煮込み150円、ガツ刺し150円、酒2杯で済ませたとする。合計は930円になる。本当に「千円でベロベロ=センベロ」である。
実は、この店を紹介してくれたRAM元帥は、この店にお客さんに連れてきてもらったそうである。
その時、3人で早い時間から3時間ほど呑んで、お勘定をお願いした。
お店の人が「1万1千円です」と言うと、店中の客がどよめいたと言う。
「この店で1万円、嘘だろ」と常連客に笑われたそうである。
この話の意味が我々にはよく解る。モツ焼き50本食べても2,500円しかしないのである。
彼らはどれだけ呑んで食べてしまったのか。
実際に、RAM元帥たちがどれだけ食べたかは解らない。しかし、ちょっと、試算してみると、モツ焼き60本、煮込み3つ、刺身3つ、瓶ビール大10本、酒10杯で、その位の値段になるのである。
世の中には凄い人たちがいる。
店の中を見回すと、オードリーヘップバーンとマリリンモンローの古いカレンダーがたくさん貼ってある。レトロモダン風の作られたものではない、本当に汚れた古いカレンダーである。この店の歴史と奥行きを感じた。
我々3人は、約1時間の滞在で3,340円であった。1人1,110円ほどである。
外に出る。タクシーをつかまえて、「川崎・昼酒ツアー」の次の店へと向かった。
心の中で「煮込みという物は一度に一個しか頼まないようにしよう」と考えた。これも〈学習〉である。
※ ※ ※
2011年夏追記 南武侍さんの情報によれば、もつ焼きは50円から60円に値上がりしたそうである。さらに、ビールはキリンラガーもあるとのこと。うれしいではないか。

川崎 モツ焼き「島田屋」
住所 神奈川県川崎市川崎区境町11-3
電話 044-233-6998
定休日 日曜・祝日
営業時間15:00~21:00
交通 JR川崎駅東口下車徒歩20分
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ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
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