元住吉 炭火焼鳥「わいわい」
Life of the izakaya detective DAITEN
居酒屋探偵DAITENの生活 第666回 2018年12月19日(水) 【地域別】 【時間順】 【池上線】 【がっかり集】
元住吉 炭火焼鳥「わいわい」
~ バイスの色の美しさ ~

川崎市幸区の南加瀬辺りでの用事を済ませて、バスで元住吉駅に向かっていた。
元住吉駅の駅周辺は商店街が密集していて、広場やロータリーのようなものは無い。
バスは駅から五分ほどの綱島街道沿いで駅に向う人をおろすのである。
私の乗ったバス路線は南東側から綱島街道に出て関東労災病院の大きな建物を前に見て大きく左に曲がり、元住吉に到着するのだけれど、実は二つ手前の木月住吉で下りると、まっすぐ東急東横線の元住吉駅前に至るオズ通り商店の起点部分がそこにあるのだ。そのことを思い出して、バスを降りる。
すぐ左手に「モトスミオズ通り」の商店街の入口があった。

頭の中には、一軒の焼き鳥店のことがあったのである。オズ通り商店街を入って行き、すこし歩くと右手にそのお店はあった。炭火焼鳥「わいわい元住吉オズ通り店」である。この店名が示す通り、別に支店があって、武蔵小杉に「わいわい武蔵小杉法政通り店」という立ち飲み店もあるのだ。

波状のトタンに手書きのペンキ文字で「炭火焼鳥わいわい」と書かれている。
店の外は左半分が客が座れる場所になっていて、外に「やきとり」と書かれた暖簾が下げてある。左側には焼き台があり、そこで土産のやきとりを販売している。
入って右手のカウンターは四席。
左手の壁際にテーブルが二つあり、奥の角に置かれた小さなテーブルに向かって席が二つ。
もう一つの狭い簡易テーブルに向かって三人が座るようになっている。
カウンターは四つの席のうち、三つが埋まっていたので、壁を見ながら座る角の二人席に座ることにした。
まずは、 クエン酸サワー(三五〇円)を頼む。
やきとりは、若どり(一二〇円)、つくね(一二〇円)、豚なんこつ(一二〇円)を各一本ずつお願いする。
すっぱいクエン酸サワーを吞みながら店内を見回す。
お土産焼鳥を買いに来るお客様。焼台前の窓も店の裏口も開いているので店内と店外とが一体化している。十二月中旬の今はやはり寒い。でも寒さも肴である。
入ってこられた二人の方が隣のテーブルに座られた。
バイスセット(四〇〇円)を頼む。中焼酎は二〇〇円、外は二五〇円。ホッピーセットも同じである。
おつまみチャーシュー辛子マヨネーズ付(二五〇円)を追加する。
角打ちに行きたいというお話をお客様通しで話している。こういう話は楽しく情報としても有益だ。
バイス用の中焼酎(二〇〇円)をもらう。
中を頼むのは何年ぶりだろうか? ホッピーでは中は頼まない主義だった。バイスではそんな枷は自分に与えていない。
中焼酎がきた。氷も追加で入れてくれていて、グラスの中に残りのバイスを入れる場所がないほど濃い。
なんとかバイスを入れる。このバイスの薄いピンクは本当に美しい。
店内に「わいわい」の歴史を示すなかなかよくできた文章が貼ってあった。四十年の歴史のあった名物屋台が前身で、現在のような店舗になったとのこと。屋台時代に学生だった常連の方が大人になり、お子さんが出来て、孫も育ち、親子三代で来店してくれるとのこと。幸せなことである。

やがて、カウンターの方が急に「すいません」とおっしゃる。
何のことをおっしゃっているか解らなかった。
私の座っていたテーブルのもう一つの席にカバン置かれていてのである。
「すいません、すっかりカバンを置いているのを忘れて」
「いいえ、大丈夫です。」
「すいません」
「独りですから」
「どうも、どうも」
誠実な方である。
カバンを自分の膝の上に置いて、隣の方とお話しの続き。
久しぶりに居酒屋での小さな良きやりとりに出会えた。
私は幸か不幸か、耳が良いので周囲の会話はきちんと聴こえてしまう。
すぐに忘れることにしているが、そうやって会話を聞いていることが楽しいのだ。
様々な生きるヒントをいただけるからである。
さらに、カウンターの御常連がLINEで呼んだ若い方が登場。
働いている若くかわいい女性のファンのひとりの様子。。
熱燗を飲もうかなとも考える。
銘柄は高清水の辛口。
しかし、今日のところは帰ることにしよう。
お勘定をお願いした。一五六〇円。午後六時から六時四〇分まで四〇分の滞在。
「お先に失礼します」と声をかけると、
先程の常連の方が「すいません」とおっしゃる。
皆さんに「お先に」と言って外に出た。
酒場は酒を吞むだけの場所ではないと思う。
カウンターの方の吞んでいたバイスのグラスが目に入った。
紫色のバイスの色の美しさがこころに残る。
元住吉 炭火焼鳥「わいわい」
住 所 川崎市中原区木月住吉町7-60
電 話 044-789-9111
営業時間 16:00~22:00
定休日 不定休
交 通 東急東横線・目黒線元住吉駅徒歩4分。
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
演出家守輪咲良の劇集団「咲良舎」と演技私塾「櫻塾」
街の手帖については、コトノハ/街の手帖編集部へ。
居酒屋探偵DAITENの生活 第666回 2018年12月19日(水) 【地域別】 【時間順】 【池上線】 【がっかり集】
元住吉 炭火焼鳥「わいわい」
~ バイスの色の美しさ ~

川崎市幸区の南加瀬辺りでの用事を済ませて、バスで元住吉駅に向かっていた。
元住吉駅の駅周辺は商店街が密集していて、広場やロータリーのようなものは無い。
バスは駅から五分ほどの綱島街道沿いで駅に向う人をおろすのである。
私の乗ったバス路線は南東側から綱島街道に出て関東労災病院の大きな建物を前に見て大きく左に曲がり、元住吉に到着するのだけれど、実は二つ手前の木月住吉で下りると、まっすぐ東急東横線の元住吉駅前に至るオズ通り商店の起点部分がそこにあるのだ。そのことを思い出して、バスを降りる。
すぐ左手に「モトスミオズ通り」の商店街の入口があった。

頭の中には、一軒の焼き鳥店のことがあったのである。オズ通り商店街を入って行き、すこし歩くと右手にそのお店はあった。炭火焼鳥「わいわい元住吉オズ通り店」である。この店名が示す通り、別に支店があって、武蔵小杉に「わいわい武蔵小杉法政通り店」という立ち飲み店もあるのだ。

波状のトタンに手書きのペンキ文字で「炭火焼鳥わいわい」と書かれている。
店の外は左半分が客が座れる場所になっていて、外に「やきとり」と書かれた暖簾が下げてある。左側には焼き台があり、そこで土産のやきとりを販売している。
入って右手のカウンターは四席。
左手の壁際にテーブルが二つあり、奥の角に置かれた小さなテーブルに向かって席が二つ。
もう一つの狭い簡易テーブルに向かって三人が座るようになっている。
カウンターは四つの席のうち、三つが埋まっていたので、壁を見ながら座る角の二人席に座ることにした。
まずは、 クエン酸サワー(三五〇円)を頼む。
やきとりは、若どり(一二〇円)、つくね(一二〇円)、豚なんこつ(一二〇円)を各一本ずつお願いする。
すっぱいクエン酸サワーを吞みながら店内を見回す。
お土産焼鳥を買いに来るお客様。焼台前の窓も店の裏口も開いているので店内と店外とが一体化している。十二月中旬の今はやはり寒い。でも寒さも肴である。
入ってこられた二人の方が隣のテーブルに座られた。
バイスセット(四〇〇円)を頼む。中焼酎は二〇〇円、外は二五〇円。ホッピーセットも同じである。
おつまみチャーシュー辛子マヨネーズ付(二五〇円)を追加する。
角打ちに行きたいというお話をお客様通しで話している。こういう話は楽しく情報としても有益だ。
バイス用の中焼酎(二〇〇円)をもらう。
中を頼むのは何年ぶりだろうか? ホッピーでは中は頼まない主義だった。バイスではそんな枷は自分に与えていない。
中焼酎がきた。氷も追加で入れてくれていて、グラスの中に残りのバイスを入れる場所がないほど濃い。
なんとかバイスを入れる。このバイスの薄いピンクは本当に美しい。
店内に「わいわい」の歴史を示すなかなかよくできた文章が貼ってあった。四十年の歴史のあった名物屋台が前身で、現在のような店舗になったとのこと。屋台時代に学生だった常連の方が大人になり、お子さんが出来て、孫も育ち、親子三代で来店してくれるとのこと。幸せなことである。

やがて、カウンターの方が急に「すいません」とおっしゃる。
何のことをおっしゃっているか解らなかった。
私の座っていたテーブルのもう一つの席にカバン置かれていてのである。
「すいません、すっかりカバンを置いているのを忘れて」
「いいえ、大丈夫です。」
「すいません」
「独りですから」
「どうも、どうも」
誠実な方である。
カバンを自分の膝の上に置いて、隣の方とお話しの続き。
久しぶりに居酒屋での小さな良きやりとりに出会えた。
私は幸か不幸か、耳が良いので周囲の会話はきちんと聴こえてしまう。
すぐに忘れることにしているが、そうやって会話を聞いていることが楽しいのだ。
様々な生きるヒントをいただけるからである。
さらに、カウンターの御常連がLINEで呼んだ若い方が登場。
働いている若くかわいい女性のファンのひとりの様子。。
熱燗を飲もうかなとも考える。
銘柄は高清水の辛口。
しかし、今日のところは帰ることにしよう。
お勘定をお願いした。一五六〇円。午後六時から六時四〇分まで四〇分の滞在。
「お先に失礼します」と声をかけると、
先程の常連の方が「すいません」とおっしゃる。
皆さんに「お先に」と言って外に出た。
酒場は酒を吞むだけの場所ではないと思う。
カウンターの方の吞んでいたバイスのグラスが目に入った。
紫色のバイスの色の美しさがこころに残る。
元住吉 炭火焼鳥「わいわい」
住 所 川崎市中原区木月住吉町7-60
電 話 044-789-9111
営業時間 16:00~22:00
定休日 不定休
交 通 東急東横線・目黒線元住吉駅徒歩4分。
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