番外編 居酒屋探偵おまとめ紹介 相鉄線和田町・星川・天王町角打紹介
Life of the izakaya detective DAITEN
居酒屋探偵DAITENの生活
番外編 居酒屋探偵おまとめ紹介 【地域別】 【時間順】 【池上線】 【がっかり集】
番外編 居酒屋探偵おまとめ紹介 相鉄線和田町・星川・天王町角打紹介
~ 心の平安は地味な角打酒店で待っている ~

角打ちについて考えた。
物事の意味は時代に沿って変化してゆくものである。しかし、どうも最近は「角打ち」と「立ち吞み」を混同している方が多いように思う。角打ちの定義ついて正確な内容を知りたい方は今一度、調べてみていただきたい。ネットで検索すると答えが簡単に出てくる。本当の「角打ち」は一般の方に向けてお酒を販売している酒店さんに来店したお客様が普通の販売価格で買ったものをその店頭で飲む行為のことであり、それを出来るようにしている酒店さんを「角打ち」と呼ぶそうである。
しかし、私はちゃんと小売りもしている酒販店さんが簡単なカウンター等の場所を作って、あたかも立ち吞み店のように営業されている場合も「角打ち」と考えている。
東京城南地区の角打ちの出来る酒店さんはどんどん減っていった。
しかし、横浜市には「角打ち」はまだまだ残っている。私が紹介しただけでも黄金町「甘粕屋酒店」、東神奈川「三国屋」、大口「石川屋酒店」などの「角打ち」がある。
特に横浜から二俣川で分岐、海老名と湘南台に至る相鉄線沿線には、「角打ち酒店」さんがかなり残っている。私が紹介した中で、横浜駅から順番に列記すると、横浜「キンパイ酒店」、西横浜「福田屋本店 」、西横浜「白木屋酒店」、天王町「福屋尾崎商店」、西谷「白井酒店」などがある。
以上は、それぞれに特徴を持った比較的有名な角打ち酒店さんであり、ネット情報も多い。
しかし、今回は地元の特定の常連客の皆さんに向けて地味に靜かに営業をされている相鉄線沿線の三軒の角打ちの出来る酒店さんを紹介したいと思う。なお、今回は訪問日した日付は別々の日であり明記はしない。
和田町 「清水屋酒店」
このお店を発見したのは偶然だった。相鉄線の横浜駅から数えて五つ目の和田町駅の改札を出て北口側に降りた。踏み切りを右手に見ながら目の前の道を左へ。すぐに帷子川が流れており、そこにある橋を渡ると和田町商店街がある。商店街を抜けると八王子街道にでた。八王子街道の信号を渡り、歩道を右手へ歩いて行くと横浜新道の高い橋脚があり、その下をくぐると、左手にタクシーの営業所があって、その少し先に目的の店、清水屋酒店さんはあった。
このお店を発見したのは今回ではない、同じように散歩をしている時、正面の入口とは別の建物左側面のサッシの中に立つ人影の足元だけが見えて、これは角打ちではないかと思い、正面に回ってみると酒店さんだったのである。

外から中の人の顔を判らないように曇りガラス状になるシートが貼ってあるサッシを開けて中に入った。
目の前に五人から六人が立てるカウンターが横一列にある。お店の売り場側とカウンター外側とが完全に分かれている作りである。
店の奥でお店の女将さんらしい方が何かを仕分けされている。
「あの、吞ませてもらおうと思ってるんですけど・・・いいですか?」
「どうぞ、でも、もうすぐ終わりですけどいいですか?」
「ちょっとなんで大丈夫です・・・何時までですか?」
「7時半までです。」
サッポロ黒ラベル缶ビール(二五〇円)をいただいた。ただし、ビアタンブラーはアサヒである。

カウンターの中の壁につまみ類が実に几帳面に飾られている。

レンジがあり、何かを温めてもらえるようだ。
外用の大型の灰皿が店内にある。
「一服は心安らぐ店頭灰皿」という張り紙があった。
営業終了間際なので、灰皿を店内に入れてあったに違いない。

缶詰類も本当にきれいに並べられており、気持ちが良い。

千福の紙製ワンカップ(二三〇円)と鮭中骨缶詰(二〇〇円)をお願いする。鮭中骨缶詰は角打ちにあれば必ず頼んでしまう好物である。

「おことわり 当店は飲酒運転厳禁です 店主」という張り紙もある。
今や当たり前のことであるけれど、昔はそうではない人もいたのかもしれない。

手がやっと空いた様子の女将さんに質問をしてみた。
「並びにタクシー会社さんがありますけど、運転手さんが寄られるんですか」
「いいえ、昔と違ってあまり来ないですね」
「仕事終わりに軽く吞めて便利でしよね」
「仕事の車を降りて自家用車で帰ってしまうんですよ、皆さん」
「そうなんですかぁ」
こちらの角打ちの時間は午後4時から7時半とのこと。
ちょうど良い時間に仕事明けになるとは限らないのである。
さて、そろそろ帰ることにしよう。
午後六時五〇分から七時十五分まで、二十五分ほどの滞在。
支払った料金は六八〇円であった。
外にでて、少し和田町駅よりに戻るとバス停があった。

しかし、時間が来てもバスは来ない。
八分遅れでバスはやってきた。
ほろ酔い気分である。バスの旅も楽しい。
星川 一屋酒店(はじめやさけてん)
二軒目に紹介したいのは、地味系の角打ちができる酒屋さんの中で私が一番回数多く行っているお店である。
相鉄線の星川駅の南側改札口を出ると、歩道橋があって、そのままビルの中に入っていける。
ちょっとした飲食街になっている二階部分を抜けて、裏側の階段を左へ下りる。目の前の道を右へ。しばらく行くとバス通りとぶつかった。その星川駅入口という信号を左へ。バス通り沿いをしばらく歩くと星川町という信号がある。その信号の向う角が目的の店、「一屋酒店」さんである。いちやさけてんではない、はじめやさけてんと読むのでだ。

一屋酒店さんもまた建物の左側面に角打ちの入口があった。やはり、入りにくい感じである。

ガラガラと音をたてて木製のガラス戸を開けて中に入ると左手にカウンターがある。
カウンター奥のレジ前に店主の方が今日も座っていらっしゃる。
「どうも」と言って入ってゆくと。
「いらっしゃい」と、小声でおっしゃる店主の方。
カウンターのところから店内が見える。ビールや缶チューハイの時は自分で冷蔵ケースへ行く。
最初から日本酒の一升瓶から吞むなら店主の方に言ってついでもらう。

カウンターの右側が開いているので、店の奥の方に入って行き、冷蔵ケースから自分でビールを持ち出してカウンターへ戻った。

キリンラガー中瓶(三二〇円)である。キリンは中瓶、大瓶はサッポロ黒ラベルである。
もらったビアタンブラーを受け取り、五〇〇円玉を店主に渡して、もらったおつりはカウンターの上に置いておく。
ビールが今日もうまい。
先客の方は店主のすぐ近くに座って話していた。
やがて来た、さらなる常連さんが「甘いのダメだから」とマスターにパンのようなものを届けている。
カウンターの脇にウイスキーが逆さまに取り付けられていて、サントリーレッドワンショット(六〇円)で売られているのが凄い。サントリーレッドを久しぶりに見たような気がする。
つまみ類はプラスチックの菓子ケースに入って、棚にならべてあり、種類も多い。

缶詰類が棚にきれいに並べてある。さば、いわし、やきとりなど全て一七〇円。

さばの水煮(一七〇円)を棚から持って行き、店主の方に示すと缶を開けて、箸と箸置を置いてくださった。

ワンカップ(二一〇円)と味付け海苔(五〇円)をお願いする。

数人の方が店主の方のレジ席の向こう側の椅子に座って、店主の方と楽しくお話をされている。
一人目の方、アーモンドチョコをプレゼント。二人目の方はタバコを届けていた。
こちらの営業時間は午後三時から午後九時まで。
「でも、だいたいですよ、誰もいなければ閉めちゃうし・・・誰かいれば少し長めにやるし・・・」
私の立つカウンターの背後に神棚があった。

角ハイボール缶(二一〇円)をいただく。どれもリーズナブルな本来の角打ち価格。

「近くの横浜ビジネスパークで働いている方は来られますか?」と店主の方に聞いてみる。
「あそこの方々は居酒屋には行っても酒屋には来ないですよ」と店主の方。
テレビでは野球中継。私の位置からは店主の方の背後の鏡に映った逆映像が見えた。
マスターと皆さんで野球談義。
ベイスターズファンなのに、優しい店主はヤクルトに今日は勝たせてやりたいとのこと。
地元の方々のつながりが楽しい地域密着のお店である。
この日は合計九六〇円であった。
その後、しばたらくしてまた来た時は、淡麗グリーンラベル(一六〇円)、さば水煮缶(一七〇円)、一升瓶の松竹梅上撰(二〇〇円)でしめて五三〇円であった。リーズナブルだ。
その後も時々お邪魔している。
店内は、「全てがある時から止まっているという表現」を使いたくなるようなお店だ。
昔、川崎駅西口の丸と酒店という角打酒店で冗談を言って、いつもお客さんを笑わせていた祖父を思い出す。
思えば、その時はの祖父の年齢は今の私に近い。
祖父のそばでサイダーを飲みながら祖父を見上げ、座っていた五歳の私がそこにいるような気がした。
天王町(供福寺松原商店街) 中村酒店
天王町から十分ほど歩いた場所にある「横浜のアメ横」という異名で呼ばれる供福寺松原商店街には数軒の角打ちの出来る酒店さんがあった。
その一軒、伊達屋酒店さんは「居酒屋探偵DAITENの生活「あえて店名を伏せたまま」第4回『風鈴の鳴る角打酒店』という文章で紹介している。
しかし、伊達屋酒店さんはすでに数年前にお商売をやめられてしまっている。もう一軒もまたずいぶん前に無くなってしまったと聞いている。
そんな中、唯一残った角打ちの出来る酒店さんが中村屋酒店さんである。
外から見ると、赤いテントにも店名は無く、ビールやお酒のケースが見えなければ、酒店さんとは思わず通りすぎてしまいそうだ。

サッシをあけて、中に入ると右手に低い高さのカウンターがあり、その中に店主の方が立っておられた。
店内では、お二人に先客の方が奥の方のビールケースに座られていた。
瓶ビール大瓶をいただき、グラスを出してもらって吞んだ。
先客の皆さんとの世間話も楽しい。
入ったのは六時半頃であった。
話しているうちに、座っておられたお二人が急に立ち上がり、自分たちでお酒瓶やつまみのカラなどを片付けはじめた。
店主の方も特に何も言わず、いつもの様子のようで、ただただ、ながめていらっしゃる。

朝七時から夜七時までの営業とのこと。
午後七時の閉店時間を御客様たちが守っているのである。
閉店時間ちょうどに皆さんで外に出る。お互いに頭をさげて、店頭で別れた。
※ ※ ※
今回ご紹介した三店共に、御高齢の店主の方が静かに営業されているお店である。
お店の方に負担のかからない程度の人数、一人か二人で、是非、靜かに飲みに行っていただきたい。長居も無用である。
これからも静かに御商売を続けてやっていっていただきたいと思うからだ。
独りでの心の平安は、こんな地味な角打酒店でこそ待っていると私は思っている。
和田町 「清水屋酒店」
住所 横浜市保土ケ谷区和田2-4-5
電話 045-341-8574
交通 相鉄線和田町駅下車徒歩6分
星川 「一屋酒店」(はじめやさけてん)
住所 横浜市保土ケ谷区星川1-7-17
電話 0045-331-3125
交通 相鉄線星川駅下車徒歩3分
天王町 「中村屋酒店」
住所 横浜市西区浅間町5-382-5
電話 045-311-3568
交通 相鉄線天王町駅下車徒歩7分
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
演出家守輪咲良の劇集団「咲良舎」と演技私塾「櫻塾」
街の手帖については、コトノハ/街の手帖編集部へ。
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番外編 居酒屋探偵おまとめ紹介 相鉄線和田町・星川・天王町角打紹介
~ 心の平安は地味な角打酒店で待っている ~



角打ちについて考えた。
物事の意味は時代に沿って変化してゆくものである。しかし、どうも最近は「角打ち」と「立ち吞み」を混同している方が多いように思う。角打ちの定義ついて正確な内容を知りたい方は今一度、調べてみていただきたい。ネットで検索すると答えが簡単に出てくる。本当の「角打ち」は一般の方に向けてお酒を販売している酒店さんに来店したお客様が普通の販売価格で買ったものをその店頭で飲む行為のことであり、それを出来るようにしている酒店さんを「角打ち」と呼ぶそうである。
しかし、私はちゃんと小売りもしている酒販店さんが簡単なカウンター等の場所を作って、あたかも立ち吞み店のように営業されている場合も「角打ち」と考えている。
東京城南地区の角打ちの出来る酒店さんはどんどん減っていった。
しかし、横浜市には「角打ち」はまだまだ残っている。私が紹介しただけでも黄金町「甘粕屋酒店」、東神奈川「三国屋」、大口「石川屋酒店」などの「角打ち」がある。
特に横浜から二俣川で分岐、海老名と湘南台に至る相鉄線沿線には、「角打ち酒店」さんがかなり残っている。私が紹介した中で、横浜駅から順番に列記すると、横浜「キンパイ酒店」、西横浜「福田屋本店 」、西横浜「白木屋酒店」、天王町「福屋尾崎商店」、西谷「白井酒店」などがある。
以上は、それぞれに特徴を持った比較的有名な角打ち酒店さんであり、ネット情報も多い。
しかし、今回は地元の特定の常連客の皆さんに向けて地味に靜かに営業をされている相鉄線沿線の三軒の角打ちの出来る酒店さんを紹介したいと思う。なお、今回は訪問日した日付は別々の日であり明記はしない。
和田町 「清水屋酒店」
このお店を発見したのは偶然だった。相鉄線の横浜駅から数えて五つ目の和田町駅の改札を出て北口側に降りた。踏み切りを右手に見ながら目の前の道を左へ。すぐに帷子川が流れており、そこにある橋を渡ると和田町商店街がある。商店街を抜けると八王子街道にでた。八王子街道の信号を渡り、歩道を右手へ歩いて行くと横浜新道の高い橋脚があり、その下をくぐると、左手にタクシーの営業所があって、その少し先に目的の店、清水屋酒店さんはあった。
このお店を発見したのは今回ではない、同じように散歩をしている時、正面の入口とは別の建物左側面のサッシの中に立つ人影の足元だけが見えて、これは角打ちではないかと思い、正面に回ってみると酒店さんだったのである。

外から中の人の顔を判らないように曇りガラス状になるシートが貼ってあるサッシを開けて中に入った。
目の前に五人から六人が立てるカウンターが横一列にある。お店の売り場側とカウンター外側とが完全に分かれている作りである。
店の奥でお店の女将さんらしい方が何かを仕分けされている。
「あの、吞ませてもらおうと思ってるんですけど・・・いいですか?」
「どうぞ、でも、もうすぐ終わりですけどいいですか?」
「ちょっとなんで大丈夫です・・・何時までですか?」
「7時半までです。」
サッポロ黒ラベル缶ビール(二五〇円)をいただいた。ただし、ビアタンブラーはアサヒである。

カウンターの中の壁につまみ類が実に几帳面に飾られている。

レンジがあり、何かを温めてもらえるようだ。
外用の大型の灰皿が店内にある。
「一服は心安らぐ店頭灰皿」という張り紙があった。
営業終了間際なので、灰皿を店内に入れてあったに違いない。

缶詰類も本当にきれいに並べられており、気持ちが良い。

千福の紙製ワンカップ(二三〇円)と鮭中骨缶詰(二〇〇円)をお願いする。鮭中骨缶詰は角打ちにあれば必ず頼んでしまう好物である。

「おことわり 当店は飲酒運転厳禁です 店主」という張り紙もある。
今や当たり前のことであるけれど、昔はそうではない人もいたのかもしれない。

手がやっと空いた様子の女将さんに質問をしてみた。
「並びにタクシー会社さんがありますけど、運転手さんが寄られるんですか」
「いいえ、昔と違ってあまり来ないですね」
「仕事終わりに軽く吞めて便利でしよね」
「仕事の車を降りて自家用車で帰ってしまうんですよ、皆さん」
「そうなんですかぁ」
こちらの角打ちの時間は午後4時から7時半とのこと。
ちょうど良い時間に仕事明けになるとは限らないのである。
さて、そろそろ帰ることにしよう。
午後六時五〇分から七時十五分まで、二十五分ほどの滞在。
支払った料金は六八〇円であった。
外にでて、少し和田町駅よりに戻るとバス停があった。

しかし、時間が来てもバスは来ない。
八分遅れでバスはやってきた。
ほろ酔い気分である。バスの旅も楽しい。
星川 一屋酒店(はじめやさけてん)
二軒目に紹介したいのは、地味系の角打ちができる酒屋さんの中で私が一番回数多く行っているお店である。
相鉄線の星川駅の南側改札口を出ると、歩道橋があって、そのままビルの中に入っていける。
ちょっとした飲食街になっている二階部分を抜けて、裏側の階段を左へ下りる。目の前の道を右へ。しばらく行くとバス通りとぶつかった。その星川駅入口という信号を左へ。バス通り沿いをしばらく歩くと星川町という信号がある。その信号の向う角が目的の店、「一屋酒店」さんである。いちやさけてんではない、はじめやさけてんと読むのでだ。

一屋酒店さんもまた建物の左側面に角打ちの入口があった。やはり、入りにくい感じである。

ガラガラと音をたてて木製のガラス戸を開けて中に入ると左手にカウンターがある。
カウンター奥のレジ前に店主の方が今日も座っていらっしゃる。
「どうも」と言って入ってゆくと。
「いらっしゃい」と、小声でおっしゃる店主の方。
カウンターのところから店内が見える。ビールや缶チューハイの時は自分で冷蔵ケースへ行く。
最初から日本酒の一升瓶から吞むなら店主の方に言ってついでもらう。

カウンターの右側が開いているので、店の奥の方に入って行き、冷蔵ケースから自分でビールを持ち出してカウンターへ戻った。

キリンラガー中瓶(三二〇円)である。キリンは中瓶、大瓶はサッポロ黒ラベルである。
もらったビアタンブラーを受け取り、五〇〇円玉を店主に渡して、もらったおつりはカウンターの上に置いておく。
ビールが今日もうまい。
先客の方は店主のすぐ近くに座って話していた。
やがて来た、さらなる常連さんが「甘いのダメだから」とマスターにパンのようなものを届けている。
カウンターの脇にウイスキーが逆さまに取り付けられていて、サントリーレッドワンショット(六〇円)で売られているのが凄い。サントリーレッドを久しぶりに見たような気がする。
つまみ類はプラスチックの菓子ケースに入って、棚にならべてあり、種類も多い。

缶詰類が棚にきれいに並べてある。さば、いわし、やきとりなど全て一七〇円。

さばの水煮(一七〇円)を棚から持って行き、店主の方に示すと缶を開けて、箸と箸置を置いてくださった。

ワンカップ(二一〇円)と味付け海苔(五〇円)をお願いする。

数人の方が店主の方のレジ席の向こう側の椅子に座って、店主の方と楽しくお話をされている。
一人目の方、アーモンドチョコをプレゼント。二人目の方はタバコを届けていた。
こちらの営業時間は午後三時から午後九時まで。
「でも、だいたいですよ、誰もいなければ閉めちゃうし・・・誰かいれば少し長めにやるし・・・」
私の立つカウンターの背後に神棚があった。

角ハイボール缶(二一〇円)をいただく。どれもリーズナブルな本来の角打ち価格。

「近くの横浜ビジネスパークで働いている方は来られますか?」と店主の方に聞いてみる。
「あそこの方々は居酒屋には行っても酒屋には来ないですよ」と店主の方。
テレビでは野球中継。私の位置からは店主の方の背後の鏡に映った逆映像が見えた。
マスターと皆さんで野球談義。
ベイスターズファンなのに、優しい店主はヤクルトに今日は勝たせてやりたいとのこと。
地元の方々のつながりが楽しい地域密着のお店である。
この日は合計九六〇円であった。
その後、しばたらくしてまた来た時は、淡麗グリーンラベル(一六〇円)、さば水煮缶(一七〇円)、一升瓶の松竹梅上撰(二〇〇円)でしめて五三〇円であった。リーズナブルだ。
その後も時々お邪魔している。
店内は、「全てがある時から止まっているという表現」を使いたくなるようなお店だ。
昔、川崎駅西口の丸と酒店という角打酒店で冗談を言って、いつもお客さんを笑わせていた祖父を思い出す。
思えば、その時はの祖父の年齢は今の私に近い。
祖父のそばでサイダーを飲みながら祖父を見上げ、座っていた五歳の私がそこにいるような気がした。
天王町(供福寺松原商店街) 中村酒店
天王町から十分ほど歩いた場所にある「横浜のアメ横」という異名で呼ばれる供福寺松原商店街には数軒の角打ちの出来る酒店さんがあった。
その一軒、伊達屋酒店さんは「居酒屋探偵DAITENの生活「あえて店名を伏せたまま」第4回『風鈴の鳴る角打酒店』という文章で紹介している。
しかし、伊達屋酒店さんはすでに数年前にお商売をやめられてしまっている。もう一軒もまたずいぶん前に無くなってしまったと聞いている。
そんな中、唯一残った角打ちの出来る酒店さんが中村屋酒店さんである。
外から見ると、赤いテントにも店名は無く、ビールやお酒のケースが見えなければ、酒店さんとは思わず通りすぎてしまいそうだ。

サッシをあけて、中に入ると右手に低い高さのカウンターがあり、その中に店主の方が立っておられた。
店内では、お二人に先客の方が奥の方のビールケースに座られていた。
瓶ビール大瓶をいただき、グラスを出してもらって吞んだ。
先客の皆さんとの世間話も楽しい。
入ったのは六時半頃であった。
話しているうちに、座っておられたお二人が急に立ち上がり、自分たちでお酒瓶やつまみのカラなどを片付けはじめた。
店主の方も特に何も言わず、いつもの様子のようで、ただただ、ながめていらっしゃる。

朝七時から夜七時までの営業とのこと。
午後七時の閉店時間を御客様たちが守っているのである。
閉店時間ちょうどに皆さんで外に出る。お互いに頭をさげて、店頭で別れた。
※ ※ ※
今回ご紹介した三店共に、御高齢の店主の方が静かに営業されているお店である。
お店の方に負担のかからない程度の人数、一人か二人で、是非、靜かに飲みに行っていただきたい。長居も無用である。
これからも静かに御商売を続けてやっていっていただきたいと思うからだ。
独りでの心の平安は、こんな地味な角打酒店でこそ待っていると私は思っている。
和田町 「清水屋酒店」
住所 横浜市保土ケ谷区和田2-4-5
電話 045-341-8574
交通 相鉄線和田町駅下車徒歩6分
星川 「一屋酒店」(はじめやさけてん)
住所 横浜市保土ケ谷区星川1-7-17
電話 0045-331-3125
交通 相鉄線星川駅下車徒歩3分
天王町 「中村屋酒店」
住所 横浜市西区浅間町5-382-5
電話 045-311-3568
交通 相鉄線天王町駅下車徒歩7分
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
演出家守輪咲良の劇集団「咲良舎」と演技私塾「櫻塾」
街の手帖については、コトノハ/街の手帖編集部へ。