代々木青年座~渋谷「大戸屋」 そして、世間は狭い
Life of the izakaya detective DAITEN
居酒屋探偵DAITENの生活 第12回 2007年3月4日(日) 【地域別】 【時間順】
代々木青年座~渋谷「大戸屋」 そして、世間は狭い
代々木青年座「空の耳-Big me を探せ-」
今日はSAKURAと共に、代々木の青年座に向かった。
青年座研究所本科32期生実習公演「空の耳-Big me を探せ-」(作=永井愛 演出=黒岩亮)を見るためである。S.A.P.のメンバーで、咲良舎ランチシアター「愛のモルナールあえ2」に出演した木村夕佳は、現在、同研究所に所属しており、今回はその舞台姿を見るために「青年座劇場」に来たのである「VOL.003 横浜でブロードウェイを思う」に登場した咲良舎の俳優創間元哉とも一緒になった。他にS.A.P.のメンバーが数名来ていた。
S.A.P.のメンバーから様々な有名劇団や大劇場の養成機関に入る者も多い。逆に有名劇団に所属していて、S.A.P.のメンバーとなっている者もいる。S.A.P.は養成所ではない、メソード演技を学びたい俳優の為の演技のクリニックのようなものであるから、このような現象も当然といえば当然である。同時期に学んでいるメンバーの年齢差が30歳ほどというのも、いわゆる俳優養成所とは異なる存在である証拠かもしれない。
「空の耳~Big meを探せ」は、1992年7月9日~14日に下北沢本多劇場で二兎社の第19回公演として上演された作品である。もちろん作・演出は永井愛さん。出演者の中にご自身の名前もある。青年座が1997年に上演した「見よ、飛行機の高く飛べるを」では、永井愛さんは文化庁芸術祭大賞を受賞されている。この時の演出が今回の実習公演の演出をされた黒岩亮氏である。
今回は研究生の実習公演としての無料公演であったが、十分に楽しめる内容であった。3グループ総勢50名近くの研究生を出演させ、作品としてまとめてしまう黒岩亮氏の力量を感じることができた。
豪華客船上で行われる「自己啓発セミナー」に集まった13人の男女の葛藤を描いてゆく群像劇である。もちろん永井愛さんの台本であるから喜劇である。笑うべきシーンはたくさん用意されている。上演時間は前半1時間30分、後半1時間55分であるから、3時間半近くの大作である。その大半を占めるのが日系三世の講師テリー(鎌倉哲也)とアシスタント純代(木村夕佳)が受講生達に対して行う「エクササイズ」である。その分量の多さからか、見ている観客は、時間と空間の感覚が麻痺してきて、まるで本当に自分が「自己啓発セミナー」の見学をしているような気になってくる。
実は20年程前に、私自身も上海までの客船内で実施される7日間の研修旅行というものに、会社命令で参加したことがある。客船という閉鎖された空間で、朝早くから夜遅くまで団体行動を強いられながら勉強をさせられるというのは、普通の状況ではない。そんな状況の中、人がどんな精神状態になってゆくか、ということを身をもって体験した。船酔いという理由で船室からまったく出てこない参加者もいた。翌年の参加者の中から入水自殺をした者が出て、船が丸1日同じ場所を周回しても死体が見つからなかったということもあった。ゆえに、この登場人物たちの気持ちはとても解るのである。
木村夕佳は、過去にこの「自己啓発セミナー」を受けて開眼。BiG Meを見つけて生まれ変わり、この「セミナー」のアシスタントとなったという女性の役を演じている。
どこまでも強く、したたかで、自信に満ちている。よくある表現を使って評すれば、「木村は信者役を圧倒的な存在感で演じていた」と言える。「カルト信者」の持つ「過剰さ」をよく表現していて、こういう「カルト信者」はいるなと信じさせてくれた。
全員の前で美味しそうな食べ物の話をして、その食べ物を食べたくなりましたか? と講師に問われ、食べたくなった人間の数を競うというエクササイズのシーン。模範演技としてそれをやってみせ、本当に美味しそうな気持ちにさせてくれた。
今回は、木村夕佳のもっている「表」の部分が十分に生かされたキャスティングであった。全員を引っ張ってゆく役柄をきちんとやって見せたと思う。さらに、人物の裏側の怖さをもっと表現できればと思う。
渋谷「大戸屋」にて
青年座を出ると、SAKURAと創間と3人で渋谷まで歩いた。
創間元哉は3月末に客演で芝居に出る。その稽古が午後7時からあるという。つまり酒が呑めない。稽古前に食事をとりたいというので、大戸屋センター街店に入った。ここは2階が喫煙、3階が禁煙と完全に分煙化されている。我々は3階に行った。なんと24時間営業である。
大戸屋のホームページによれば、大戸屋は昭和33年1月、「創立者である先代社長三森栄一が、東京・池袋(現在の池袋東口店)に、「大戸屋食堂」として開店したことに始まる。 当初、先代は、「全品50円均一」と いうユニークな経営手腕を打ち出し、連日千人を越すお客様の支持を受け、「50円食堂」という愛称で親しまれる。」という。
私もこの池袋の「大戸屋食堂」で20年以上前に何度も食事をしたことがある。学生やサラリーマンでいつも混んでいた。しかし、今の大戸屋のように女性が1人で入ることの出来るような雰囲気ではなかった。昼間から酒を呑んでいる職人風の親父がいた。その名残なのか、今でもビール、日本酒、缶酎ハイなども置いていて、居酒屋代わりに使うことも出来る。
ある時、午前中の葬式に出席した帰り、お清めをする店に困って、高田馬場の大戸屋でSAKURAと呑んだことがあった。その時は今のようなしゃれた感じではなく、定食屋らしい雰囲気が残っていた。廻りにも同じようなことを考えている中年親父のグループが何組かいて、昼から酒盛りをしていた。
今日は、つまみとして、野菜と豚の黒酢炒め単品(546円)と牡蠣フライ単品(598円)を頼み、創間元哉はロースとんかつ定食(714円)を頼んだ。SAKURAはキリン一番搾り生ビール(435ml 430円)を、私は冷酒 (180ml 420円)を頼んだ。
他に酒類はキリン一番搾りミニ生ビール(200ml 210円)、日本酒一合(367円)、ワイン赤・白(90ml 189円)、キリンチューハイ氷結 レモン・梅(252 円)等がある。
安いといえば安い。ただし、私が行くディープ系居酒屋に比べれば高いとも言える。いずれにしても、定食を食べる人が主であるから、長居をする店ではない。追加注文の度にレジに行かなければならないのもわずらわしい。さっと呑んで帰るならば立ちのみ店をおすすめする。しかし、酒を呑む場所として「大戸屋」という選択肢もあることは確かである。
居酒屋探偵DAITENの生活 第12回 2007年3月4日(日) 【地域別】 【時間順】
代々木青年座~渋谷「大戸屋」 そして、世間は狭い
代々木青年座「空の耳-Big me を探せ-」
今日はSAKURAと共に、代々木の青年座に向かった。
青年座研究所本科32期生実習公演「空の耳-Big me を探せ-」(作=永井愛 演出=黒岩亮)を見るためである。S.A.P.のメンバーで、咲良舎ランチシアター「愛のモルナールあえ2」に出演した木村夕佳は、現在、同研究所に所属しており、今回はその舞台姿を見るために「青年座劇場」に来たのである「VOL.003 横浜でブロードウェイを思う」に登場した咲良舎の俳優創間元哉とも一緒になった。他にS.A.P.のメンバーが数名来ていた。
S.A.P.のメンバーから様々な有名劇団や大劇場の養成機関に入る者も多い。逆に有名劇団に所属していて、S.A.P.のメンバーとなっている者もいる。S.A.P.は養成所ではない、メソード演技を学びたい俳優の為の演技のクリニックのようなものであるから、このような現象も当然といえば当然である。同時期に学んでいるメンバーの年齢差が30歳ほどというのも、いわゆる俳優養成所とは異なる存在である証拠かもしれない。
「空の耳~Big meを探せ」は、1992年7月9日~14日に下北沢本多劇場で二兎社の第19回公演として上演された作品である。もちろん作・演出は永井愛さん。出演者の中にご自身の名前もある。青年座が1997年に上演した「見よ、飛行機の高く飛べるを」では、永井愛さんは文化庁芸術祭大賞を受賞されている。この時の演出が今回の実習公演の演出をされた黒岩亮氏である。
今回は研究生の実習公演としての無料公演であったが、十分に楽しめる内容であった。3グループ総勢50名近くの研究生を出演させ、作品としてまとめてしまう黒岩亮氏の力量を感じることができた。
豪華客船上で行われる「自己啓発セミナー」に集まった13人の男女の葛藤を描いてゆく群像劇である。もちろん永井愛さんの台本であるから喜劇である。笑うべきシーンはたくさん用意されている。上演時間は前半1時間30分、後半1時間55分であるから、3時間半近くの大作である。その大半を占めるのが日系三世の講師テリー(鎌倉哲也)とアシスタント純代(木村夕佳)が受講生達に対して行う「エクササイズ」である。その分量の多さからか、見ている観客は、時間と空間の感覚が麻痺してきて、まるで本当に自分が「自己啓発セミナー」の見学をしているような気になってくる。
実は20年程前に、私自身も上海までの客船内で実施される7日間の研修旅行というものに、会社命令で参加したことがある。客船という閉鎖された空間で、朝早くから夜遅くまで団体行動を強いられながら勉強をさせられるというのは、普通の状況ではない。そんな状況の中、人がどんな精神状態になってゆくか、ということを身をもって体験した。船酔いという理由で船室からまったく出てこない参加者もいた。翌年の参加者の中から入水自殺をした者が出て、船が丸1日同じ場所を周回しても死体が見つからなかったということもあった。ゆえに、この登場人物たちの気持ちはとても解るのである。
木村夕佳は、過去にこの「自己啓発セミナー」を受けて開眼。BiG Meを見つけて生まれ変わり、この「セミナー」のアシスタントとなったという女性の役を演じている。
どこまでも強く、したたかで、自信に満ちている。よくある表現を使って評すれば、「木村は信者役を圧倒的な存在感で演じていた」と言える。「カルト信者」の持つ「過剰さ」をよく表現していて、こういう「カルト信者」はいるなと信じさせてくれた。
全員の前で美味しそうな食べ物の話をして、その食べ物を食べたくなりましたか? と講師に問われ、食べたくなった人間の数を競うというエクササイズのシーン。模範演技としてそれをやってみせ、本当に美味しそうな気持ちにさせてくれた。
今回は、木村夕佳のもっている「表」の部分が十分に生かされたキャスティングであった。全員を引っ張ってゆく役柄をきちんとやって見せたと思う。さらに、人物の裏側の怖さをもっと表現できればと思う。
渋谷「大戸屋」にて
青年座を出ると、SAKURAと創間と3人で渋谷まで歩いた。
創間元哉は3月末に客演で芝居に出る。その稽古が午後7時からあるという。つまり酒が呑めない。稽古前に食事をとりたいというので、大戸屋センター街店に入った。ここは2階が喫煙、3階が禁煙と完全に分煙化されている。我々は3階に行った。なんと24時間営業である。
大戸屋のホームページによれば、大戸屋は昭和33年1月、「創立者である先代社長三森栄一が、東京・池袋(現在の池袋東口店)に、「大戸屋食堂」として開店したことに始まる。 当初、先代は、「全品50円均一」と いうユニークな経営手腕を打ち出し、連日千人を越すお客様の支持を受け、「50円食堂」という愛称で親しまれる。」という。
私もこの池袋の「大戸屋食堂」で20年以上前に何度も食事をしたことがある。学生やサラリーマンでいつも混んでいた。しかし、今の大戸屋のように女性が1人で入ることの出来るような雰囲気ではなかった。昼間から酒を呑んでいる職人風の親父がいた。その名残なのか、今でもビール、日本酒、缶酎ハイなども置いていて、居酒屋代わりに使うことも出来る。
ある時、午前中の葬式に出席した帰り、お清めをする店に困って、高田馬場の大戸屋でSAKURAと呑んだことがあった。その時は今のようなしゃれた感じではなく、定食屋らしい雰囲気が残っていた。廻りにも同じようなことを考えている中年親父のグループが何組かいて、昼から酒盛りをしていた。
今日は、つまみとして、野菜と豚の黒酢炒め単品(546円)と牡蠣フライ単品(598円)を頼み、創間元哉はロースとんかつ定食(714円)を頼んだ。SAKURAはキリン一番搾り生ビール(435ml 430円)を、私は冷酒 (180ml 420円)を頼んだ。
他に酒類はキリン一番搾りミニ生ビール(200ml 210円)、日本酒一合(367円)、ワイン赤・白(90ml 189円)、キリンチューハイ氷結 レモン・梅(252 円)等がある。
安いといえば安い。ただし、私が行くディープ系居酒屋に比べれば高いとも言える。いずれにしても、定食を食べる人が主であるから、長居をする店ではない。追加注文の度にレジに行かなければならないのもわずらわしい。さっと呑んで帰るならば立ちのみ店をおすすめする。しかし、酒を呑む場所として「大戸屋」という選択肢もあることは確かである。