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居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第13回/焼き鳥の無い焼き鳥屋について

居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第13回    【地域別】 【時間順】 【がっかり集】



焼き鳥の無い焼き鳥屋について



 渋谷の「とりすみ」という居酒屋さんには、「焼き鳥はありません」と書かれた小さい紙が入口の引き戸に貼ってある。そして、店名が「とりすみ」であるのに焼き鳥も鳥料理も置いていないのである。でも、入る時に張り紙を見れば解るのでそれほど問題はない。「とりすみ」は好きな店である。
 しかし、ちゃんと「焼き鳥」あるいは「串焼き」と看板に書かれた店であり、「焼き鳥はありません」といった「張り紙=情報」も無いまま、中に入ってみると焼き鳥が無かったという場合がある。これは少し問題である。先日、東急沿線の某駅の近くでブラリと入った店もそうであった。

 焼き鳥で軽く飲んで帰ろうかと思い、目に入った「串」の文字を含む店名の店に入った。扉を開けると客は誰もいない。奥で女将さんらしき人が電話をかけている。電話をすぐにやめて相手をしてくれた。ビールの銘柄を聞くとサッポロである。さっそくビールをいただく。さて、何を食べようかと壁の短冊を見ていると、ここで女将さんが申し訳なさそうに言う。
 「やきとりは今やってないんですよ・・・」
 「ああ、はい・・・それじゃ、丸干し焼いてくれます・・・」
 そんな会話である。

 焼き鳥という食べ物を安定供給するのは難しいに違いない。串打ちという作業が伴う上に、店の構造にもよるが、焼いている時は焼き台から離れることが出来ないので、一人きりで店を切り盛りしている場合はなかなかに難しいのである。
 大将あるいは女将さんがきちんと客をしつけ、客を待たせることが出来るか、それでも客がついてくれるか、その方の資質の問題かもしれない。
 以前入ったことのある東急線の駅近くのもつ焼き店の店主は凄かった。調理場は長く広い。長いカウンター席がある。焼き台は右手の端にあり、そこから5メートルほど離れたところに、酒類を造ったり作業をする調理台がある。
 三十人ほどは入れる店に一人きりである。焼き物を頼むと調理台から焼き台まで、串を何本か持ってゆく。離れた焼き台の上に、焼きものを放り出すように乗せて離れてしまう。左手の調理台に戻ると、開店から2時間近くたっているのにもかかわらず、肉を串に刺している。
 「その作業は昼間のうちにやっておくべきではないか?」と思う。
串を打ちながらチラッと焼き台を見る。サワーなどを注文すると作る。
 「焦げちゃうのでは?」と、客である私が心配をする。「代わりに焼き台を見てましょうか?」と思う。
 串打ちは続く。何か変わった注文が入ると作る。サワーを作る。走る訳でもなく焼き台に行く。もつ焼きを裏返す。やってきたもつ焼きは噛みきれない程に焼き過ぎであった。

 さて、先日行った店の話に戻る。
 私は、手羽元や野菜をお酢を使って煮ている煮物をいただいた。なかなかにうまい。
 常連の方がやってきた。お通しが出てくると、「昨日と同じだなあ」と言う。すると女将さんが違うものと取り替えた。生ビールを飲んだ後、私と同じ煮物をもらって、御飯と味噌汁を注文している。こうやって、毎日夕ご飯を食べているのであろうか。
 こういう店も必要なのである。しかし、入口に小さく「串焼きありません」と書いていただけるとうれしい。私のように知らない街で知らない店に入ってしまう客もいるのである。これもまた「経験」として受け入れるしかない。最初に店を出てゆけば良いと思われるだろうがそれもかわいそうな気がする。
 入口の換気扇から煙りの出ていない「焼き鳥、もつ焼き、串焼き店」の場合は気を付けた方が良いかもしれない。しかし、私は丸干しを注文していた。煙はあたりに一杯になり、換気扇から出ていった。換気扇から出ている煙を目で見るだけではダメである。匂いをかいで、それが焼き鳥の匂いであるかどうか確認しなければいけない。
 なんとなく「不完全燃焼」のまま、外に出た。

 (了)

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