世田谷 居酒屋「酒の高橋」
Life of the izakaya detective DAITEN
居酒屋探偵DAITENの生活 第2回 2006年8月4日(金曜) 【地域別】 【時間順】 【がっかり集】
世田谷 居酒屋「酒の高橋」
〜 OZAKI先生と世田谷線を歩く 〜
演出のSAKURAと五反田駅で待ち合わせ、出来たばかりの両国・シアター×での「試練」の公演チラシを受け取り、 三軒茶屋の世田谷パブリックシアターに向かった。駅前のキャロットタワーの5階に制作部がある。 その受付に行き、置きチラシをお願いする。別の階には、ワークショップの出来るスペースがあったり、贅沢な空間である。行政はすごい。世田谷区民の払った税金は確実に使われている。
それから午後7時30分に「OZAKI先生」と世田谷線の世田谷駅で待ち合わせをした。
OZAKI先生は私の学生時代の恩師でもなければ、演技や踊りの師匠でもない。しかも、彼は教員資格をもっているわけでもない。出版関係の仕事をしているフリーのシステム屋さんである。アマチュアバンド時代のメンバーの一人だが、メンバーは今も彼を「OZAKI先生」と呼ぶ。若い頃から超然とした雰囲気があり、突然日本から消え、数ヶ月も東欧やアジア各国を放浪したりする。OZAKI先生はどこの国に行っても外国から来た旅行者だと思われないらしい、それくらい、その場所に適応してしまうのだ。
OZAKI先生を待って、世田谷線の世田谷駅の三軒茶屋方面ホームに座っていた。世田谷線は2両編成で走っている。1両目の一番前と2両目の一番後ろに入口があり、140円という均一料金を料金箱に入れて乗る。車中は一方通行になっていて、乗客は出口に向かい、自分の降りたい駅につくと、その出口から外にでる。
しばらくして、下高井戸発の電車がやってきた。
一番前の車両、入口ドアの中にOZAKI先生の姿が見えた。
「あっ、わかっていない」。そう思った。
駅についても入口ドアは開かない、OZAKI先生は入口の前に立って、ドアが開くのを待っている。先生はやっと気づいた。急いで出口まで行き、開いた出口から出てきた。私は笑いが止まらない。
「入口前に立たないでください」とアナウンスされたという。いつもながらのおいしい登場である。
世田谷駅脇の踏切を渡り、世田谷通り方面に1分ほど歩く。 そこに、今日の目的地である「酒の高橋」の赤い提灯が見える。その赤い提灯には「勉強王」と書かれている。謎である。外に値段も出ていなければ、中の様子もまったく見えない。古い店の外観は、常連以外の人間を拒否している。
今回が二度目の来店だが、居酒屋系ブログからの情報なしに、この店に入ることはなかったと思う。
店に入ると、右側に10人ほど座ることのできるカウンター、左側に小上がりがあり、テーブルが4つある。ホッピーをいただき、刺身の3点盛りを頼む。 今日は3点盛りは、マグロ、ヒラメ、シメサバ、イカの4点盛りであった。厚く切られたヒラメが特にうまい。
やがて、OZAKI先生が「焼きおにぎり」をたのむと言いだす。 メニューにそんなものはない。でも「焼きおにぎり」という言葉を聞いたと言う。
「焼きおにぎりください」と先生。
「ご飯はないんですけど・・・」との答え。
先生の幻聴だったようである。
何を食べてもうまい。家の近くにこの店があったら、毎日通ってしまいそうである。ニラ玉など何品か頂き、1時間ほどで外に出る。
居酒屋探訪をするには、地元の皆さんの楽しい場所におじゃまさせていただく、という姿勢が大切である。
大きな顔をしたり、大声をはりあげたり、知ったかぶりをしない、解らないことは、質問をする。そして、長居をしない。気持ちよくいるための方法である。
それから、松陰神社前駅近くまで世田谷通りを歩く、商店街に入り、しばらく散策。昔のマーケットの雰囲気を残した場所が懐かしかった。
松陰神社前駅から再び世田谷線に乗った。OZAKI先生が料金箱に200円を入れたその瞬間、「釣り銭の方は釣り銭と書かれた口にお入れください」という社内放送が入る。絶妙のタイミングであった。
先生は釣り銭を一度はあきらめ、離れた出口付近に、私と立っていた。私はそのタイミングの良さがおかしかった。やがて、思い直した先生は釣り銭のことを入口に立つ車掌に言おう思ったらしく、入口のところに歩いて行った。でも、何も言おうとしない。どうしたのかと思っていると、電車は目的地の「山下」駅についた。
先生が急いで出口の方に戻ってきた。
「何も言わなかったの?」と聞くと、
「降りる時に一言、言ってやろうと思ったんですけど、ドアが開かなくて・・・」と答える。
車掌の立っている入口は、乗る人がいなければ開かない。
OZAKI先生はそのことを忘れていたのである。
どうもOZAKI先生は世田谷線とは相性が合わないらしい。
山下駅は小田急線の「豪徳寺」駅の近くにある。 豪徳寺のすでにシャッターが閉まった夜の街を散歩、見知らぬ店で軽く呑んで10時すぎのお開きだった。
豪徳寺駅で、先生は、ちょっと小首をかしげ、片手を少し上げ、下りの小田急線ホームにあがっていった。
もう20年近いつきあいだが、OZAKI先生と会うとホッとする。心が和む。ダイニング&バー「楽屋」のオーナーMASHIMO君と3人で、夜の街を飲み歩いた昔に帰ることが出来る。
OZAKI先生は私の「先生」ではない、大切な「友人」である。
世田谷 居酒屋「酒の高橋」
住所 東京都世田谷区世田谷3-1-26
電話 03-3420-5051
定休日 日曜及び第3土曜日
営業時間 17:00~23:00
近くに劇団スーパーエキセントリックシアターの稽古場がある。
実力派俳優になりたい人は→ 咲良舎/櫻塾
居酒屋探偵DAITENの生活 第2回 2006年8月4日(金曜) 【地域別】 【時間順】 【がっかり集】
世田谷 居酒屋「酒の高橋」
〜 OZAKI先生と世田谷線を歩く 〜
演出のSAKURAと五反田駅で待ち合わせ、出来たばかりの両国・シアター×での「試練」の公演チラシを受け取り、 三軒茶屋の世田谷パブリックシアターに向かった。駅前のキャロットタワーの5階に制作部がある。 その受付に行き、置きチラシをお願いする。別の階には、ワークショップの出来るスペースがあったり、贅沢な空間である。行政はすごい。世田谷区民の払った税金は確実に使われている。
それから午後7時30分に「OZAKI先生」と世田谷線の世田谷駅で待ち合わせをした。
OZAKI先生は私の学生時代の恩師でもなければ、演技や踊りの師匠でもない。しかも、彼は教員資格をもっているわけでもない。出版関係の仕事をしているフリーのシステム屋さんである。アマチュアバンド時代のメンバーの一人だが、メンバーは今も彼を「OZAKI先生」と呼ぶ。若い頃から超然とした雰囲気があり、突然日本から消え、数ヶ月も東欧やアジア各国を放浪したりする。OZAKI先生はどこの国に行っても外国から来た旅行者だと思われないらしい、それくらい、その場所に適応してしまうのだ。
OZAKI先生を待って、世田谷線の世田谷駅の三軒茶屋方面ホームに座っていた。世田谷線は2両編成で走っている。1両目の一番前と2両目の一番後ろに入口があり、140円という均一料金を料金箱に入れて乗る。車中は一方通行になっていて、乗客は出口に向かい、自分の降りたい駅につくと、その出口から外にでる。
しばらくして、下高井戸発の電車がやってきた。
一番前の車両、入口ドアの中にOZAKI先生の姿が見えた。
「あっ、わかっていない」。そう思った。
駅についても入口ドアは開かない、OZAKI先生は入口の前に立って、ドアが開くのを待っている。先生はやっと気づいた。急いで出口まで行き、開いた出口から出てきた。私は笑いが止まらない。
「入口前に立たないでください」とアナウンスされたという。いつもながらのおいしい登場である。
世田谷駅脇の踏切を渡り、世田谷通り方面に1分ほど歩く。 そこに、今日の目的地である「酒の高橋」の赤い提灯が見える。その赤い提灯には「勉強王」と書かれている。謎である。外に値段も出ていなければ、中の様子もまったく見えない。古い店の外観は、常連以外の人間を拒否している。
今回が二度目の来店だが、居酒屋系ブログからの情報なしに、この店に入ることはなかったと思う。
店に入ると、右側に10人ほど座ることのできるカウンター、左側に小上がりがあり、テーブルが4つある。ホッピーをいただき、刺身の3点盛りを頼む。 今日は3点盛りは、マグロ、ヒラメ、シメサバ、イカの4点盛りであった。厚く切られたヒラメが特にうまい。
やがて、OZAKI先生が「焼きおにぎり」をたのむと言いだす。 メニューにそんなものはない。でも「焼きおにぎり」という言葉を聞いたと言う。
「焼きおにぎりください」と先生。
「ご飯はないんですけど・・・」との答え。
先生の幻聴だったようである。
何を食べてもうまい。家の近くにこの店があったら、毎日通ってしまいそうである。ニラ玉など何品か頂き、1時間ほどで外に出る。
居酒屋探訪をするには、地元の皆さんの楽しい場所におじゃまさせていただく、という姿勢が大切である。
大きな顔をしたり、大声をはりあげたり、知ったかぶりをしない、解らないことは、質問をする。そして、長居をしない。気持ちよくいるための方法である。
それから、松陰神社前駅近くまで世田谷通りを歩く、商店街に入り、しばらく散策。昔のマーケットの雰囲気を残した場所が懐かしかった。
松陰神社前駅から再び世田谷線に乗った。OZAKI先生が料金箱に200円を入れたその瞬間、「釣り銭の方は釣り銭と書かれた口にお入れください」という社内放送が入る。絶妙のタイミングであった。
先生は釣り銭を一度はあきらめ、離れた出口付近に、私と立っていた。私はそのタイミングの良さがおかしかった。やがて、思い直した先生は釣り銭のことを入口に立つ車掌に言おう思ったらしく、入口のところに歩いて行った。でも、何も言おうとしない。どうしたのかと思っていると、電車は目的地の「山下」駅についた。
先生が急いで出口の方に戻ってきた。
「何も言わなかったの?」と聞くと、
「降りる時に一言、言ってやろうと思ったんですけど、ドアが開かなくて・・・」と答える。
車掌の立っている入口は、乗る人がいなければ開かない。
OZAKI先生はそのことを忘れていたのである。
どうもOZAKI先生は世田谷線とは相性が合わないらしい。
山下駅は小田急線の「豪徳寺」駅の近くにある。 豪徳寺のすでにシャッターが閉まった夜の街を散歩、見知らぬ店で軽く呑んで10時すぎのお開きだった。
豪徳寺駅で、先生は、ちょっと小首をかしげ、片手を少し上げ、下りの小田急線ホームにあがっていった。
もう20年近いつきあいだが、OZAKI先生と会うとホッとする。心が和む。ダイニング&バー「楽屋」のオーナーMASHIMO君と3人で、夜の街を飲み歩いた昔に帰ることが出来る。
OZAKI先生は私の「先生」ではない、大切な「友人」である。
世田谷 居酒屋「酒の高橋」
住所 東京都世田谷区世田谷3-1-26
電話 03-3420-5051
定休日 日曜及び第3土曜日
営業時間 17:00~23:00
近くに劇団スーパーエキセントリックシアターの稽古場がある。
実力派俳優になりたい人は→ 咲良舎/櫻塾