御嶽山 焼き鳥「寿有里」
【居酒屋探偵DAITENの生活】 ついに紹介店200軒!
御嶽山 焼き鳥「寿有里」




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ある日の思い出
1980年頃、当時二十歳になったばかりの私は、酔うために酒を飲み、腹を満たす為につまみを食べる場所、それが居酒屋だと思っていた。店の人と話をしたり、始めて出会う客同士が世間話をしたり、地元の情報を共有する場としての居酒屋の機能を知らなかったのである。
1980年代前半は地酒ブームが起きた頃で、越乃寒梅に一本数万円の値段が付いたものだ。また、1980年代後半のバブル期に突入する前であり、時代の雰囲気は、派手なもの、高級志向のものを持てはやす傾向にあった。私もまた、先輩たちに連れて行かれるバーボンを飲ませるバー、高級な吟醸酒を飲ませる料理屋等に憧れたものである。
そんな二十歳の頃のある日の自分を思いだした。昼間働き、夜は学校に通っていた。ある時、同級生に新宿駅西口の小さなカウンターだけの飲み屋に連れてゆかれた。二人とも学生でありながら働く身の上なのでスーツを着ていた。
小さなコの字カウンターがあって、つまみは本当に簡単なもので、食べる物も酒の価格も安かった。
当時、友人たちと行く大規模チェーンの店は、照明も明るく、店員が大声で「よろこんで!」とか、「○○いただきました!」と連呼するような店、マニュアル通りの方法で「活気」を演出した流行のニュー居酒屋だった。
そういう店に比べれば、たしかに活気の無い店だった。その友人も働きながら学校に通う身であり、生活防衛の為に安い飲み屋に通っていたに違いない。「親父さんが変わっていて面白いんだ」という友人の言葉を聞いてその店に入った。しかし、何が面白いのか当時の私には何も解らなかった。特に何かに満足することもないまま外に出た。きっと、その店の良さを今の私なら解るに違いない。
二十歳の頃のそんなエピソードを思い出させてくれたのが、東急池上線の御嶽山駅の近くにある焼き鳥「寿有里」であった。
「お茶っぴき」のない店
東急池上線の雪谷大塚、御嶽山、久が原、千鳥町の4駅の間の線路脇には、約2.5㎞に渡って一本の道が続いている。御嶽山駅の蒲田方面の改札口はその一本道に面している。駅のすぐ脇に線路に直角に交わる道があって踏切がある。そして、線路脇の道と直角に交わる道が踏切前で十字路になっている。踏切を渡った西側は商店街で右手にジャスコ、踏切を渡らずに、改札から見て十字路の斜め向こう側にはマクドナルドがある。マクドナルドを左に見ながらチェーンの寿司店、スーパーオオゼキなどの前を通り、商店街を進む。最初の十字路に出たら右に曲がると、右手に赤提灯がある。そこが今日の目的の店焼き鳥「寿有里」である。
道の反対側に渡り、中の様子を見る。男性と女性の客がカウンターに座っていた。いつもは中をのぞくと満席だった。今日は席が空いている。入ってみることにした。
左手にカウンターがある。カウンターは手作りのものであり、よく公共施設の会議室などにある折りたたみ式の長いテーブルをカウンターとして、調理場との区切りの台の前に置いてあるのである。どこかよそ様の台所におじゃましたような感じで実に和む。カウンターの焼き台の前には女将さん、奥の冷蔵庫前に御高齢の男性が立っている。
飲み物メニューを見て、男性にハイリキ(350円)をお願いした。300ミリリットル入りのずんぐりとした「ハイリキ」の瓶と氷の入った小さなビールジョッキが一緒に出てきた。
焼き鳥は、皮(90円)、つくね(90円)、もも肉(100円)を一本ずつタレで頼んだ。最近はタレを頼むことが多くなってきた。どちらかといえばモツ焼きは塩、焼き鳥はタレが好きである。
味噌こんにゃく(200円)、ゆでたまご(100円)が気になり、厚揚げ(250円)も良いと思った。結局、味噌こんにゃくを頼む。手作りカウンターに座りながらテレビを見て、ハイリキを飲む。なんでもない時間に癒されている自分がいる。
2杯目はウーロンハイ(330円)を頼んだ。普通にサワーグラスに入って出てくる。
ほうれん草のおひたし(200円)も頂いた。ここで、女将さんが古漬けを出してくれた。お酒(350円)を冷やでもらい、古漬けで飲む。うまい。
女将さんが「開店以来四年目になりますが、おかげさまで一日も「お茶っぴき」は無かったんですよ。」とおっしゃる。「お茶っぴき」という花柳界の言葉を久しぶりに聞いた。
因みに「お茶っぴき」とは「お茶を挽く」ということ。お座敷がかからず芸者がヒマなことを意味する、江戸吉原が発祥らしい。客の取れない暇な者がお茶の葉を臼で挽いて粉茶をつくらされたことが語源である。
早く帰るつもりが居心地の良さに、三杯三品になってしまった。
午後6時45分から7時30分までの45分ほどの滞在。お勘定は1,710円であった。
帰り道、猫に出会った。私の泣きまねに答えてくれる。でも元気がない。
「車に気をつけて帰るんだよ。」と声をかける。
毎日のように街を彷徨い、何か解らないものを探していた二十歳の頃の自分を思い出す。
追記・・・記念すべき200軒目
私が「居酒屋探偵DAITENの生活」で居酒屋を紹介し始めてちょうど200軒目が今日の店であった。池上線での紹介店としても50軒目である。ちょうど池上線全15駅の居酒屋を紹介したことにもなる。自分にとって一区切りの店、それが地元の人々に愛されている何気ない普通の店であることがうれしい。
過去200軒のお店の地域別一覧表があるのでそちらをご覧頂きたい。
御嶽山 焼き鳥「寿有里」
住所 東京都大田区北嶺町31-1
電話 03-3728-7222
定休日 日曜日(営業する場合も多いとのこと)
営業時間 15:00~21:00
交通 東急池上線御嶽山駅下車徒歩3分
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ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。
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