蒲田 居酒屋「かわ田」
※2009年11月22日 380,000カウント通過 感謝!
蒲田 居酒屋「かわ田」



土曜日の午後、買い物がてら蒲田の街にやってきた。買い物を済ませ、JR蒲田駅東口のロータリーを渡り、裏通りを抜けて、京急蒲田方面へ行く。京急蒲田駅で京浜急行線に乗り、隣の雑色駅で下車。雑色駅周辺の商店街を散策した後、蒲田駅へ向かうバス通りを歩いた。このバス通り沿いの地域には黒湯の温泉施設が多い。ヌーランドさがみゆ、蒲田温泉などである。しかし、今日のところは着替えの用意もしていない上に、買い物の残りもあったのでどこにも入らなかった。10年前、居酒屋探偵ではなく、銭湯探偵だった頃にどちらも何度か入ったことがある。ヌーランドさがみゆは新しい建物で広く、どちらかといえばファミリー向け、蒲田温泉は古い建物で狭く、どちらかと言えばお年寄り向けかもしれない。
雑色にも入ってみようと思う店があったけれど、まだ早い時間でやっていなかったり、やっていてもなんとなく入りづらかったりして、どこにも入らずにバス通りを歩き続けた。やがて、環状8号線を渡って蒲田駅東口に戻ってきた。
JR蒲田駅東口に降り立ち、左手に歩いて、交番の前を通って、最初の路地に入らず、京急蒲田方面へ向かう大通りの歩道を進み、次の路地を左に入る。すると、右手に居酒屋「かわ田」があった。
「天下一煮込」と書かれた赤い提灯を見ながら縄のれんをくぐる。店内はとても静かだ。店の奥の席で大将が新聞を読んでいた。時計を見ると午後4時40分である。まだ早い時間なのでお客さんの姿はない。本当に店内は静かである。音の消されたテレビは相撲中継を流している。
「レモンサワー(350円)お願いします」
「はい、レモンサワー・・・レモンサワーは梅干入れますか?」
少し驚いた。こちらの店では、レモンサワーに梅干を入れてのむのが定番らしい。
「いいえ、梅干無しでお願いします」
「はい、梅干し無しですね・・・」
メニューを見ると梅干しを入れると450円になるらしい。
大将がグラスを出したり、そこに氷を入れたりする音だけが聞こえる。静かである。
「はい、どうぞ」
レモンサワーを飲みながら、メニューを見る。
「煮込み(550円)お願いします」
「はい、煮込み、ひとつ・・・」
煮込みの準備が始まる。鍋を火に掛けたりする音だけが聞こえる。静かである。
大将が赤いオワンを私の前に置いた。
「煮込み、すぐ出来ますんで、これで、ちょっとお待ちください・・・」と言う。
出してくれたのは、蟹と白菜のスープのようである。
スープを飲みながら待つ。身体が暖まる。
「おまちどおさまです」
煮込みがやってきた。小さな鍋に肉と豆腐のみの煮込み。なかなか、美味しいが私には塩分が少し強い。玉子入りは650円であるという。
2杯目は、お湯割にしようと考えた。
「焼酎お湯割りお願いします」
「麦と芋があるんですが・・・」
「芋は何ですか?」
「黒一っていうんですが・・・」
「それじゃ、それお願いします」
「芋焼酎ひとつ・・・」と言って、大将は伝票に記入した。
大将がテレビの画面を見ながら少し笑う。店内は大将の笑い声のみ。静かである。
「あの・・・納豆オムレツお願いします。」
「はい、納豆オムレツ・・・」
納豆オムレツ(470円)が出来るまで、静かな店内で昔のことを考えた。初めて「納豆オムレツ」というものを食べたのは今から30年近く前である。当時、練馬区江古田の日大芸術学部の学生だったKさんのバイト先が西武池袋線の石神井公園駅近くの書店であった。その書店に顔を出した時、店の閉店後に連れて行ってもらったのが並びの小さな居酒屋風スナック。そのスナックのメニューにあったのが納豆オムレツであった。ある種のカルチャーショックというか、とても驚いたことを覚えている。
このKさんの住んでいた古いアパートには、色々な方々がいた。そのアパートを「館(やかた)」と呼び、よく遊びに行った。ここの皆さんにはずいぶんと影響を受けた。世の中に、デザインの仕事や映画・テレビのスタッフの仕事をしながら生きている若者たちがいることを初めて具体的に知り、自分もその方面を目指してみたいと思ったものである。
「納豆オムレツおまちどうさまです」
納豆オムレツを受け取り、眺める。大きい。食べてみる。半生状態のオムレツであった。納豆1つ分が入っているようだ。ひきわりではなく、大粒である。30年前に食べた納豆オムレツは、もっとよく焼いてあって卵焼きに近い状態で、納豆の豆が一部焦げていて、香ばしい匂いがした。30年前のことを匂いまで思い出すことが面白かった。
静かである。居酒屋でただ1人、納豆オムレツを食べている自分がいる。口の中の咀嚼する音まで聞こえる。
時間は午後5時20分になっていた。お湯割りも飲んでしまった。頭の芯がゆるんできた。帰ることにしよう。
「お勘定お願いします。」
伝票の計算をする大将。
「2070円です。」
ぴったりの金額を財布から出して渡す。
「ありがとうございました」
「ごちそうさま」
外は薄暗くなっていた。寒い。ゆるんだ頭の芯に何かが通ってゆく。
急いで駅を目指した。
蒲田 居酒屋「かわた」
住所 東京都大田区蒲田5-9-15
電話 03-3737-2884
定休日 ?
営業時間 ?
交通 東急池上線・多摩川線蒲田駅下車徒歩5分。JR京浜東北線蒲田駅下車徒歩3分。
ホッピー原理主義者とは?
ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
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ありがとうございます