蒲田 立ち呑みや「の~ぜ」
居酒屋探偵DAITENの生活 第309回 2010年1月31日(日) 【地域別】 【池上線】 【時間順】 【がっかり集】
※京急蒲田駅西側の再開発に伴い、梅屋敷へ移転。
蒲田 立ち呑みや「のーぜ」




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sakuraのワークショップやレッスンを受けているメンバーたちに習って、今日は酒場でキャラクターを設定して飲むことにした。まずテーブルに千円を置く。私が自分の為に設定したキャラクターは次の通り。
年齢は45歳。ある犯罪に巻き込まれ、他の人間の罪を被って10年間も刑務所に入っていた。世間に戻ってみると、音信不通だった妻はすでに死んでおり、妻の母親に育てられている15歳の娘が田舎にいる。自分の存在を隠したまま、働いた金の中から毎月仕送りをしているのである。一週間に一度、立ち飲み酒場で酒を飲むのが唯一の楽しみである。しかし、少しでも仕送りを多くする為、千円以上は絶対に飲まないようにしている。そんな中、最近、妻の母親の体調がよくないという話を田舎の友人から聞いて、娘の行く末を案じている。また、自身も喉頭癌の不安を抱えているのだ。
店内には静かなジャズが流れている。壁の短冊にはホッピー(300円)と書いてある。
声もいつもと変えてみた。いや、自然と声が変わっている。
「ホッピーください・・・氷なしで・・・」
「ホッピーは普通のですか?」
「(咳払いして)はい・・・それからポテトサラダもお願いします」
ポテトサラダは200円である。ホッピーがセットでやってくる。キリンの生ビールジョッキに焼酎が入っている。下から四センチほど。ホッピー瓶が付いてくる。真冬はこの程度の冷え方でちょうどいい。
「架空」の田舎の風景が思い出される。雪がある。雪の中に背中から倒れたことを思い出す。何故か雪の中が暖かいことに驚く自分。娘のことを考える。育った姿を見たことのない筈の娘の姿が見える・・・涙があふれてくる。
恥ずかしさの為、現実に引き戻された。周囲を見る。
入って右手に短いカウンターテーブルが置かれている。この前に四人くらいが立てるかもしれない。左手には円いテーブル。円いテーブルの背後の壁には、何故か「風神雷神」の屏風絵が飾られている。二つのテーブルの間を通った向こう側に七人くらいが立てるカウンターがある。そのカウンターを挟んで左側が調理場、右側が客の場所である。先客は男性一名。このカウンターの手前には、手作り感たっぷりの三角の角を丸く削ったような補助カウンターがついている。その中央には四角いおでん鍋。潔い完全立呑みだ。
塩茹で落花生(200円)をメニューに見つける。
「あの、落花生ください・・・」
「はい、落花生ですね・・・」
塩茹で落花生が出てくる。うまい。殻を一つ一つ剥く楽しみがある。【丸みをおびた三角テーブルの真ん中の四角いおでん鍋】の準備をマスターが始めた。
すると、このおでん鍋の準備の様子が見えない位置に立つ先客の方が質問をした。
「マスター、おでんは終わっちゃったんですか?」と。
「いや・・・これから」と答えるマスター。
煮てあったものを次々に【丸みをおびた三角テーブルの真ん中の四角いおでん鍋】に入れて、温め始めた。
「レモンサワーください」と言ってみる。やはり、声がかすれている。レモンサワーの価格は300円だ。
「あの煮染めたチクワブが食べたいなあ」と思う。設定したキャラクターと外れはじめている。
我慢をして、設定したキャラクターを守って外に出ることにした。ちょっと悔しい。
独り飲みの時は、時々【キャラクター設定飲み】をやろうと思う。これは楽しいかもしれない。
「ごちそうさまでした・・・」
マスターが計算をしている。千円札を手に握って待つ。娘の為に一度に千円で我慢する父親である・・・。
すると、マスターが言った。
「1300円です」
「・・・・」
目の前の千円札に、ポケットから出した百円玉を三枚加えて払う。ホッピーは瓶が300円で焼酎も300円かもしれない。世の中はうまくゆかない。外に出る。あるはずもない思い出と共に、私の作ったキャラクターが消え去ってゆく。
冬の日曜日、午後4時30分から5時10分まで、40分ほどの滞在。
(つづく)
蒲田 立ち呑みや「の~ぜ」
住所 東京都大田区蒲田4-14-9
電話 03-3739-5679
定休日 無休
営業時間 16:00~23:00
交通 京浜急行京急蒲田駅下車徒歩1分
ホッピー原理主義者とは?
ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
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