居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第16回/地獄耳であることの不幸・・・
居酒屋探偵DAITENの「がっかり録」第16回 【地域別】 【時間順】 【がっかり集】
地獄耳であることの不幸・・・・
居酒屋における不幸な話を書きたいと思う。
ある某有名大学近くの居酒屋に入った時のことだ。寒い夕暮れ時の静かな街を歩いているうちに冷え込んでしまい、仕方なく入った店である。居酒屋にしては不思議な名前の店であった。元々は喫茶店であったのだろうか。実は入りたくないという気持ちが強かったのである。しかし、同行者が他を探すことを渋ったのでそのまま入ってしまったのだ。
中に入ってみると、妙に不自然な作りの店であった。店内は広い。壁際はボックス席のようになっている。元々はちょっと高級志向の店であったのかもしれない。途中から居酒屋という業態に移行したような感じであった。さらに、とてもびっくりしたある特徴がある。しかし、それを書いてしまうと店を特定できてしまうので、ここには書かない。
店内には2つのグループがいた。女性一人を含む10人ほどの頭の良さそうな学生たちが教授らしき方を囲んで集まったという感じのグループ。もうひとつのグループも8人程でこの店の常連のような男女たち。さらに、男性二人が飲んでいた。
店の奥の調理場にママさんらしき方が一人。フロアには若い女性が一人だけであった。その女性に注文をする。外観と言葉の感じでアジア系の外国人の方であることが解った。
頼んだつまみはなかなか出てこない。前述のような大人数のグループ客の注文に対応出来ないでいることがすぐに解った。
若い女性が注文をとる。それを奥のママさんに通す。しかし、あやふやな部分がある。すると、ママさんが叱るのである。
自分の耳が特別に良いことが恨めしかった。調理場でのやり取りが全部聞こえてしまうのである。
生ビールの注文が入った。タイミングが悪いことに生ビールのタンクが空になってしまった。若い女性はどうして良いか解らない。ママが調理場から走って出てくる。すると、常連らしき男性が酔った声で「ママ、焼酎あったっけ?」と、のんきなことを言う。ママさんの笑顔が引きつっている。この焼酎を探すのにまた時間がかかる。
優等生グループのおぼっちゃまたちは、議論に夢中で、一番端の若い女性一人に全てをまかせ、氷が無くなろうが品物が出来て来ようが、少しも助けようとしないのである。将来、そのままエリートコースを歩んだ末、晩年になって妻から突然に離婚を突きつけられ、その理由がわからない、そんな男性の典型となるのではないだろうか等と心配してしまう。
若い女性は調理場の中でも働いている。ママは切れそうだ。いや、すでに切れている。若い女性は引きつった笑顔で私達の頼んだ品物を持ってくる。彼女なりに頑張っているのだ。
同行者も、他の皆さんも調理場で起きていることが聞こえていないようだ。それが私には聞こえてしまう。
簡単に言えば、許容量を超えた顧客の受け入れをして、それを処理できず、その責任を仕事に慣れていない新人の外国人女性に押しつけているように見えた。そうではないのかもしれない。しかし、少なくともそう見えたのである。
酒飲みは勝手なもの。でも勝手になれない自分がいる。怒っても仕方がない。とにかく、大人しく待ち続けた。数種類のつまみが全部出てくるのに1時間以上かかった。それぞれに事情があると思う。でも、全居酒屋経営者のみなさんに申し上げたい。「客は調理場で起きていることに気付いています。気をつけてください」と。
くつろいで酒を飲みたいと思って居酒屋に入った。懸命に働く外国人女性がかわいそうで不愉快になっている自分がいる。でも、何もしてあげられないのである。せめて、怒って帰ってしまうようなことはしなかった。
そして、学問的議論に夢中で空気の読めない頭の良い青年たち。不条理は身近にあるのである。
久しぶりの「がっかり録」であった。調理場の険悪な空気を感じて、その店に行かなくなってしまう。そんな経験をしたことがある方も多いに違いない。それは、客の側にとってもお店にとっても不幸なことだ。何よりも人間が一番大切だということ。勉強になった夜であった。
(了)
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地獄耳であることの不幸・・・・
居酒屋における不幸な話を書きたいと思う。
ある某有名大学近くの居酒屋に入った時のことだ。寒い夕暮れ時の静かな街を歩いているうちに冷え込んでしまい、仕方なく入った店である。居酒屋にしては不思議な名前の店であった。元々は喫茶店であったのだろうか。実は入りたくないという気持ちが強かったのである。しかし、同行者が他を探すことを渋ったのでそのまま入ってしまったのだ。
中に入ってみると、妙に不自然な作りの店であった。店内は広い。壁際はボックス席のようになっている。元々はちょっと高級志向の店であったのかもしれない。途中から居酒屋という業態に移行したような感じであった。さらに、とてもびっくりしたある特徴がある。しかし、それを書いてしまうと店を特定できてしまうので、ここには書かない。
店内には2つのグループがいた。女性一人を含む10人ほどの頭の良さそうな学生たちが教授らしき方を囲んで集まったという感じのグループ。もうひとつのグループも8人程でこの店の常連のような男女たち。さらに、男性二人が飲んでいた。
店の奥の調理場にママさんらしき方が一人。フロアには若い女性が一人だけであった。その女性に注文をする。外観と言葉の感じでアジア系の外国人の方であることが解った。
頼んだつまみはなかなか出てこない。前述のような大人数のグループ客の注文に対応出来ないでいることがすぐに解った。
若い女性が注文をとる。それを奥のママさんに通す。しかし、あやふやな部分がある。すると、ママさんが叱るのである。
自分の耳が特別に良いことが恨めしかった。調理場でのやり取りが全部聞こえてしまうのである。
生ビールの注文が入った。タイミングが悪いことに生ビールのタンクが空になってしまった。若い女性はどうして良いか解らない。ママが調理場から走って出てくる。すると、常連らしき男性が酔った声で「ママ、焼酎あったっけ?」と、のんきなことを言う。ママさんの笑顔が引きつっている。この焼酎を探すのにまた時間がかかる。
優等生グループのおぼっちゃまたちは、議論に夢中で、一番端の若い女性一人に全てをまかせ、氷が無くなろうが品物が出来て来ようが、少しも助けようとしないのである。将来、そのままエリートコースを歩んだ末、晩年になって妻から突然に離婚を突きつけられ、その理由がわからない、そんな男性の典型となるのではないだろうか等と心配してしまう。
若い女性は調理場の中でも働いている。ママは切れそうだ。いや、すでに切れている。若い女性は引きつった笑顔で私達の頼んだ品物を持ってくる。彼女なりに頑張っているのだ。
同行者も、他の皆さんも調理場で起きていることが聞こえていないようだ。それが私には聞こえてしまう。
簡単に言えば、許容量を超えた顧客の受け入れをして、それを処理できず、その責任を仕事に慣れていない新人の外国人女性に押しつけているように見えた。そうではないのかもしれない。しかし、少なくともそう見えたのである。
酒飲みは勝手なもの。でも勝手になれない自分がいる。怒っても仕方がない。とにかく、大人しく待ち続けた。数種類のつまみが全部出てくるのに1時間以上かかった。それぞれに事情があると思う。でも、全居酒屋経営者のみなさんに申し上げたい。「客は調理場で起きていることに気付いています。気をつけてください」と。
くつろいで酒を飲みたいと思って居酒屋に入った。懸命に働く外国人女性がかわいそうで不愉快になっている自分がいる。でも、何もしてあげられないのである。せめて、怒って帰ってしまうようなことはしなかった。
そして、学問的議論に夢中で空気の読めない頭の良い青年たち。不条理は身近にあるのである。
久しぶりの「がっかり録」であった。調理場の険悪な空気を感じて、その店に行かなくなってしまう。そんな経験をしたことがある方も多いに違いない。それは、客の側にとってもお店にとっても不幸なことだ。何よりも人間が一番大切だということ。勉強になった夜であった。
(了)
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