雑色 もつ焼き酒場「三平」

居酒屋探偵DAITENの生活 第329回 2010年3月13日(土) 【地域別】  【時間順】




雑色 もつ焼き酒場「三平」



  雑色もつやき酒場三平の北西側の入口   ←クリックお願いします。  にほんブログ村 酒ブログ 東京飲み歩きへ  ←クリックお願いします。

  ↑お店の北西側の入口

 
 前回の店を出て、京急川崎駅から京浜急行に乗った私が降り立ったのは多摩川を渡ってすぐの六郷土手駅であった。まだ時間は4時前である。六郷土手駅周辺を歩くもそれらしい居酒屋も角打も無い。すぐそばを通る第一京浜国道を歩き始めた。国道沿いには特に何もない。1キロメートル以上歩いたところで、左手に雑色がある十字路に出た。第一京浜国道を渡り、雑色駅とは反対方向に続く商店街を歩き始める。水門通り商店街である。しばらく歩いて、料理がうまいと評判のある居酒屋の前を通った。まだ店内を掃除中の様子である。今回はあきらめることにして、さらに先へ歩いた。
 特に目的は無いのである。歩き始めると足が止まらない。ついに商店街のおしまいまで行ってしまった。

 早い時間に売り切れ必至のある店へ行ってみることに決めた。しかし、どちらに向かっているか解らない状態になっていたのである。実は、この自分がどちらに向かっているか解らないという状態が好きなのである。携帯を使えば地図が見られる。簡単に自分の位置が解る。それでは面白くないのである。右斜めの方を見ると、多摩川の土手らしきものが見えた。頭の中の怪しい地図と見比べる。左方向へ歩いて行く。羽田方面へ向かうバスが通り過ぎる。この道を進んではいけないことに気づく。ここで、我が機は左に大きく旋回する必要があることを知る。セブンイレブンの前に出る。トイレを借りる。それから販売している地図を見たいという気持ちになる。それを抑え、外に出て左に曲がった。地番は南六郷2丁目である。ここで携帯電話の中に入っている目的の店の住所を見たいという欲求にかられてしまう。ついに住所を見てしまった。
 ここからは早い。東京都大田区南六郷1-8-5という頭の中に入った番地と道路脇の様々な住所表記とを照らし合わせながらどんどん歩く。小さな商店街に出て進む。角店の北東側からのアプローチであった。その店はあまり有名になってしまったもつ焼きの店、もつやき酒場「三平」である。
 
 北東側からは入らず、北西側の入口から入った。入って右手にはテーブル席が並んでいる。左手奥には、強面のマスターが立つ焼き台があり、その前にコの字カウンターがある。ただし、コの字の角の一つが斜めになっている変則的なコの字カウンターだ。テーブル席に2つのグループ。カウンターには4人グループとカップルが一組。比較的空いている。
 コの字カウンターの端、焼き台のマスターから見たら左の端に座った。マスターの背後には調理場があり、そこに男性と女性が立っておられた。
 女性の方が出てこられて、カウンターに座ろうとした私に「もう、焼き物はかしらしかないんですよ」とおっしゃる。
 「はい、いいですよ~」と答え、マスターの背後の焼き物の札は、たしかに「かしら」「うずら」だけである。
 「かしら3本とうずら1本、それからレガッタをお願いします」
 「たれですか?」
 「はい、たれでお願いします。」と答える。

 レガッタ(480円)とはウィスキーのウーロン茶割りのことである。「三平」発祥の飲み物であるらしく、特に大田区の東部地区のお店で飲むことの出来る飲み物である。考えてみれば、焼酎のウーロン茶割がどこの居酒屋でも普通に飲まれている中、その焼酎をウイスキーに変えてみるという発想に何の不思議もないのである。
 そして、レガッタにはポッキーが1本だけ挿してあるのである。スナックなどで、つまみとしてポッキーが出てきた時、ウイスキーの水割を飲みながら、ポッキーを一本とって、それで水割りを混ぜたりする、あの感じなのだろうか。

 レガッタを飲みながら、店内を見廻す。焼き台のマスターの正面の壁には先代らしきご夫婦の写真が貼ってある。
 マスターがかしらの一本目とうずらを出してくれる。短めの串に刺されたややこぶりの肉片のかしらは柔らかい。
 レガッタを口にする。少しあって、また一本かしらが出てくる。半生であるが気にせず食べる。レガッタを口にする。さらに三本目が出てくる。

 たくあんを少しだしてくれた。日本酒一合(250円)をお願いする。黄桜は250円、剣菱は330円と書いてある。
 ここの日本酒はタヌキの形をした特別なとっくりを使っている。二合のとっくりは無いのかとのお客さんの質問に対して、昔はあったのだけれど割れてしまって今は残っていないのだとの答えであった。

 次に何を食べるか考える。考えてみてもあるのは「かしら」のみである。塩で頼むことにする。

 「かしらを塩で2本お願いします」と言う。

 かしら塩が来るまでに、塩豆を出してくれた。第95回で紹介した西日暮里のもつ焼き「菊一」を思い出す。
 
 コの字カウンターの反対側のカップルの若い男性がお店の方からティッシュをもらい、塩豆をくるんで持ってかえられた。若いのに偉いではないか。食べ切れなければ持ち帰る。よいことである。 

 かしらが塩で2本出てくる。私としては塩の方が好きだった。2本目にはさらに青のりをかけて食べる。一つの種類の肉を続けて食べる工夫である。
 壁に、「本日は6時閉店です」と書いてあった。土曜日に6時に終わってしまうというお店も珍しい。5時になった。外の暖簾が仕舞われた。店内の片付けも始められる。

 お勘定をお願いする。金額は1,270円。午後4時35分から5時5分まで30分の滞在。
 肉は「かしら」だけだった。しかし、食べられただけ運がよいと思う。

 一つ、面白い発見があった。私が勝手にもっていた「無口で頑固なマスター」というイメージはまったく違っていた。たまたま忙しくない時間であったからかもしれないけれど、今日のマスターはよく話してくれた。

 外に出る。少し気温は下がってきたけれど、まだ明るい。本当はそろそろ帰らなければならない時間だ。しかし、また歩きはじめてしまう。行き先は決まっていない。路地を曲がるとまた何かが待っているかもしれない。


 (つづく)

 
  雑色もつやき酒場三平外観北東側 ←お店の北東側の入口

雑色 もつ焼き酒場「三平」
住所 東京都大田区南六郷1-8-5
電話 03-3732-1468
定休日 日曜・祝日
営業時間 平日14:00~21:00 土曜12:00~18:00(売切れ次第終了)
交通 京浜急行京急雑色駅徒歩8分


ホッピー原理主義者とは?
ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。

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テーマ : 居酒屋
ジャンル : グルメ

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夢におつきあいいただければ・・・

happy_thursday 様

居酒屋探偵DAITENです。

蒲田は本当に酒場の宝庫です。
東京の居酒屋文化の城南地区の中心が蒲田だと思います。


> >外に出る。
> >少し気温は下がってきたけれど、まだ明るい。
> >本当はそろそろ帰らなければならない時間だ。
> >しかし、また歩きはじめてしまう。
> >行き先は決まっていない。
> >路地を曲がるとまた何かが待っているかもしれない。
>
> 私はDAITEN氏のこのような文章を、いつも味わうように
> 読んでしまうのです。
> ロマンチストにしか書けないと思っています。
> しかも酒場と人を愛するロマンチスト。
> これが私にはとても素敵に思えるのです。

ありがとうございます。
おほめの言葉をいただき恐縮です。
歩きながらいつも心は過去の様々な思い出へと跳びます。
その過去から逃げる為に、新しい出逢いに憧れ、探し歩くのです。
私は夢想家なのかもしれません。夢におつきあいいただければ幸いです。


知りませんでした

こんばんは。
ここは店の前を通ったことはあるのですが・・・このような
営業時間、営業形態だとは知りませんでした。
レガッタは「勘蔵」のメニューで目にしましたが、
無知なままになっておりました。
もっと難しい酒かと思っていたのですが、意外でした。
それにしても蒲田を中心に、良い酒場は多いですね。
「三つぼ」〜「勘蔵」コースは楽しく酔いました。

>外に出る。
>少し気温は下がってきたけれど、まだ明るい。
>本当はそろそろ帰らなければならない時間だ。
>しかし、また歩きはじめてしまう。
>行き先は決まっていない。
>路地を曲がるとまた何かが待っているかもしれない。

私はDAITEN氏のこのような文章を、いつも味わうように
読んでしまうのです。
ロマンチストにしか書けないと思っています。
しかも酒場と人を愛するロマンチスト。
これが私にはとても素敵に思えるのです。

Re: 三平さん

kimimatsu様

居酒屋探偵DAITENです。

> たしか土曜日は現在12時オープンなのでは、と。そして13時には人気のあるものは売り切れ。レガッタの補足でもとは大将の息子さんが元慶応ボート部でボート部オリジナルグラスで従業員がウィスキーウーロン割を飲んでいたのから始まったようです。なので『レガッタ』
> だから他店でレガッタと呼ぶのは変な感じですよね(笑)
> 好きなお店です。

開店時間のこと、ありがとうございます。さっそく修正しました。
でも、ますます開店時間が早くなっていってしまうのでは(笑)。

レガッタのエピソードはブログ「居酒屋礼賛」の四回にわたる素晴らしいレポートの中に出てくるエピソードですね。なんだか、カクテルのレシピ本の中のエピソードのようです。
実は安いウイスキーをウーロン茶で割るという飲み方をずっと前から自宅でしておりました。
単に色が似ているので合うのではという発想に過ぎませんが・・・。

と、ここまで書いて飲みたくなり、家にあったGrant'sウイスキーを
伊藤園のウーロン茶で割り、飲み始めてしまいました。
ポッキーが無いので、家のホッピーグラスに入れてみました(笑)。
親父ギャグです。



三平さん

たしか土曜日は現在12時オープンなのでは、と。そして13時には人気のあるものは売り切れ。レガッタの補足でもとは大将の息子さんが元慶応ボート部でボート部オリジナルグラスで従業員がウィスキーウーロン割を飲んでいたのから始まったようです。なので『レガッタ』
だから他店でレガッタと呼ぶのは変な感じですよね(笑)
好きなお店です。
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プロフィール

新岳大典

Author:新岳大典
新岳大典(ARATAKE DAITEN)
作家・コーディネーター。

居酒屋探偵daiten(izakaya detective DAITEN)として活動。劇集団咲良舎制作。多目的スペース「かたびら・スペース・しばた。」クリエイティブ・ディレクター。
演出家守輪咲良のブログ「さくらの便り」ブログ「人間日和」を運用中。
2011.7よりfacebook参加。2011.8より「ブクログのパブー」にて居酒屋短編小説を中心に発表開始。
 2014年9月6日より独自ドメイン取得によりURLがhttp://daitenkan.jp/に変更。

 なお、ブログのプロフィール写真は仙台四郎(せんだいしろう)の人形を撮影したもので新岳本人ではない。
 その時代、仙台四郎が訪れる店は繁盛するとして各地でもてなされたそうである。没後は商売繁盛の「福の神」としてその写真が店に飾られるようになったとのこと。

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