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中目黒 源~都立大学 最上 そして役者の街

Life of the izakaya detective DAITEN
居酒屋探偵DAITENの生活 第4回  2007年1月12日(金)  【地域別】  【時間順】


中目黒 源~都立大学 最上 そして役者の街

中目黒 もつ焼き「源」


 今日のDAITENは、酒場探偵としてのパートナーASHIMO君を連れだって中目黒に登場。
 ASHIMO君は都会の酒場探偵DAITENにとっては重要な存在。ちょうどシャーロック・ホームズにとってのワトソン君のような存在である。さて、今日のDAITENは、ASHIMO君を連れだって中目黒に登場。
 東急東横線の中目黒駅の東側に「目黒銀座商店街」がある。その裏の住宅街に入ってゆくと、マンションの裏階段に提灯がポツンと下がっている。あそこかなあと二人で指さしていると、ちょうど中から出てきたばかりなのか、近くにいた常連の方らしき人がわざわざ戻ってきて、「この階段を上がって左ですよ、おいしいですよ」と教えてくださる。店に入る前から二人とも好印象。

 さて、階段を上がると黒い鉄の防火扉があり、中が見えない。「これは何も情報を持たない人間は入らないだろうなぁ、怖くて・・・」と言うとASHIMO君も同意。
 しかし、扉を開いて二人とも驚いた。顔を見合わせ、ASIMO君が「いいですね・・・」と頬笑む。いつものやりとりである。右側に10人程度が座れるカウンター、左側が一段高くなっている座敷席。8人が座れる席が2つ、5人が座れる席が1つ。我々が座ったのは入ってすぐの5人席。カウンター席は8割位埋まっている。座敷席には6人ほどのグループが座っている。カウンターの中にはちょっと強面のマスター、女性、男性が1名ずつ。明るく清潔な印象の店内は、思いの外、静かである。やはり、チェーン居酒屋に集まっている、いわゆる「大人になっていない子供」がいないからである。

 さっそくホッピーを2つたのむ。ちゃんと「氷は入れますか?」と聞いてくれる。するとASHIMO君が「ちゃんと、氷を入れるかどうか、聞いてくれますね」と反応。氷を入れない客のことを考えてくれている。ホッピーファンにとっては重要な要因である。最初に頼んだツマミは〈煮込み〉と〈レバかつ〉である。「煮込みは豆腐いれますか?」と聞いてくれる。迷わず「入れてください」と答える。この煮込みが上品な薄味でうまい。「煮込みといっても色々だねえ、店によって全然違うものだなあ」と改めて感心。「レバかつ」がやってくる。「これが伝説のあの〈レバかつ〉かあ」と食べる、うまい、うますぎる。

 〈サワー〉を頼んだ。メニューに「サワー」とだけ書いてあるが、実際に出てくるのは、ソーダ1瓶、氷と焼酎の入ったジョッキ、レモン絞りに2つ割にしたレモンが1つ(微妙に皮を残して割ってあるので、レモン絞りの上から落ちないようになっている)乗っているもの、これが1セットである。レモンを搾ってジョッキに入れ、ソーダを加える。チェーン店で高い値段をとっている生レモンサワー、いやそれ以上の飲み物である。それでいてなんと390円。安い。この後に〈ホイス〉も飲んだ。下町系の飲み物〈ホイス〉が飲める店は城南地区ではほとんど無い。貴重な味である。

 お新香を頼むと「盛り合わせにしますか」と聞いてくれる。ASHIMO君が「いろいろと種類があって、単品でも頼めるんですね」と推理。出てきた〈お新香盛り合わせ〉は大根、カブ、人参、キュウリ、どれもうまい。最後に「豚尾」をたのむ、初めて食べるものである。豚の尾がトロトロに煮込んである汁物である。うまい。もちろん、この店の主な商品であるモツ焼きも食べた。どれもうまい、塩味で頼むと、醤油ペースで酢の入った「つゆだれ」にカラシを投入したものがついてくる。この「つゆだれ」にモツ焼きをつけて食べると、これがまたさっぱりとしてうまい。これは第三のモツ焼きの味付である。

 店の名前は「源」。やはり噂通りであった。ここは「中目黒に数年前まであった伝説の名店「ばん」の流れをくむ店であるらしい。当時の中目黒「ばん」のマスターの弟さんが中目黒の隣駅の祐天寺に出店した新しい祐天寺「ばん」でも、〈豚尾〉〈サワー〉〈ホイス〉などを楽しむことができる。DAITENも数回行っているが、この「ばん」もまた名店である。しかし、旧「ばん」で名物だった〈レバかつ〉は調理場が狭くなってしまい、揚げ物ができないという理由でなくなってしまった。その〈レバかつ〉を「源」で食べることが出来たのである。幸せを感じる。(追記 2007年1月より店舗拡張に伴い「ばん」のレバカツは復活しました。)

 気がつけば1時間が過ぎて、いつの間にか店内はほぼ満席の状態。「これは口コミの力だね。いいものを出すとお客はちゃんとやってくるという実例だね」と話す。ASHIMO君も大きく同意。長居は【本当のディープ系居酒屋ファン】としては恥なので、会計をお願いする。2人で5600円。思いの外安い。いい店をまた発見できた。入口で2人連れとすれ違う。これでこの人たちは満席でがっかりしないで済むなあ、人ごとながら安心する。

 今日はS・A・P「12週間集中レッスン」の金曜日の稽古が午後1時30分から4時30分まであり、その後も、夜からは昨年12月の青年座公演の本番の為に出来なかった分の補講としての「モノローグ・レッスン」があった。夜もSAKURAは仕事である。ASHIMO君の提案で、守輪のレッスンが終わるのをどこかの店で待つことにする。今は携帯メールがある。便利な時代である。

都立大学 居酒屋「最上」

 次にDAITENとASHIMO君が向かったのは、中目黒駅から横浜方面に3つ乗った都立大学である。東急東横線沿線にはいい居酒屋が多い。中目黒には「藤八」「根室食堂」そして「源」。祐天寺には「ばん」。学芸大学には「浅野屋」「根室食堂学芸大店」。自由が丘には「金田」。川崎市に入って武蔵小杉の「文福」。枚挙にいとまがない。

 都立大学の改札は渋谷方面に向かってガード下に開いている。改札を出ると、目の前に東横線と直角に交わる通りがある。その通りを渡り、渋谷方面を見て左側の東横線の高架沿いの道を50メートルほど歩くと、左側に斜めの別れる道がある。その角の三角地に建っているのが今夜の2軒目の店である。 店名は「最上」。三角の一辺にある入口を入ると、目の前にV字型のカウンターがある。そのVの中が調理場になっている。常連らしき皆さん3名と、スーツを着た2人組の方々。調理場の中は、よくしゃべるママと、緩い口調のマスターの2人。
 この店にはホッピーはない。しかし、名物飲み物がある。それは焼酎の緑茶割りである。この緑茶割りに使う緑茶は常連さんたちが石臼でひいて持ってきてくれるのだそうである。チェーン居酒屋にある甘いお茶割ではない、本当の濃いお茶の粉がグラスの底にたまるほどに入っている。「緑茶割りください」と言うと、「冷たいのですか、暖かいのですか」と聞かれる。私は暖かいお茶割り、ASIMO君は冷たい緑茶割を頼む。ここの店の名物はもうひとつある「魚のくんせい」である。本日の魚はサバとホッケ、私たちはサバをたのんだ。これがうまい、ただの焼き魚とは違うくんせいの香りと味。カウンター席の背後にくんせい用の石油缶が置いてあった。

 しばらくして、SAKURAからメールが入った。都立大学駅の周辺にいるというので、迎えにゆく。
 駅に向かうとSAKURAと一緒に、S・A・Pメンバーの2人の俳優、増永守志と鎌多洋平が挨拶をしたいと待っていた。律儀である。
 3人を連れ、ASIMO君の待つ「最上」に戻り、合計5名がV字カウンターの先の部分を囲むように座る。ビールをもらい乾杯。増永守志のCM撮影の現場話などで盛り上がり、当然のごとく、芝居のあり方、演劇論となる。すると、緩い口調のマスターが近づいてきて、「お話に割り込んで申し訳ないのですが、皆さん、お芝居の関係の方々ですよね」と聞く。「そうですよ」と答えると、「実は自分の息子も劇団をやっているのです」と言って、壁に貼ってある芝居のチラシを指さした。
 実は、店に入ってすぐからこの芝居のチラシが気になっていたのである。その芝居とは劇団パラノイア・エイジの「平将門 傀儡徒夢(たいらのまさかど~くぐつのあだゆめ)」である。シアターVアカサカで1月17日から22日まで上演される。その代表であり作・演出の佐藤伸之氏がマスターのご子息なのである。チラシにはちゃんと「最上」の広告が載っていた。親心である。
 本当の閉店時間が10時なのに、ずいぶんと長く居させてもらった。「最上」は落ち着く店である。予約で「すっぽん」料理も食べることができる。再度の来店を約束をして5人で外に出たのは11時過ぎであった。

 今回の2つの店がある中目黒と都立大学、その間の祐天寺、学芸大学、この4つの駅の近くには、目黒区の住区センターが点在している。稽古場として、東京で活動する芝居関係の人間なら一度はこれらの施設のお世話になったことがあるかもしれない。目黒区では、居酒屋でも芝居関係の客の会話をよく聞く。それが、今度は劇団代表のお父上がやっている居酒屋を発見したことになる。面白い。

 同じ空間に作り手と客が同時に存在する、その点で「小さな居酒屋」は「劇場」に似ている。どちらも私にとって最愛の場所である。

  ※  ※  ※

 残念ながら、2009年3月に「最上」閉店。



中目黒「源」 東京都目黒区上目黒2-10-7 アサミビル2階

都立大学「最上」 東京都目黒区中根1-1-7
営業時間 17:00~22:00 定休日 日曜


実力派俳優になりたい人は→ 演出家守輪咲良のページ「さくらの便り」
中目黒都立大学

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