都立大学 立ち呑み「ホームラン」第3回
都立大学 立ち呑み「ホームラン」 第3回




運転免許を持たない私のような者にとって、東京での移動手段は電車や地下鉄がほとんどである。東京とその周辺に広がる首都圏の鉄道網は素晴らしい。世界でもこれだけ多くの鉄道が複雑に交錯する都市というのも珍しいのではないだろうか。
しかし、新線が作られ、相互乗り入れがすすみ、今では電車の路線図を読み解くのにも時間がかかる。その新駅はどんどん地下深くに作られており、エスカレーターや階段を使っての乗り換えも一苦労である。
そんな中、もっとも楽しみながら乗れる交通機関は路線バスである。街並みをゆっくりと見ながら乗ることが出来るので、移動した距離を感じることが出来る。様々な鉄道の駅と駅をつなぐ路線が多いので、途中で気分が変われば違う街を目指すことも可能だ。散歩好きで気まぐれな人間にはこれが良い。ただし、採算を考えてか、まるで過疎地を走るように本数の少ないバス路線もある。
土曜日の夕方、そんなバス路線のひとつを利用した。ある用事を手際よく済ませるには、そのバス路線を使うのが一番早いということが解り、sakuraと二人、乗ったのである。
東急東横線の多摩川駅から駒沢オリンピック公園に隣接する目黒区東が丘の東京医療センターまで行く路線バスである。多摩川駅の時刻表を見ると、午前8時15分に始発があり、午後8時41分が最終バスとなっている。どうやら通勤用というよりも東京医療センターへ通う患者さんや働く人々の為の路線のようである。
東急東横線の多摩川駅の近くの浅間神社下にあるバス停を出発すると、バスは中原街道を通り、東急池上線の雪谷大塚駅で左に曲がり自由通りを走る。東急目黒線の奥沢駅前、東急大井町線の緑ヶ丘駅前、さらに東急東横線の都立大学駅前という風に東急各線の様々な駅の近くを通るのである。
sakuraと二人、このバスに乗って途中の駅で下車、周辺で用事をいくつか済ませてから都立大学駅前に歩いて戻ってきた。当然のごとく、少し飲んで行こうということになった。
入ったのは、東急東横線の都立大学駅のガード下にある立ち飲み店「ホームラン」であった。前回、前々回と2回紹介している。都立大学駅は稽古の時に利用することが多い駅なので、sakuraもSAPのメンバーたちも「ホームラン」にはよく入るようだ。
L字カウンターの左奥の方に3名の男女の皆さんが、カウンターの真ん中に男性の方が二人、それぞれ立っておられた。男性の方々が左右に分かれて、間の場所を空けてくださった。礼を言って、そこに二人立つ。
若いアジア系の女性の方がカウンターの中にいる。その背後ではマスターが調理に専念している。
「何しますか? ○○です、よろしくお願いします」と笑顔で愛想がとてもよい。
まずは、sakuraは中生ビール(368円)、私は黒ホッピーセット(368円)を氷無しでお願いした。
つまみは、ゴーヤおひたし(315円)、シメサバ(315円)、こまい(210円)を頼んだ。
やってきたゴーヤのおひたしには前々回の時と同じように、生卵の黄身が乗っていた。この黄身が美味しいのである。
常連の方々が入れ替わり立ち替わりやってくる。その度に、さきほどのお店の女性、○○ちゃんに声をかけ、なにか冗談を言って、とても楽しそうである。そして、それをきっかけに常連の皆さんの会話がはずむ。入って来た方が「○○ちゃん、おみあげ」と言って小さなお菓子を一つあげると、また、その場に笑いがおきた。
2杯目は、前々回にも紹介したスダチハイ(368円)にした。スダチハイが美味い。スダチの皮を細かくしていれてある。これが適度な苦味になってうまいのだ。さらに、焼き鳥のもも(168円)を2本頼んだ。
右端の一つだけある折りたたみ椅子に、ちょっと御高齢の方が座っておられる。私達の左側の男性が帰られた。入れ代わりにこられた方が御高齢の方に声を掛ける。そして、生ビールの小1杯だけを飲んで帰ってゆかれた。どこか他の場所で飲んでいて、ちょっと顔を出して、常連の方々に声を掛け、また別の場所へいらっしゃるようである。まるで、縁台に座っているご隠居に近所の人が声を掛け、話の花が咲く、そんな下町の路地裏の人間関係のようである。
やってきたももを串から外し、ゴーヤの残りの黄身の中に入れて、七味唐辛子をかけて和えた。別の料理をカウンターの上で勝手に作ってしまったのである。実はこれが美味しいのである。串から肉片を外すのは本来は禁じ手であるが、美味しい卵の黄身に免じて、今回はご容赦願いたい。
咲良の2杯目は天狗舞(420円)。とっくりと、ガラスのおちょこと受け皿である。天狗舞は、今はすっかりポピュラーな酒となったけれど、初めて飲んだ今から20年前は、それほど知られていなかった。居酒屋探偵団のメンバーのozaki先生が北アルプスのどこかのスキー場近くの温泉で飲んだ時、天狗舞をとても気に入り、彼のすすめで池袋の名酒酒場で飲んだのが最初であったように記憶している。
携帯で東急バスのサイトを調べてみると、来る時に乗った1時間に1本しかないバスの終バスがもうすぐ都立大学駅前を通ることが解った。急いで御勘定をお願いする。7時20分から8時までの滞在。御勘定は二人で2,700円であった。
「もう、帰るんですか?」と○○ちゃん。
「そう、終バスで帰るんだ」
「しゅうバス?、どこのバスですか?」
「駅前を通ってるバスだよ」
「駅前?・・・・」と解らない様子である。
「ごちそうさま」
「ありがとございました。また、きてくださいね」と、笑顔で送り出してくれた。
※ ※ ※
追記 読者の方から情報をいただき、営業時間を訂正しました。ありがとうございました。(2010.11.8)
都立大学 立ち呑み「ホームラン」に関する過去の紹介記事
第1回紹介 居酒屋探偵DAITENの生活 第212回 2009年5月16日(土)
第2回紹介 居酒屋探偵DAITENの生活 第277回 2009年11月06日(金)

都立大学 立ち呑み「ホームラン」
住所 東京都目黒区中根1-5-1
電話 ?
定休日 無休
営業時間 土曜~水曜16:00~23:30。木曜・金曜16:00~27:00
交通 東急東横線都立大学駅下車徒歩30秒
ホッピー原理主義者とは?
ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
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Re: 営業時間変更と訂正