蒲田 立ち飲み「かるちゃん」
居酒屋探偵DAITENの生活 第369回 2010年9月20日(月) 【地域別】 【時間順】 【がっかり集】
蒲田 立ち飲み「かるちゃん」
~そして、夏の演劇ワークショップ~




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前回の店、立呑処「ちょっと酔ってこ きらら」を出てから、ふと右手を見ると、居酒屋ばかりが集まる十字路が見えた。一際明るく見える建物がある。この建物の二階には、第246回で紹介した居酒屋「さしみや五坪」が入っており、一階には、第338回で紹介した立ち飲み「さしみや五坪」が入っている。
角地に建つその建物はちょうど南西側の角の部分が斜めにカットされたような形状の建物である。その斜めにカットされたような南西側と、南側の両方に入口がある。南西側の入口の上に「うなぎ串焼かるちゃん」と書かれた大きく明るい看板がある。その南西側の暖簾は茶色。南側の入口の上にも少し小さめの看板が上がっており、「立ち飲みかるちゃん」と書かれている。こちらの南側の暖簾は紺色。店を斜めから見ると、まるで2軒の別々の店が並んでいるように見える。店の前に「直進・京急蒲田駅近道」と書かれた黄色い看板が立っている(写真)。後で見てみると、その看板の裏側は「蒲田駅近道」となっていた。
一瞬戸惑い、意を決して南側の入口から中に入った。

店の形が台形になっているので、中央の調理場を囲うように作られた長い立ち飲みカウンターは、左手の南西側の端から始まり、90度右に折れ、45度左に折れ、さらに90度左に折れるといった変速的な形をしている。さらに、南側の入口から入ると、右手には、壁に向かって立つことが出来るようになったL字カウンターがある。このカウンターの上には、たくさんの置物が置いてある。
カウンターの背後が広く作られているので、かなりの人数が立つことが出来るに違いない。
先客の方が一人、左手の方に立っておられた。女将さんらしき方がカウンターの中にいて、マスターであろうか、息子さんくらいの男性が左手の焼き台の前で焼き物を焼いておられる。
全体に古い作りである。実に渋い。天井が高いのが気持ちよい。
ちょうど、テレビではNHKの相撲中継をやっている。休日の夕暮れ時、相撲中継を居酒屋で見るのが好きである。NHKであるから当然CMも無い、立合いのその瞬間以外は静かである。ゆったりとした時間の流れが心地よいのである。
まずは、玉露割り(350円)をいただく。つまみは、うなぎ串焼き(220円)と、つくね(150円)を各1本づつお願いする。
玉露割りを飲みながら周囲を見廻す、奥のガラス棚の中には様々な人形や江ノ電のミニチュアの箱がたくさん入っている。何故か、アニメ「まいっちんぐマチコ先生」の原画が飾られている。
調理場の奥のガラス棚に貼られた紙の札に片口いわし(200円)と書いてあった。食べてみたい。
先客の方が帰ってゆかれた。客は私一人である。一人の時は、なんとなく帰りにくい。「立ち飲み」なので、表現が矛盾するかもしれないけれど、腰をすえて飲んでしまおうかと考え、片口いわしに合いそうなお酒(380円)を飲むことにした。
「お酒飲みたいんですけど・・・」と聞く。
「うちは、宝壽といって、これだけなんですけど・・・」
「じゃ、それを・・・」
「常温と、冷やしたのがありますけど・・・」
「冷やしたのって、冷酒ですか?」
「氷で冷やしてあるんです・・・」
と言って、女将さんが水と氷の入ったステンレスの入れ物から一升瓶を引き上げ見せてくれた。
静かな店内で、氷の断片が金属に当たる微かな音が心地よい。
「どこのお酒ですか?」
「広島のお酒です・・・おいしいですよ」
「それ、お願いします」
升を出して、中にグラスを入れ、そこに一升瓶から酒を注いでくれた。
お酒と炭火で焼かれた片口いわしとの相性は最高であった。
さらに、ポテトサラダ(200円)も頼む。角切りの形を残したポテトサラダである。
相撲中継は終わり、午後6時のニュースとなり、やがて、ドキュメンタリー番組が始まった。
「演じて育て~白熱 演劇ワークショップ~」というNHK青森放送局製作のドキュメンタリーである。
夏休みの7日間、青森市で開かれる演劇のワークショップを取材している。参加者は中学生たち。「いじめ」を扱った台本を演じるのである。
ワークショップを開いている畑澤聖悟氏は、現役の高校教師であり、同時に劇団「渡辺源四朗商店」の主宰者、劇作家、演出家、俳優である。
畑澤氏が顧問を務める青森中央高校演劇部は、「全国高校総合文化祭」演劇部門の、2005年、2008年の全国大会で最優秀賞を受賞しているそうだ。
今回のワークショップでは、畑澤氏の作品「ともことサマーキャンプ」を取り上げている。いじめで自殺した女性徒、いじめた側の生徒、そしてその親たちが登場人物。中学生が制服のまま親の役も演じるのである。
最初は、昔好きだった「中学生日記」というNHKの番組を思い出し、軽い気持ちで見ていた。しかし、演じている中学生たちの役に取り組む姿勢、その葛藤、畑澤氏の指導の様子等を見ているうちに、どんどん引き込まれてしまった。
帰ることが出来なくなり、ポテトサラダに合う飲み物として、エビス【ザ・ブラック】(380円)をお願いした。
「戯曲に書いていないことを想像して欲しい」という池澤氏のアドバイスを得て、中学生たちの演技はどんどん変化してゆく。見応えのある番組であった。
あの中学生たちは、将来、俳優や女優の道を歩むのであろうか。日本の演劇の質を高めるには、中学くらいの年齢の頃から演技の基本を学ぶべきではないだろうか。
テレビや舞台で、アイドル、モデル、タレント、ミュージシャン、お笑い芸人等の兼業や転身組ばかりを見せられていると、きちんとした基本を学んだ本格的俳優を育てなければ、日本の芸能文化は韓国や中国に負けてしまうのではないかと思えてくる。
因みに、高等学校総合文化祭演劇部門の広島大会の第44回呉市大会と第45回尾道市大会にsakuraが審査員として招待されたことがある。
「演じて育て」は色々と考えさせられる番組であった。
御勘定をお願いする。マスターが食べた串物の串を数えたり、料理と共に出されるプラスチックの札を数えたりしている。それぞれが伝票の代わりになっているようだ。
午後5時半から6時45分まで1時間15分の滞在。お支払いは1,880円であった。
休日の夕暮れ時、静かで豊かな時間を過ごすことが出来た。
(了)
※ ※ ※
2010年9月より「居酒屋地域別一覧表」の地域を一部変更。「東京城南地区・池上線沿線」から「東京城南地区・蒲田」を分割しました。

蒲田 立ち飲み「かるちゃん」
住所 東京都大田区蒲田5-23-5
電話 03-3733-3788
定休日 日曜
営業時間 17:00~
交通 JR蒲田駅下車徒歩4分
ホッピー原理主義者とは?
ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
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Re: 入ろうと思っていました