蒲田 炭火焼やきとり「とり薪・京急蒲田店」
※2011年5月閉店
蒲田 炭火焼やきとり「とり薪・京急蒲田店」




地元の八幡神社に正月のお飾りをお返ししたその足で蒲田に買い物に行った。
今年の成人式は本日1月10日である。蒲田の東口広場から京浜急行の京急蒲田駅に向かって歩いてみた。途中、たくさんの晴れ着を着た女性たちに何度も出会った。とにかく、よく目立つ。そばに男性もいるのだけれど、女性の晴れ着に比べれば地味な服装なので目立たない。一人、二人、まるで七五三のような派手な着物を着ている「男の子」もいたけれど、どうお世辞を言ったとしてもかっこ良いとは思えない。男の場合、ある程度の年齢にならないと着物は無理なのかもしれない。
京急蒲田駅の近くに到着したのは午後1時過ぎであった。
羽田空港の国際線化に伴い、羽田にもっとも近い繁華街である蒲田は、急激な速度で再開発されている。京急蒲田駅がリニューアルされ、駅の近くには高層マンションが次々に建っている。京急蒲田商店街「あすと」のアーケード街の入口辺りも工事現場になっていた(写真)。

アーケード街の左片側に白い隔壁が作られていた。ここに地上14階の建物が建つそうである。まるで、白い雪のトンネルのようだ。右片側ではお店がちゃんと営業している。
まだ、時間が早いので食事をする店は開いていても居酒屋は開いていない。この街でこんなに早い時間から営業している店といえば、前を通る度に必ず営業している店、炭火焼やきとり「とり薪・京急蒲田店」である。
京急蒲田駅前から京急蒲田商店街「あすと」のアーケード街に入る。すると、すぐに左に曲がる道がある。狭いけれど、この部分もまたちゃんとしたアーケード街になっており屋根がある。この道へ曲がると、三十メートルほどで短いアーケードは終わってしまう。この短いアーケード街の左手に、炭火焼やきとり「とり薪・京急蒲田店」がある。並びの手前には、第309回で紹介した立ち呑みや「のーぜ」もあるがまだ開店していない。
とり薪さんの特徴である黄色い派手な巨大アクリル看板が店の入口の上に付きだしているので、すぐに解る。入口の左右には、ホッピーの幟や赤提灯やビールケースなどが雑然と置かれている。また、古びた縄のれんが渋くて良い。
縄のれんをくぐり、入口を入る。右手には奥で右に曲がるL字カウンターがある。席数は8席。左手に四人掛けテーブル、次にトイレの入口への通路を挟んだ衝立が二枚、その向こうに四人掛け、奥に行くと同じく四人掛けテーブルが二つ並んでいる。入ってすぐ右手の焼き台の前に大将。カウンターの中に年輩の従業員の方。従業員の方がお通し(200円)のマカロニサラダを出してくれる。
「お酒お願いします。」
「燗つけていいですか?」
「ええ、お燗でお願いします。」
日本酒二合(500円)である。東京はいつもの年より寒い日々が続いている。熱燗がうれしい。
先客は奥の方のテーブルに人生の先輩カップル。カウンターに男性一人。
まずは、冷やっこ(300円)を頼む。ネギとかつお節がたっぷりかかっている。
店の奥の方にあるアナログテレビがバラエティー番組を小さめの音量で流している。
静かでゆるい時間が流れている。
焼き台の前に立つ大将の手元を見て聞いてみる。
「焼き物いいですか?」
「はい、どうぞ」
「かしら、なんこつ、それから若どりもお願いします。」
「何本ですか?」
「1本でもいいですか?」
「いいですよ」
いつものごく普通のやりとりをする。かしら(100円)、なんこつ(100円)、若どり(120円)の各1本を炭火で焼いている間、時折、静かな団扇の音が聞こえてくる。そして、カップルの方の会話もテレビの音も含めて、環境音楽のように聞こえる。祝日の午後2時前からこんな時間を持てることに幸せを感じる。
並びの方は、ホッピーセット(380円)を途中で放棄、お酒に切り替えたようである。
「若どりとかしらです、なんこつはしばらくお待ち下さい。」と言って、マスターが出してくれた皿の上には青のりがたっぷり添えてあった。青のりをつけてもつ焼きを食べるのが私は好きである。値段の割に肉が大ぶりだ。
やがて、ちょっと「パンク」な感じの若手従業員の方が登場。他の方との世代の違いがおもしろい。
ゆっくりと焼いてくれたナンコツが出てくる。これがとてもうまい。
お酒も終わり、2杯目はトマトサワー(400円)をいただいた。
マスターがあるモツの部分を使った料理を即興で作り、お店の方2人に味見をさせている。調理場は教育の場でもある。
トマトサワーを飲んでしまい。御勘定をお願いする。午後1時30分から2時10分。40分の滞在、御勘定は1720円であった。
色々なものを見て、様々なことが頭に浮かぶ、今日も酒場は物語の宝庫であった。
※ ※ ※
追記 2011年1月15日(土)
前回から5日後の1月15日である。こちらのお店が24時間営業であることをホッピービバレッジさんのサイトで見た。違う情報も他から聞いていたので、確認の為にもう一度行ってみることにした。
土曜日の夕方6時半。ずいぶんと盛況である。四人掛けテーブルのうち3つが埋まっていた。カウンターにも四人程の方々が座っている。ちょうど入ってこられたお客さんたちが座るのを待って、L字カウンターの奥側の二席の辺りに座る。お通し(200円)はキノコを煮たもの。
レモンサワー(350円)、鳥ナンコツ(150円)2本を頼む。お店の方々はマスターらしき方を含めて3名、どなたも大将の風格を持っておられる。
飲み終えて、御勘定を済ませて「今度は10時頃に来るよ」と冗談をおっしゃる常連の方がいた。面白い。
また、四人で来られた方々の中のかなりの先輩の方が席で御勘定をして、お金をマスターに渡し「釣りはいらないよ」とおっしゃる。
しかし、マスターはレジに行ってから席に戻って、静かにお釣りをお返ししていた。矜持のある姿勢に心動かされた。
2杯目はウーロン酎(350円)にした。飲んでみる。濃い。割り箸を使って混ぜる。それでも濃いウーロン酎であった。鳥皮ポンズ(380円)もいただく。
御勘定を済ませた方の「24時間居酒屋なのに、この間、昼間に来たらやってなかったよ」という言葉が聞こえた。
少しして、お店の方に「さっき、ちょっと聞こえたんですけど、24時間営業なんですか?」と聞いてみる。
すると、「以前はやってたんですけどね、今はやってないんですよ」とおっしゃる。これで、裏が取れたのである。今日の目的は達成された。現在の営業時間は、平日は午後6時から午前2時まで、土日は正午から午後11時までとのこと。
お客さんたちがとても楽しそうである。今は24時間営業ではないけれど、土日の昼の12時から飲める居酒屋は少ない。これからも時々来させてもらいたいお店である。そして、もっとも蒲田的な居酒屋ではないかと思えた。残って欲しい一店である。
※ ※ ※
追記 2011年8月10日(水)
その後、2011年に閉店となり、蒲田東口店として再開したようである。第439回で紹介しているので、そちらをご覧いただきたい。

蒲田 炭火焼やきとり「とり薪・京急蒲田店」
住所 東京都大田区蒲田4-14-8
電話 03-5703-0380
定休日 年中無休
営業時間 月曜~金曜 18:00~26:00 土曜・日曜 12:00~23:00
交通 京浜急行京急蒲田駅下車徒歩1分。
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ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
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Re: 閉店されたようです