池上 酒仙小舎【峠】
池上 酒仙小舎【峠】
~葡萄棚のある【峠】にて




飲食店を形容する時、多くの人が「入りやすい」とか「入りにくい」という言葉を使う。例えば、「女性1人でも入りやすいお店」のように。
「入りにくい」といえば、これほど「入りにくい」店もなかなか無い。といっても、入口の脇にはメニューがちゃんとあり値段も書いてある。そこに書いてある値段が特に高いということもない。入りにくさは店の造りにあるのだ。
倉庫や資材置き場などがある薄暗い呑川沿いの道を下る。コンクリートで固められた呑川の底の方を静かに水が流れている。日曜日のまだ夜7時頃だというのに人の姿はない。あと少しで第二京浜国道に出るという手前の橋の袂。白い3階建てのビルの1階部分が伸び放題に伸びた草木に覆われている。そこに「アサヒビール」の白い提灯がぶら下がっていた。その草木の中に入ってゆくと、木の扉がある。取れて無くなってしまったのか扉のとっては簡単なパイプのようなものに置き換えられている。
扉には木彫りで「酒仙小舎 峠」と書かれている。
木の扉を引く。右手にカウンター席5席。左手には4人掛けテーブル席が二つ。4人掛けテーブルにマスターらしき方が座っておられた。カウンターの中のテレビ画面には画家「岡本太郎」の顔が映っていた。
「何にしますか?」と聞かれる。
しかし、飲み物のメニューが見当たらない。
「何がありますかあ?」と逆に聞く。
「そうですねえ、生ビールとかあ、うちはお茶割りの方が多いですねえ」とのこと。
「それじゃ、お茶割りお願いします。」と答える。
お茶割りを出してもらう。お通しはおでんのタマゴとがんもである。
「焼き物は、いいですかあ?」と聞く。
「どうぞ」とのこと。
カウンターの中のマスターの背後のメニューの中からかしら、赤鳥つくね、ボンヂリをお願いする。
テレビは「奇跡の地球物語~近未来創造サイエンス」というテレビ朝日の番組であった。
「2011年2月26日は天才芸術家、岡本太郎の生誕100年に当たる。この番組は岡本太郎の作品を修復してきた絵画修復家の吉村絵美留氏を取材。絵画修復の最先端の技術を通して、岡本太郎の知られざる素顔に迫る・・・」といった内容。
「テレビ見ますか、音楽にしますか?」
「いえ、面白そうなんで・・・岡本太郎・・・」
「僕もこういう番組好きなんですよ」
店内を見れば、山を撮影した写真がたくさん壁に貼ってあり、希望する人には販売もしてくれると書いてある。
そして、店内は山小屋風に造られている。椅子やテーブルも手作り。自然木が何本も床から生えているような造りである。マスターのお話によれば、すべて仲間で手作りしたとのこと。
「こちらのお店は何年やってらっしゃるんですか?」
「もう33年ですねえ・・・」
「33年ですかあ・・・」
「ずっと変人でやってますよ」と笑顔。
夏は外でビアガーデンをするそうである。店の廻りにうっそうと茂っているのは「ぶどう」であった。
焼き物が出てくる。赤鳥つくねが美味しかった。
2杯目はレモンサワー。
レモンサワーをいただきながらテレビを見て、さらにマスターといろいろお話をする。
3杯目は燗酒二合である。
いわし目刺しをいただく。
燗酒はレンジでチンではなく、お湯で燗を付けてくれる。
さらに、おでんのチクワブと大根も頼んだ。
「定休日はいつなんですか?」
「火曜日なんですけどね、山に行ってる時もありますしね」
「登山の時には、火曜前後もお休みになるんですか?」
「まあ、火曜といっても、いつでもやってると思ってください。月に1、2回しか休みませんから、そんな感じでやってます・・・」とのこと。
こちらのお店はカラオケもある。ちゃんと焼鳥もあって、おでんもあって、他の料理も出してくれる。店は山小屋風。それでいてカラオケの設備もある。そして、もう33年も続いているのだ。分類の出来ない雰囲気。ゆえに、今回は「番外編」として紹介することにした。
まだ他にお客さんもいらっしゃらないので、練習として3曲歌わせてもらった。私としては珍しい。
河島英五の「時代遅れ」、坂本龍一作曲で前川清の「雪列車」など。あと一曲は何であったか失念。
1曲200円。6曲のチケットもあって1000円で6曲が歌えるとのこと。
マスターは実際には写真家だけれども、どこか美術の先生の雰囲気がある。山の好きな美術の先生。そんな感じである。昔、中学や高校時代に気の合う先生の部屋(職員室ではなく○○準備室といった場所)で、夕暮れ時にいろいろとお話をした頃を思い出す。
午後6時45分から8時15分まで1時間半ほどの滞在。
お勘定は3,740円のところおまけしてくれて3700円であった。
森の奥の小さな小屋にいるような雰囲気の中、楽しく不思議な時を過ごすことが出来た。
「また、お寄り下さい」というマスターの言葉に送られ、厚い木製の扉を開けて外へ出る。
外は住宅街。目の前を静かに呑み川が流れていた。

池上 酒仙小舎【峠】
住所 東京都大田区仲池上2-29-20
電話 03-3755-3973
定休日 火曜休(但、月に1、2回)
営業時間 16:00~?
交通 東急池上線池上駅下車徒歩15分・東急バス池上橋停留所から徒歩5分
ホッピー原理主義者とは?
ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
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Re: お久しぶりです・・・