雪谷大塚 居酒屋「クエルヤ」第2回
雪谷大塚 居酒屋「クエルヤ」 第2回




2011年3月11日に起きた「東日本大震災」以後、連日の余震、福島での原発事故、流通の破綻等、様々な物理的・精神的要因からゆっくりと酒を飲むことがなかった。
目の前の危機が去ってはいないとはいえ、地震から2週間以上が過ぎた。緊張感がそう長く続く訳もない。人心地つきたいと思っているところへ、友人のGAIが電話をしてきてくれた。我が家のことをいろいろと心配をしてくれる。その中には、私が12歳の時に亡くなった父の墓の修復のこともある。やはり、会って話そうということになった。まずは、sakuraとGAIと3人で外で会い、買い物をしてから自宅に戻って、母を交えて久しぶりに楽しい時を過ごすことが出来た。
※ ※ ※
GAIを送っていった後、久しぶりに独りで飲みたいと思った。向かったのは、今年の正月、まだ市場が開いていない為、食材が無くなってしまい、焼き鳥を食べることが出来なかったお店、東急池上線の雪谷大塚駅近くにある焼鳥の店「クエルヤ」である。記事としては第389回で紹介している。
前回の記事で紹介したような独特の外観。シャッターの一部をくりぬいて造った不思議な扉を開いて中に入る。
カウンターの中のマスターが笑顔で迎えてくれる。
日曜日の遅い時間である為か静かである。他にお客さんはいない。左手の四人掛けカウンターの一番手前に座る。少しして、二階からお客さんたちの笑い声が聞こえ、ほっとする。
まずは、緑茶サワー(380円)をお願いする。
「串焼き、お願いします・・・前回食べられなかったので・・・」と言う。
「そうでしたね、すみませんでした。今日も種類がちょっと少ないので・・・」と、3ヶ月近くたっているのに覚えていてくれた。
いろいろと相談をしながら、ササミ・ワサビ(サビキキ)、ササミ・梅じそ、シソツクネ、ネギマを各1本づつ頼んだ。
こちらのササミは、生で刺身として出す為のものなのであって、焼き物として出すのは珍しいそうである。うっすらと生の部分を残して焼いてあるササミが美味しかった。つくねもネギマも美味しかった。
いろいろなことがあって、改めて、食べることの素晴らしさを感じる。私たちの国には、本当に美味しい食材がたくさんある。それもみな自然が豊かであるからだ。その自然を破壊することは自分たちで自分たちの首を絞めることになる。
緑茶サワーを飲みながら、マスターの手を止めないように気をつかいながら、震災のことなど少しお話をする。
やはり、大震災からの復興には、「経済」の建て直しが必要である。
どうせ飲むなら、ぜひ、東北の被災を受けた酒蔵の酒を飲みたいと思う。
こちらのお店では、宮城県の「株式会社一ノ蔵」のお酒を飲ませてもらうことにした。
「一ノ蔵」は宮城県大崎市松山千石にある酒造メーカーである。「株式会社一ノ蔵」さんのホームページを読むと、震度6強の揺れを観測したそうである。地震の影響で仕込み蔵が被害を受け、酒の仕込みを中断している状況とのこと。でも、貯蔵タンクの転倒は免れ、原酒は無事であるそうで、瓶詰めラインの修復を行い、一部の商品の出荷を開始したそうである。
宮城の酒、一ノ蔵(480円)が升の中に入れられたグラスに注がれる。たっぷりの量である。
マスターがサービスで「いぶりがっこ」を出してくれた。これは秋田の漬物である。大根を囲炉裏の上につるして燻製にしてから、米糠と塩で漬けこんだものである。これを少しだけかじってから「酒」を飲む。使い古された表現かもしれないが、自分が「日本人」であることを確認したような瞬間だ。
さらに、鳥好きの私としては、やはりとり刺し(680円)をお願いしてしまった。
すると、量的に少ないのでサービスで出してくださった。
そのままでは申し訳ないので、ねばねば三昧(480円)を頼んだ。とろろ、めかぶ、納豆の3種類を混ぜたものである。
3杯目の飲物は、黒豆茶サワー(380円)をいただく。
午後9時40分から10時40分まで、ちょうど1時間の滞在。お勘定は2,540円であった。
久しぶりの「独り呑み」である。買い物に行ったついでに、家人と一緒にそそくさと30分ほどチェーンの居酒屋で飲んだ事もあった。買い物帰りに缶の発泡酒を飲みながら歩いた。心配になって身内的な酒場に顔を出すこともあった。しかし、居酒屋探偵DAITENの気持ちになって飲んだのは久しぶりである。目の前の危機は去っていない。しかし、止まる訳にはゆかない。
「経済活動」再開である。

雪谷大塚 居酒屋「クエルヤ」
住所 東京都大田区雪谷大塚町19-7
電話 03-3748-3499
定休日 定休日未定
営業時間 18:00~26:00
交通 東急雪谷大塚線駅下車徒歩3分。
ホッピー原理主義者とは?
ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
実力派俳優になりたい人は→ 演出家守輪咲良のページ「さくらの便り」
Re: No title