三鷹 居酒屋「加賀屋 三鷹店」
三鷹 居酒屋「加賀屋 三鷹店」
~イントロ酒場ではない店を探して~




第410回、第411回、第412回の3回に渡って、親友のGAIと二人で飲み歩いたことを書いた。父の墓の修復の下見の帰りのことである。今回は実際の修復にかかる前に墓内の植木を処理する為であった。
生木を切るということは、心身ともに疲れるものであるとGAIが言う。やはり、命を奪うことになるからだ。霊園を午後4時頃に出た時には、二人とも「エネルギーの注入」が必要であるとの結論に達していた。エネルギーとは「酒」である。
本来ならば、GAIの地元である吉祥寺に再び行くつもりだったのだけれど、JR中央線の吉祥寺の西隣の駅、三鷹に行ってみようというGAIの提案に従うことにした。三鷹の街に来るのも二十年ぶりであった。隣町に住むGAIでさえも十数年ぶりであるという。
まずは、南口側に降りてみる。駅の売店で缶ビールを購入。古い記憶を辿り、飲みながらの散策である。
ところが、予想を遙かに超えて街は変わってしまっていた。駅改札の高さからそのままいくつかのビルへ行くことが出来るペデストリアンデッキが出来ていた。
放射状の道が数本あって、その道と道の間がうまくつながらない。建ち並ぶマンションとマンションの間に小さな家や雑居ビルが押し込められていて、マンション予定地に違いない広大な土地が駐車場になっている。思いの外、歩き回ってしまった。迷子になったような感覚である。
店を選んで歩いているうちにGAIがこういった。
「また、イントロかあ・・・」
「イントロ?」
「インチキなレトロってことだよ」
「イントロ酒場かあ、自然にお店が古くなっていい味わいになったのではなく、無理矢理つくったレトロ趣味の店ってことか・・・そうだよなあ、最近多いよな、変な装飾ばかりで、中身の無い店・・・」
それからはこういう会話が続いた。
「ここはどうかなあ?」
「イントロだね」
「あっ、また、イントロ酒場だあ・・・」
結局、北口側に行くことにした。
北口もまた、ずいぶん変わってしまっていた。広いロータリーに降り立つと、目の前に2本のタワーマンションが建っているのが見えた。周辺を少し歩く。古い店が残る路地などもない。
結局、1時間も歩いて入りたいと思うお店を発見できないのである。
二人とも疲労感でいっぱいになっていた。
「俺たちのオアシスはどこにあるんだ!」と叫んでしまった。GAIが笑う。
「ひとたび酒が入りはじめると、古典酒場チャージが切れはじめるんだ」と私。
「ウルトラマンのカラータイマーだな・・・」とGAI。
2本のタワーマンションの間を歩いてゆくと、駅前に至る広い通りが見えた。
GAIが何かに気が付いた。
「おい、あのホッピーの旗みたいなのは・・・」
「ホッピーの幟だろ・・・」
「なんで、あんな駐車場の脇の何もないような場所に立ってるんだ?」
「・・・ということは、その向かい側にきっと店が・・・」
二人で急いで道を渡り、急ぎ足でゆく。
すると、その幟の向かい側に見えてきたのは、なんと「加賀屋」の看板であった。
「居酒屋探偵DAITENの目が変わったな、獲物を見つけたハンターの目だ」とGAIが笑う。
ところが同じ「加賀屋」の看板をつけた店が二店舗並んでいたのである。外からのぞく。左手の店の方が狭く、右手の店の方が新しく広いようである。
両店とも外から写真撮影をした。


何度か書いている通り、やはり「困った時の加賀屋」である。
過去に加賀屋の支店を紹介したのは、第16回、第89回、第194回、第270回の4回である。
右手の広い方のお店に入ってみることにした。
苦労が報われた気持ちである。入って右手には7席のカウンター席、カウンターの中は調理場である。6人掛けテーブル席が2つと4人掛けテーブルが2つほど。
まずは、ホッピーセット(420円)の白を氷無しで2つと、特製煮込み(420円)を頼む。「大串もつ焼き2本220円」と書いてある。カシラとナンコツは塩で、コブクロはタレでお願いする。
店内を見回す。ここで、さきほど、外側から2店舗に見えたお店が実は奥の方でつながっていることが解った。迷う必要はなかったのである。
煮込みは鍋に入って出てくる。加賀屋定番商品の特製煮込みである。ジャガイモが入っているのが面白い。
焼き物が来る。肉がおおぶりで、カシラもナンコツも歯ごたえが良い。コブクロも弾力があり美味い。
さらに、ポテトサラダ(350円)を頼んだ。アイスクリームサーバーで半球が2つ造ってある。
美味ヤキニク2本(280円)と元祖ホルモン2本(280円)の2つのメニューが気になり迷う。
黒ホッピーセット(420円)の氷無しを2つ頼み、ジョッキに入ってきた焼酎を半分GAIに進呈する。
最近は、酒が弱くなっている。ホッピーセットを頼む時、セットを頼まないうちに、いきなり「外」と言ってしまいそうである。「これがホントのホッピー原理主義」という話もある(笑)。
山ゴボウ漬け(280円)と小肌酢(420円)を頼む。小肌酢についていたレモンをホッピーの中へ少し入れる。
トイレに立った時、奥でつながっているもう一つのお店の方をのぞいてみる。テーブルが6つほど、それから奥の方に20人くらいは座れる座敷もあった。思いの外広いお店である。
やっと決めることが出来て、元祖ホルモン2本(280円)を頼んだ。そして、それに合う飲物として、また瓶ビールで締めることにした。サッポロ黒ラベル大瓶(550円)である。
厚揚げ(350円)も頼んだ。厚揚げが一つまるまるやってきてリーズナブルである。
さきほどの1本が最後にならず、2本目のサッポロ黒ラベル大瓶(550円)を頼んでしまった。二人で話していると話が尽きることがない。
午後6時15分から午後8時30分まで、2時間15分というのは私としては長い。お勘定は2人で5,470円であった。
外に出る。JR三鷹駅から中央線に乗り、吉祥寺で降りた。改札で握手をしてGAIと別れた。
京王井の頭線に乗り換え帰ることになる。この路線の途中には、子供の頃の苦い思い出の場所がある。また、その記憶がよみがえるのだった。墓参りとは記憶を呼び覚ますものだ。

三鷹 居酒屋「加賀屋 三鷹店」
住所 東京都武蔵野市中町1-9-8
電話 0422-51-2811
定休 日曜日 祝祭日
営業時間 17:00~23:00
交通 JR三鷹駅下車徒歩5分
ホッピー原理主義者とは?
ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
実力派俳優になりたい人は→ 演出家守輪咲良のページ「さくらの便り」
Re: No title