武蔵新田 やきとり「まるすみ商店」
Life of the izakaya detective DAITEN
居酒屋探偵DAITENの生活 第515回 2013年4月24日(水) 【地域別】 【時間順】 【がっかり集】
武蔵新田 やきとり「まるすみ商店」
~ 名残りの街 ~

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東急多摩川線の武蔵新田駅の周辺にはお酒を飲ませる店が多い。
居酒屋も多く、駅の近くには、第272回で紹介した角打ち的立ち飲み、飯田酒店さんもある。
「武蔵新田」という街に初めて足を踏み入れたのは、今から十数年前かもしれない。
大田区、品川区、目黒区等、東京城南地区に点在する「黒湯温泉」に入ることを楽しみにしていた時期があった。
今のように「居酒屋」を探して歩くのではなく、「黒湯温泉」の銭湯に入った帰り、居酒屋で食事をすることが多かったのである。
「武蔵新田」には、「新田浴場」と「森の湯」の2軒の黒湯温泉の銭湯がある。駅から少し離れた新田神社の並びにあるのが「新田浴場」であり、駅前通り沿いにあるのが「森の湯」である。
その「森の湯」の斜め前に「新田ストアー」という、いわゆる「マーケット」があり、何軒かのお店が入っていた。
時が経ち、生鮮食料品の店が集まった「マーケット」という形態は無くなって、入口に「肉のまさきや」という肉屋さんだけとなっていた。
駅改札から歩いてきて、「肉のまさきや」さんの前を通りすぎると、そこは五叉路になっている。五叉路の一角に「山縣屋」さんという「うなぎ屋」さんの味わいある建物が建っていたことを思い出す。「山縣屋」さんは取り壊されて、今はコインパーキングとなっている。脇を通りながら右へ曲がった。
「この先に何か赤提灯が見えないかなあ」と思いながら歩く。
右手を見た。すると小さな空き地があり、「四角いトンネル」の中からの灯りがその空き地を照らしていた。近づいてみる。すると、それは、前述の「新田ストアー」の裏口だった。

裏口側に一番近い一画はお店ではない。表口の方には「肉のまさきや」さんが見えた。そして、その間に挟まれた場所に黄色い提灯がぶら下がっていた。前を通ってみる。それはやきとり屋さんであった。
しかし、その日は中に入って見なかった。カウンターは満席の様子。時間も無く、その日は入店を躊躇った。
※ ※ ※
さて、2週間ほどして再訪。こちらのお店に入ってみることにした。
つまり、上と下の写真には2週間の時間差があるのである。
店名は「まるすみ商店」。今日はカウンター席に座っている方はお二人だけであった。

間口が広く奥行きが狭い店構えである。右手の方の入口を入ると右手に四人席テーブルが一つ。左手に一直線のカウンターがあり、その中が調理場となっている。二週間前とは違い、カウンター席には先客がお二人だけであった。
カウンターの中には若いマスターがお一人。
寒い日であり、雨模様だったのでコートを着ていた。コートを脱ぎ、背後の柱にかかったハンガーにかける。
恰幅の良い先客の方から「雨はふっておりますか?」と聞かれる。
「はい、さきほどは降っていましたが今は止んでいます」と答えた。
やはり、天気の話は酒場でのコミュニケーションのきっかけになる。
席にやっとおちついて、酎ハイ(300円)をお願いする。お通しは、大根と厚揚げ煮のあんかけである。
「やきものは1本でも良いですか?」
「どうぞ、大丈夫です」
そこで、とり串(100円)、なんこつ(ヤゲン)(120円)、せせり(120円)、限定はつもと(150円)を1本ずつ頼んだ。
少しして、若いマスターが申し訳なさそな顔になった。
「すみません、はつもと、今日は入ってませんでした」とのこと。仕方なく、代わりにはつ(100円)を選ぶ。残念である。
酎ハイを一口飲んで、店内を見廻す、また飲んで見廻す。居酒屋探偵はちょっと挙動不審である。
カウンターの上の壁に4月のお休みが書いてあった。
4月は4日(木曜)、14日(日曜)、23日(火曜)、29日(月・祝)が休みとのこと。変則的で、まさに不定休である。
やきものは少しずつ出てくる。はつもとではないけれど、代わりのはつも美味しかった。
もう一人お客様が入ってこられた。水ぎょうざ(380円)をその方が頼まれた。
「私も便乗させてもらって、水ぎょうざお願いします」と頼んだ。
2杯目は、100%グレープフルーツハイ(350円)である。
お客さんから蒲田に出来た有名店の話がでる。酒場でのお店の噂は面白い。
そこには「情報」があり、「本音」を聞くことが出来る。タイアップ取材の多いマスコミ情報など宛にはならないのである。
水ぎょうざは、酢醤油とポン酢のうち、酢醤油を選んで食べた。一つ一つ手作りとのこと。
後から入ってこられた方もはつもとを注文される。無いという答えに残念そうであった。
酎水(300円)というものに目がとまった。
「ちゅうすいというのは、焼酎の水割りのことですか?」とマスターに聞く。
「はい、前に働いていた店が「ちゅうすい」と呼んでいたので、そのまま書いてしまったんです」とのこと。
面白い。3杯目は酎水(300円)にした。
ゴマはつ(120円)が気になった。1本だけではちょっと申しわけないので、他の方の焼き物と一緒に頼んだ。ごま油、万能ネギ、ニンニクのタレがかかっていた。うまい。他に、ゴマればもある。
「開店してどのくらいなんですか?」と聞いてみる。
「2012年6月7日に開店ですから、もう少しで一年たちます」とのこと。
左となりの方がレバーペースト(380円)を頼まれた。
子供の頃、よくレバーペーストの缶詰を空けて食べたことを思い出す。
酎水(ちゅうすい)の残りを飲んで、御勘定をお願いする。コートを着て、リュックを背負う。身支度がたいへんだ。
午後7時から8時まで1時間ほどの滞在。御勘定は2,090円だった。千円札2枚と100円玉を出して、10円のおつりをもらう。リーズナブルである。良い店だ。
※ ※ ※
歴史を調べてみると、この街の背景、奥行きを感じる。太平洋戦争で日本が敗れた直後に出来た場所、いわゆる「大人の街」があったのだ。その辺りに実際に行ってみる。もちろん、すでに住宅街となっており、名残りを感じさせるものは少ない。
ただ、「鮨芳」さんという味わいある佇まいの鮨屋さんがあった。
昭和14年に発表された岡本かの子の小説「鮨」を思いだす。
その頃の「大人たち」も入ったに違いないと、勝手な想像をする。
「名残りの街」を少し歩いてから、家路につくため武蔵新田駅に戻った。
そして、武蔵新田駅の作りつけのベンチに久しぶりに座ってみる。
ことのほか低いベンチである。駅の開業は大正12年であるが、このベンチはいつからあるのだろうか。
そして、どれだけたくさんの人が座ったのだろうか。そんなことを思う。

武蔵新田 やきとり「まるすみ商店」
住所 東京都大田区矢口1-17-4
電話 03-5482-6330
営業時間 17:00~25:00
定休日 不定休
交通 東急多摩川線武蔵新田駅から徒歩1分
ホッピー原理主義者とは?
ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。
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居酒屋探偵DAITENの生活 第515回 2013年4月24日(水) 【地域別】 【時間順】 【がっかり集】
武蔵新田 やきとり「まるすみ商店」
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東急多摩川線の武蔵新田駅の周辺にはお酒を飲ませる店が多い。
居酒屋も多く、駅の近くには、第272回で紹介した角打ち的立ち飲み、飯田酒店さんもある。
「武蔵新田」という街に初めて足を踏み入れたのは、今から十数年前かもしれない。
大田区、品川区、目黒区等、東京城南地区に点在する「黒湯温泉」に入ることを楽しみにしていた時期があった。
今のように「居酒屋」を探して歩くのではなく、「黒湯温泉」の銭湯に入った帰り、居酒屋で食事をすることが多かったのである。
「武蔵新田」には、「新田浴場」と「森の湯」の2軒の黒湯温泉の銭湯がある。駅から少し離れた新田神社の並びにあるのが「新田浴場」であり、駅前通り沿いにあるのが「森の湯」である。
その「森の湯」の斜め前に「新田ストアー」という、いわゆる「マーケット」があり、何軒かのお店が入っていた。
時が経ち、生鮮食料品の店が集まった「マーケット」という形態は無くなって、入口に「肉のまさきや」という肉屋さんだけとなっていた。
駅改札から歩いてきて、「肉のまさきや」さんの前を通りすぎると、そこは五叉路になっている。五叉路の一角に「山縣屋」さんという「うなぎ屋」さんの味わいある建物が建っていたことを思い出す。「山縣屋」さんは取り壊されて、今はコインパーキングとなっている。脇を通りながら右へ曲がった。
「この先に何か赤提灯が見えないかなあ」と思いながら歩く。
右手を見た。すると小さな空き地があり、「四角いトンネル」の中からの灯りがその空き地を照らしていた。近づいてみる。すると、それは、前述の「新田ストアー」の裏口だった。

裏口側に一番近い一画はお店ではない。表口の方には「肉のまさきや」さんが見えた。そして、その間に挟まれた場所に黄色い提灯がぶら下がっていた。前を通ってみる。それはやきとり屋さんであった。
しかし、その日は中に入って見なかった。カウンターは満席の様子。時間も無く、その日は入店を躊躇った。
※ ※ ※
さて、2週間ほどして再訪。こちらのお店に入ってみることにした。
つまり、上と下の写真には2週間の時間差があるのである。
店名は「まるすみ商店」。今日はカウンター席に座っている方はお二人だけであった。

間口が広く奥行きが狭い店構えである。右手の方の入口を入ると右手に四人席テーブルが一つ。左手に一直線のカウンターがあり、その中が調理場となっている。二週間前とは違い、カウンター席には先客がお二人だけであった。
カウンターの中には若いマスターがお一人。
寒い日であり、雨模様だったのでコートを着ていた。コートを脱ぎ、背後の柱にかかったハンガーにかける。
恰幅の良い先客の方から「雨はふっておりますか?」と聞かれる。
「はい、さきほどは降っていましたが今は止んでいます」と答えた。
やはり、天気の話は酒場でのコミュニケーションのきっかけになる。
席にやっとおちついて、酎ハイ(300円)をお願いする。お通しは、大根と厚揚げ煮のあんかけである。
「やきものは1本でも良いですか?」
「どうぞ、大丈夫です」
そこで、とり串(100円)、なんこつ(ヤゲン)(120円)、せせり(120円)、限定はつもと(150円)を1本ずつ頼んだ。
少しして、若いマスターが申し訳なさそな顔になった。
「すみません、はつもと、今日は入ってませんでした」とのこと。仕方なく、代わりにはつ(100円)を選ぶ。残念である。
酎ハイを一口飲んで、店内を見廻す、また飲んで見廻す。居酒屋探偵はちょっと挙動不審である。
カウンターの上の壁に4月のお休みが書いてあった。
4月は4日(木曜)、14日(日曜)、23日(火曜)、29日(月・祝)が休みとのこと。変則的で、まさに不定休である。
やきものは少しずつ出てくる。はつもとではないけれど、代わりのはつも美味しかった。
もう一人お客様が入ってこられた。水ぎょうざ(380円)をその方が頼まれた。
「私も便乗させてもらって、水ぎょうざお願いします」と頼んだ。
2杯目は、100%グレープフルーツハイ(350円)である。
お客さんから蒲田に出来た有名店の話がでる。酒場でのお店の噂は面白い。
そこには「情報」があり、「本音」を聞くことが出来る。タイアップ取材の多いマスコミ情報など宛にはならないのである。
水ぎょうざは、酢醤油とポン酢のうち、酢醤油を選んで食べた。一つ一つ手作りとのこと。
後から入ってこられた方もはつもとを注文される。無いという答えに残念そうであった。
酎水(300円)というものに目がとまった。
「ちゅうすいというのは、焼酎の水割りのことですか?」とマスターに聞く。
「はい、前に働いていた店が「ちゅうすい」と呼んでいたので、そのまま書いてしまったんです」とのこと。
面白い。3杯目は酎水(300円)にした。
ゴマはつ(120円)が気になった。1本だけではちょっと申しわけないので、他の方の焼き物と一緒に頼んだ。ごま油、万能ネギ、ニンニクのタレがかかっていた。うまい。他に、ゴマればもある。
「開店してどのくらいなんですか?」と聞いてみる。
「2012年6月7日に開店ですから、もう少しで一年たちます」とのこと。
左となりの方がレバーペースト(380円)を頼まれた。
子供の頃、よくレバーペーストの缶詰を空けて食べたことを思い出す。
酎水(ちゅうすい)の残りを飲んで、御勘定をお願いする。コートを着て、リュックを背負う。身支度がたいへんだ。
午後7時から8時まで1時間ほどの滞在。御勘定は2,090円だった。千円札2枚と100円玉を出して、10円のおつりをもらう。リーズナブルである。良い店だ。
※ ※ ※
歴史を調べてみると、この街の背景、奥行きを感じる。太平洋戦争で日本が敗れた直後に出来た場所、いわゆる「大人の街」があったのだ。その辺りに実際に行ってみる。もちろん、すでに住宅街となっており、名残りを感じさせるものは少ない。
ただ、「鮨芳」さんという味わいある佇まいの鮨屋さんがあった。
昭和14年に発表された岡本かの子の小説「鮨」を思いだす。
その頃の「大人たち」も入ったに違いないと、勝手な想像をする。
「名残りの街」を少し歩いてから、家路につくため武蔵新田駅に戻った。
そして、武蔵新田駅の作りつけのベンチに久しぶりに座ってみる。
ことのほか低いベンチである。駅の開業は大正12年であるが、このベンチはいつからあるのだろうか。
そして、どれだけたくさんの人が座ったのだろうか。そんなことを思う。

武蔵新田 やきとり「まるすみ商店」
住所 東京都大田区矢口1-17-4
電話 03-5482-6330
営業時間 17:00~25:00
定休日 不定休
交通 東急多摩川線武蔵新田駅から徒歩1分
ホッピー原理主義者とは?
ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。
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