「深川安楽亭」を見て池袋居酒屋「ふくろ」へ
Life of the izakaya detective DAITEN
居酒屋探偵DAITENの生活 第7回 2007年1月27日(土) 【地域別】 【時間順】
「深川安楽亭」を見て池袋居酒屋「ふくろ」へ
池袋東京芸術劇場 青年座公演「深川安楽亭」観劇
青年座の時代劇「深川安楽亭」を見るために、池袋・東京芸術劇場に向かう。「深川安楽亭」は山本周五郎の原作を小松幹生氏が脚本にした作品である。SAKURAが演出した青年座第104回スタジオ公演「COLORSⅡ~シャンソンと愛のモルナールあえ」に出演されていた青年座のベテラン俳優名取幸政さんが同作品に出演されている為、SAKURA、咲良舎の俳優創間元哉と共に観劇に駆けつけた。
「深川安楽亭」は深川の運河に囲まれた場所にある居酒屋だ。といっても、気質の人間がブラリと寄れる店ではない。そこに出入りするのは無頼の徒ばかりである。冒頭のシーン、そこに現れた場違いな男の「俺は知ってるぜ、この店がどんな店か」という言葉に店中の人間が緊張する。秀逸な導入部である。
「安楽亭」の主人幾蔵役の山本龍二さんの漂わせる「殺気」を楽しみ、やがて見せる「孤独」に胸が痛む。特に幾蔵の最後の台詞「一番話したいのはこの俺だ」が身にしみた。
山本龍二氏とは青年座第61回スタジオ公演「東海道四谷怪談」の時に、終演後、酒席でご一緒したことがある。1990年8月であるから、なんと17年前である。
登場する無頼の者たちは、とにかく酒を呑む、酒を呑みながら話す、喧嘩をする。江戸時代の話であるのに、抜け荷を扱っている所以か、幾蔵だけは赤ワインまで飲み出す。見ていて酒を呑みたくなった。
終演後、名取さんとロビーでお会いして、酒席に来ていただく約束をする。
池袋の大規模大衆居酒屋「ふくろ」
SAKURA、創間と共に向かったのは、東京芸術劇場の近くにある、池袋最大級の大衆居酒屋「ふくろ」である。「ふくろ」は3階建てのビルになっている。店に入って、4人であることを伝えると、上に上がるように言われる。1階には40人ほどは座れようかという「大カウンター」がある。階段を上がると、2階にも1階とまったく同じ「大カウンター」を発見。これは凄い。さては、3階も・・・と思いながら上がると、そこにはテーブルが数卓、その奥に座敷席があり、その座敷席に3人で座る。
早速ホッピーを注文すると、焼酎の入った緑色のガラス徳利の1合ビン、サワーグラス、ホッピーの瓶、マドラー付きの氷入れの4種が出てきた。焼酎が190円。ホッピー瓶190円、併せて380円である。これはじっくりホッピーを呑める最高の組み合わせではないか。壁の短冊に「煮こごり」の文字を発見、大衆居酒屋で煮こごりに出会うことはあまりない。刺身などと共に注文する。
この店のつまみは、焼き物、刺身、酢の物、煮物、天ぷら等何でもある。そして、どれも安い、その上、毎月8日はつまみ類が全品半額になるらしい。もつ煮込み400円が200円になるというわけである。さぞかし混むに違いない。
店に入ったのが午後9時半を回っていたので、10時過ぎには揚げ物はラストオーダーとなった。急いで唐揚げを頼む。
しばらくして、名取幸政氏がいらっしゃった。劇団概要によれば青年座は「1954年5月、当時、俳優座の準劇団員であった若者が、俳優座から別れて作った劇団」である。名取氏は1963年(昭和38年)の入団とのこと、青年座創世記のメンバーと言える。
普段は無口で物静かな名取氏がこの日はよくお話をしてくださった。ベテラン俳優としての経験に裏打ちされたお話に感銘をうけた。
池袋の駅で名取氏と別れ、山の手線に乗ったのは午後11時過ぎであった。
青年座公演「深川安楽亭」に登場する男たちは孤独だった。絶望的な「孤独」の末に、小さな救いがあり、この物語は終わるが、男たちの「孤独」はさらに続く。
「深川安楽亭」の無頼の男たちは、他に「安楽な場所」がない故に、そこに集まっていた。「深川安楽亭」の「安楽」とは、アイロニーとしての「安楽」であった。
現代の居酒屋に集まる男たちもまた「孤独」を抱えている、その孤独を癒す為に酒を呑む。ただ酒を呑むだけならば、家でも呑める。見知らぬ同志が肩を並べ、時には黙ったまま、時には世間話に花が咲き、酒に酔い、味に満たされる。そして、勘定を払い、全員が確実に店を出て去ってゆく。そんな「立ち寄る場所」であるがゆえに癒されるのだ。人生に区切りをつける「句読点」、それが「居酒屋」の本質かもしれない。
毎日のように行ける値段の安さ、誠実で飽きのこない味付け、押しつけがない接客、それらがきちんと揃った店は流行る。また行きたくなる。
私にとっての「安楽亭」を探してまた歩く。死を迎える前日に、大好きな「居酒屋」に立ち寄ることが出来たとしたら、それはそれで本望といえる。
池袋 大衆酒場「ふくろ」 豊島区西池袋1-14-2
電話03-3986-2968
営業時間 平日07:00~24:00(2、3階16:00~24:00)日曜祝日07:00~23:00) 年中無休
実力派俳優になりたい人は→ 演出家守輪咲良のページ「さくらの便り」
居酒屋探偵DAITENの生活 第7回 2007年1月27日(土) 【地域別】 【時間順】
「深川安楽亭」を見て池袋居酒屋「ふくろ」へ
池袋東京芸術劇場 青年座公演「深川安楽亭」観劇
青年座の時代劇「深川安楽亭」を見るために、池袋・東京芸術劇場に向かう。「深川安楽亭」は山本周五郎の原作を小松幹生氏が脚本にした作品である。SAKURAが演出した青年座第104回スタジオ公演「COLORSⅡ~シャンソンと愛のモルナールあえ」に出演されていた青年座のベテラン俳優名取幸政さんが同作品に出演されている為、SAKURA、咲良舎の俳優創間元哉と共に観劇に駆けつけた。
「深川安楽亭」は深川の運河に囲まれた場所にある居酒屋だ。といっても、気質の人間がブラリと寄れる店ではない。そこに出入りするのは無頼の徒ばかりである。冒頭のシーン、そこに現れた場違いな男の「俺は知ってるぜ、この店がどんな店か」という言葉に店中の人間が緊張する。秀逸な導入部である。
「安楽亭」の主人幾蔵役の山本龍二さんの漂わせる「殺気」を楽しみ、やがて見せる「孤独」に胸が痛む。特に幾蔵の最後の台詞「一番話したいのはこの俺だ」が身にしみた。
山本龍二氏とは青年座第61回スタジオ公演「東海道四谷怪談」の時に、終演後、酒席でご一緒したことがある。1990年8月であるから、なんと17年前である。
登場する無頼の者たちは、とにかく酒を呑む、酒を呑みながら話す、喧嘩をする。江戸時代の話であるのに、抜け荷を扱っている所以か、幾蔵だけは赤ワインまで飲み出す。見ていて酒を呑みたくなった。
終演後、名取さんとロビーでお会いして、酒席に来ていただく約束をする。
池袋の大規模大衆居酒屋「ふくろ」
SAKURA、創間と共に向かったのは、東京芸術劇場の近くにある、池袋最大級の大衆居酒屋「ふくろ」である。「ふくろ」は3階建てのビルになっている。店に入って、4人であることを伝えると、上に上がるように言われる。1階には40人ほどは座れようかという「大カウンター」がある。階段を上がると、2階にも1階とまったく同じ「大カウンター」を発見。これは凄い。さては、3階も・・・と思いながら上がると、そこにはテーブルが数卓、その奥に座敷席があり、その座敷席に3人で座る。
早速ホッピーを注文すると、焼酎の入った緑色のガラス徳利の1合ビン、サワーグラス、ホッピーの瓶、マドラー付きの氷入れの4種が出てきた。焼酎が190円。ホッピー瓶190円、併せて380円である。これはじっくりホッピーを呑める最高の組み合わせではないか。壁の短冊に「煮こごり」の文字を発見、大衆居酒屋で煮こごりに出会うことはあまりない。刺身などと共に注文する。
この店のつまみは、焼き物、刺身、酢の物、煮物、天ぷら等何でもある。そして、どれも安い、その上、毎月8日はつまみ類が全品半額になるらしい。もつ煮込み400円が200円になるというわけである。さぞかし混むに違いない。
店に入ったのが午後9時半を回っていたので、10時過ぎには揚げ物はラストオーダーとなった。急いで唐揚げを頼む。
しばらくして、名取幸政氏がいらっしゃった。劇団概要によれば青年座は「1954年5月、当時、俳優座の準劇団員であった若者が、俳優座から別れて作った劇団」である。名取氏は1963年(昭和38年)の入団とのこと、青年座創世記のメンバーと言える。
普段は無口で物静かな名取氏がこの日はよくお話をしてくださった。ベテラン俳優としての経験に裏打ちされたお話に感銘をうけた。
池袋の駅で名取氏と別れ、山の手線に乗ったのは午後11時過ぎであった。
青年座公演「深川安楽亭」に登場する男たちは孤独だった。絶望的な「孤独」の末に、小さな救いがあり、この物語は終わるが、男たちの「孤独」はさらに続く。
「深川安楽亭」の無頼の男たちは、他に「安楽な場所」がない故に、そこに集まっていた。「深川安楽亭」の「安楽」とは、アイロニーとしての「安楽」であった。
現代の居酒屋に集まる男たちもまた「孤独」を抱えている、その孤独を癒す為に酒を呑む。ただ酒を呑むだけならば、家でも呑める。見知らぬ同志が肩を並べ、時には黙ったまま、時には世間話に花が咲き、酒に酔い、味に満たされる。そして、勘定を払い、全員が確実に店を出て去ってゆく。そんな「立ち寄る場所」であるがゆえに癒されるのだ。人生に区切りをつける「句読点」、それが「居酒屋」の本質かもしれない。
毎日のように行ける値段の安さ、誠実で飽きのこない味付け、押しつけがない接客、それらがきちんと揃った店は流行る。また行きたくなる。
私にとっての「安楽亭」を探してまた歩く。死を迎える前日に、大好きな「居酒屋」に立ち寄ることが出来たとしたら、それはそれで本望といえる。
池袋 大衆酒場「ふくろ」 豊島区西池袋1-14-2
電話03-3986-2968
営業時間 平日07:00~24:00(2、3階16:00~24:00)日曜祝日07:00~23:00) 年中無休
実力派俳優になりたい人は→ 演出家守輪咲良のページ「さくらの便り」