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居酒屋探偵DAITENの生活 「あえて店名を伏せたまま」第3回『池上線某駅近く、メニューは無いけれどお安い常連酒場』

Life of the izakaya detective DAITEN  【地域別】  【時間順】  【がっかり集】
居酒屋探偵DAITENの生活 「あえて店名を伏せたまま」第3回 『池上線某駅近く、メニューは無いけれどお安い常連酒場』



 居酒屋探偵DAITENの生活 「あえて店名を伏せたまま」第3回
 『池上線某駅近く、メニューは無いけれどお安い常連酒場』

 
  お店のお名前を伏せているので、今回もまた写真は仙台四郎

 居酒屋を巡り、そのことをブログに書いていると、様々な方から「この街の店が気になるので行ってみてくれ」、「自分が行ってみて、感じたことがあるので、試しに行ってみて感想を書いてほしい」というお話がある。
 そして、実際に行ってみれば、とても良いお店の場合も多く、記事にして紹介をすることもある。しかし、御常連ではない一般の方が突然に行っても楽しめないかもしない。また、お店の方や御常連の皆さんはネットで紹介されることを望まないのではないかと想像できる時もある。しかし、そこで起きた出来事は面白く、紹介をしたいと思うのだ。
 少し前から、そんな場合を「居酒屋エッセイ」という曖昧な名前のカテゴリーで書き始めた。
 そんなお店で起きたことを「あえて店名を伏せたまま」というカテゴリーにまとめることにした。
 ゆえに、今回がいきなりこのカテゴリーでの第3回ということになったのだ。

     ※    ※    ※

 普段はあまり降りないけれど、好きな酒場があるという理由だけで降りてみる駅がある。その駅のことが頭に浮かんだ。
 しかし、その日は電車ではなく、路線バスに揺られてその駅まで歩いて行けるバス停を降りてみることにした。
 碁盤の目状の町並み、マンションや住宅、小さな工場や事務所が並ぶ、特徴のあまりない地域である。
 角を曲がってみた。遠くに東急池上線の踏切が見え、緑色の車体が通り過ぎて行った。
 あの踏切を渡って、左に行けば駅があると見当をつける。しかし、その踏切の手前右手にずっと以前から気になっているお店があったのである。

 外見は比較的地味である。小料理屋といった風情だろうか。外に価格を示すものは何もない。
 暖簾の隙間から店内が見える。左手にはカウンター。右手の小上がり座敷に座卓が三つ。
 
 引き戸を開けて中に入る。左手のカウンターの中に作務衣(さむえ)を着た大将のお姿。この道何十年のベテランの大将に違いない。カウンター席に御高齢の男女の方々がお二人並んでおられる。その向こう側のカウンターの一番端に男性の方が一人座られておられた。
 白衣なども着ていない方で、お酒を飲んでいる様子もない、しかし、お店の方ではないようだ。
 居酒屋さんで時々、お店の方か御常連なのか解らない方がいらっしゃる。大将や女将、マスターやママさんが一人で営業されているお店では、そういう内輪的な御常連によく会うのである。
 
 作務衣大将
 「何、飲まれますかあ」とおっしゃる。
 店内の壁などに貼られた飲み物のメニューを探してしまう。
 その様子を見て大将がおっしゃった。
 「メニュー?」
 「はい」
 「うち、メニュー無いの・・・生、サワー、ウイスキーかなあ・・・うちは安いから大丈夫ですよ」
 「それじゃ、生で・・・」

 生ビールがやってくる前に、ナスの煮浸しカクテキ等三品の突き出しが出てきた。
 持ってきてくださったのは前述のカウンターの一番端に座っておられる方であった。
 生ビールもやってくる。美味しく生ビールをいただいた。

 御夫婦らしい方々が前述の男性や大将と話をされている。
 私は、顔見知りの方々ばかりのお店に、新参者の自分がいるだけでも迷惑じゃないのかと考えてしまう。
 しかし、自分から不自然に話しかけることはしない、大将や御常連の方から口火をきってくださった時だけ、ちゃんと答えるのである。それから様子を見て、軽い質問をしてみるのである。
 中には、どなたも何も聞いてくださらないお店もある。
 実際に、そういうお店も世の中にはあって、そういう空気を感じた時は、早々に帰ることにしている。
 でも、こちらのお店は違う。無理をしない程度に気を遣ってくださる。

 「本当はお酒飲みたいんですけど・・・・サワーで」と私。
 「そんなこと言わないで、お酒飲みなさいよ」と笑顔の大将。
 「血糖値が怖いんで・・・サワーお願いします」
 「サワーはね、リンゴ、レモン、ウーロンかな・・・炭酸大丈夫?」
 「はい、大丈夫です・・・それじゃレモン、焼酎薄めでお願いします」

 レモンサワーを飲みながら考える。
 作務衣の大将の姿を見て思い出したことがあるのだ。
 母方の祖母は私を僧侶にしようとしたのである。小学校を出たらお寺に修行に行くことを母にすすめたのである。
 まるでタイの少年のようである。今、思えば、その方が良かったのかもしれない。
 実際、飲み屋さんでお話をする中、周囲の皆さんが僧侶であると勘違いされ、そのままお話をしてしまう時がある。
 最近は否定せず、そのままにしてしまう。大典寺という架空の寺の住職というキャラクターである。

 常連の方々と話が盛り上がっている。
 私は一人店内を眺める。お店の奥にはカラオケの装置がある。
 もう少し遅い時間になれば、皆さん歌われるに違いない。

 「塩辛食べられる?」と大将。
 「好きなんですけど、今、塩分気をつけているんで・・・」と私。
 「長なすと南蛮の煮浸しはどう?・・・南蛮はちょっと辛いけどね」
 「あっ、はい・・・」
 「いいよ、食べてみて」

 並びの御常連の方が「お酒強そうですね」などと声をかけてくださる。
 新参者に少しずつ近寄るように、気にかけてくれるのはうれしい。
 だんだんにやはりお酒が飲みたくなってしまった。

 「やっぱり、あの、おっしゃる通りお酒飲みます・・・あったかいのあります?」と私。
 「あっためればあるよ」と笑う大将。
 「そうですよね、最初から暖かいのは、無いですよね・・・あっ、常温でいいです、お酒」
 「はい、お酒ね」
 「それからタコ刺しもお願いします。」
 「はい、タコ刺しね」

 タコは丁寧にお仕事をされた姿で出てきた。
 お酒に合う。

 「マスターのお知り合い?」と御常連に聞かれる。
 「この辺の方ですかあ・・・」とも聞かれる。
 「いいえ、散歩の途中の飛び込みです。」と答えた。
 「これを機会に来てくださいね」と、御常連の女性の方。

 その駅の名前が昔は別の名前であったことを思い出して、皆さんに聞いてみた。
 ちゃんと御存知であった。やはり、長く地元に住まわれる方々である。

 来た時は外は明るかった。
 今、ちょっと外を見ると暗くなっている。
 遠くから踏み切りの音が少し聞こえた。
 お酒を暖める必要はなかった。
 十分に暖まったのである。
 お勘定をお願いして、奥の方へ行って待つ。
 「はい、二千円です・・・安いでしょ」と大将。
 酒類三杯につまみ四品である。安いと感じた。
 「また来てくださいね」と御常連。

 外に出る。
 一瞬、自分の向かう駅の方向が解らなくなった。
 どこか、地方の小さな街にいるような気持ちになる。
 初めての酒場に入る。
 その酒場に入る前の自分と、その酒場を出た時の自分が変化しているのは、酔いのためだけではない。
 その時の気分の変化は、私が酒場巡りをする理由の多くの部分を占めているのかもしれない。

 (了)


ホッピー原理主義者とは?
ホッピービバレッジが推奨する飲み方【3冷】を【原理】として、どこの酒場でもできるだけ原理通りの飲み方をしようと努力する酒飲みのこと。特に、大量の氷と多すぎる焼酎を入れたホッピーは、焼酎のオンザロックのホッピー味であって、本当の「ホッピー」ではないと考える。ホッピービバレッジの「飲み方いろいろ」を参照。

「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら

実力派俳優になりたい方はこちらを是非ごらんください→ 守輪咲良のSAKURA ACTING PLACE

Comments 4

新岳大典

Re: No title

>海美夜」は、居酒屋ではなく、音楽BARですが、大井町に御寄りの際は、どうぞ。

お誘い、ありがとうございます。

  • 2014-09-05 (Fri) 14:07
  • REPLY
海美夜

No title

ブログ、時々参考にさせていただいてます。
「海美夜」は、居酒屋ではなく、
音楽BARですが、
大井町に御寄りの際は、
どうぞ。

  • 2014-09-05 (Fri) 13:59
  • REPLY
オケ

No title

新岳様

ご連絡ありがとうございます。近いうちに訪問したいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
オケ

新岳大典

Re: No title

オケ様

探偵です。コメントありがとうございます。

了解しました。駅名とだいたいの場所のみ書かせていただきます。

第2回のお店は雪谷大塚のオオゼキの裏です。店名を示す看板が無いのが逆に特徴になります。
あえて、店名を持たないということは、あまり忙しくなるのも本意ではないのかもしれません。
また、マスターのこだわりもあるのでしょう。

第3回のお店は千鳥町の千鳥町駅前郵便局近くの踏切から見えます。
どちらかといえば、カラオケを楽しむ地元の方々中心のお店だと思います。

あえて、このようなカテゴリを作ったのは、私のブログがいわゆる「グルメブログ」ではなく、酒場での味わいある出来事を紹介するブログだからです。お店の方々もネットで来訪される方より、地元の御常連を大切にしたいという気持ちもあると思います。その辺を考慮の上、御訪問ください。

  • 2014-09-04 (Thu) 17:43
  • REPLY