日吉 立ち呑み「寅さん」
Life of the izakaya detective DAITEN
居酒屋探偵DAITENの生活 第585回 2015年02月21日(土) 【地域別】 【池上線】 【時間順】 【がっかり集】
日吉 立ち呑み「寅さん」
~ 寅さんの営業力 ~

日吉駅の東側には慶應義塾大学の日吉キャンパスが広がっている。
飲食店などが多くあるのは日吉駅の西側である。西側広場の駅前から五本の道が放射状に伸びている。
東横線と平行に北へ伸びるサンロード、その西には浜銀通り、さらに駅前から九十度方向に日吉中央通り、その南側に普通部通りとがある。何故その通りの名前かといえば、慶応義塾普通部(中学校)があるのだ。東横線と平行に南へ向かう通りには名前が無い。
これらの放射状に広がる五本の通りをつなぐ環状線のような道が六本ほどある。地図で見ると「蜘蛛の巣」に似ている。
これらの道を三十分ほど巡り回った後、駅前に戻ってから浜銀通りに入ってゆくと、右斜めに分岐する道を発見した。東側のサンロードと平行な道である。その道は先でT字路にぶつかって終わる。そのT字路の手前の左手に黄色い提灯が並んでいることに気づいた。見れば、看板に立ち呑み「寅さん」とある。

二段くらいの段差を上がり、縄のれんをくぐり、中に入ると、左手に四人掛テーブル二つ、二人掛テーブルが二つ、右手には掘り炬燵式の小上がり座敷があり、四人卓が四つ。卓を着けたり離したりできるようになっているようだ。座敷もテーブル席もたくさんの人が入っている。
「立ち呑みではないんだ・・・」と心の中でつぶやく。しかし、それは間違っていた。
奥の方を見ると、左手奥にL字カウンターを発見。皆さんが立っており、立つ場所が無さそうに見えるほど盛況である。
すると、すぐに私に気づいたお店の方がやってくる。
指一本を立てて、一人であることを示すと、カウンターの角辺りの人と人の間の隙間を示された。
その隙間の前に立ち、荷物を足元に置く。
「はい、お飲み物はどうされますか?」
「ホッピー白を氷り無しでお願いします・・・」と頼んだ。
まずは、ホッピー(四二〇円)の氷無し。
こちらのホッピーは最初から中生ジョッキに焼酎とホッピーを入れてもってくるタイプ。焼酎の入ったジョッキとホッピー瓶というセット式ではない。
おまかせホルモン(五〇〇円)とカニ風味マカロニサラダ(四〇〇円)を頼んだ。
並びの方たちもカニ風味マカロニサラダ食べている様子なので頼んだのである。
おまかせホルモンは、様々な部位が皿に盛られて出てくる。なかなかインパクトのあるホルモンである。カニ風味マカロニサラダは私の好きなタイプ。
後から後から新しくお客様がやってくる。その度に、大将らしき方と女将さんらしき方がどんどん仕切るのである。
立ち呑みカウンターの上で我々は、左右に行ったり来たりする。
「私がもっとあっちに行きましょうか?」と私。
「大丈夫ですよ、お知り合いが並べるようにね・・・」と大将が小声でおっしゃる。そして、ニヤリと笑う。
大将は知り合い同志がきちんと話せるように、そして、私のように初めて一人で来た人間にもちょっと声をかけてくれる。
大将の笑顔と大きな声、笑い声がすごい。
「恐れ入ります・・・ちょっと左へ」と女将さんに言われ、また移動する。嫌な気持ちにはならない。ちょっと楽しいのである。
※ ※ ※
昔、両国駅の構内、駅舎脇に仮設された黒色テントの中で見た【森田童子「ねじ式」黒色テント劇場】というライブを思い出した。雨の中、次々に客がやってくる。
ステージの近くの床のクッションに座った我々は、あまりにも混み合うテントの中で、座ったまま少しづつ前へ前へにじりよる。立ち上がったスタッフが声をあげる。
「皆様、外には傘をさしたお客様があと十名いらっしゃいます。最後尾にあと一列座っていただけるように御協力ください」
そして、「ヨイショ」の声と共に、座ったまま前進する。そして、雨の中、外で立たされていた観客も全員が黒色テント内に入り、森田童子の歌を楽しむことが出来た。心に残る思い出である。(参考=森田童子研究所)
※ ※ ※
二杯目は自家製玉ねぎ割り(四二〇円)というものを頼むことにした。
「あの、自家製玉ねぎ割りってどんな感じですか?」と私。
「玉ねぎの皮のエキスが入っているんですよ、身体の調子が悪い人が飲むものですよ」と笑顔の大将。
「悪いです」と私。
「玉ねぎ割り、一丁」と大将。
三浦長井新物わかめ出汁浸し(四二〇円)が気になった。
「あの、新物わかめ出汁浸しお願いします」と私。
「これ、いいね~」と笑顔の後、「新わかめ一丁!」と大将の声が店内に響く。
わかめにのった針生姜が効いている。うまい。
最初入った時からずれて、正面にテレビが見える辺りになる。
空いたサラはどんどん下げる。なにしろ、時々ずれなければならないので、下げてもらう方が良いのだ。
「すごいオペレーションの居酒屋だなぁ」と思った。
一杯目のホッピーは、氷無しで頼み、ジョッキ一杯に出来上がった状態で出てきた。
それなら氷り有りはどうなんだろうと思い、頼んでみた。
「すみません、黒ホッピー、今度は氷り有りで・・・」
出てきたものを見て、ちょっと驚いた。
いわゆる大生ジョッキに黒ホッピーと焼酎と氷が入ったものが出てきたのである。
普通の白ホッピーではなく、黒ホッピー(四二〇円)は面白いと思う。飲み応えがあり、見応えがある一杯だ。
集まってこられる方々は釣り好きの様子。最近の釣果の話で盛り上がっている。
釣り仲間が集まる居酒屋は良い店が多いと思っている。
テレビでは、長年やっている「鬼ころしのCM」が流れていた。テレビ東京である。
ニラのおひたし(三二〇円)を大将に頼む。
さらに左へ移動。
「新ワカメの出し汁、飲んだ方がいいですよ」と大将。
正しい。うまい。
ニラのおひたしが出てくる。新鮮で美しいニラである。
「ニラに醤油だけでなく酢を入れるとまたいいよ」と大将。
「ニラって、こんなに美味かったのか」と思う。
L字カウンターの中の焼き台で起こされる炭火が美しい。
偶然にみつけたすごい店。
どんどん位置の変わる立ち飲みカウンター。素敵である。
御勘定を頼むと、二九〇〇円であった。
お客さんへの配慮がすごい。外国人のお客さんたちもいて、老若男女、客層は様々である。
「居酒屋探偵」として、こんなに感動した酒場は久しぶりである。
大将は常連の方々との「写真撮影」を済ませた後、目ざとく一人帰る私を見つけて、外まで来てくれた。
「日吉ですか?」
「いろいろ回ってます」
大将の笑顔に送られ、帰路についた。
営業力に悩んだ居酒屋店主の方はこのお店に行ってみていただきたい。大将の姿は勉強になる。
滞在は午後七時から八時まで一時間ほど。
私としては食べ過ぎ飲み過ぎ。おなかも一杯、酔いも廻ってきている。
※ ※ ※
追記 思い出すのは、六年前の第190回で紹介した立ち呑み「寅七」さんである。日吉にはトラグループという飲食グループがあると聞いた。調べてみたいと思う。

日吉 立ち呑み「寅さん」
住所 神奈川県横浜市港北区日吉2-5-15
電話 045-564-1129
定休日 日曜日
営業時間 17:00~23:30。
交通 東急東横線・東急目黒線日吉駅下車徒歩3分。
街の手帖については、コトノハ/街の手帖編集部へ。
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
実力派俳優になりたい方はこちらを是非ごらんください→ 守輪咲良のSAKURA ACTING PLACE
居酒屋探偵DAITENの生活 第585回 2015年02月21日(土) 【地域別】 【池上線】 【時間順】 【がっかり集】
日吉 立ち呑み「寅さん」
~ 寅さんの営業力 ~

日吉駅の東側には慶應義塾大学の日吉キャンパスが広がっている。
飲食店などが多くあるのは日吉駅の西側である。西側広場の駅前から五本の道が放射状に伸びている。
東横線と平行に北へ伸びるサンロード、その西には浜銀通り、さらに駅前から九十度方向に日吉中央通り、その南側に普通部通りとがある。何故その通りの名前かといえば、慶応義塾普通部(中学校)があるのだ。東横線と平行に南へ向かう通りには名前が無い。
これらの放射状に広がる五本の通りをつなぐ環状線のような道が六本ほどある。地図で見ると「蜘蛛の巣」に似ている。
これらの道を三十分ほど巡り回った後、駅前に戻ってから浜銀通りに入ってゆくと、右斜めに分岐する道を発見した。東側のサンロードと平行な道である。その道は先でT字路にぶつかって終わる。そのT字路の手前の左手に黄色い提灯が並んでいることに気づいた。見れば、看板に立ち呑み「寅さん」とある。

二段くらいの段差を上がり、縄のれんをくぐり、中に入ると、左手に四人掛テーブル二つ、二人掛テーブルが二つ、右手には掘り炬燵式の小上がり座敷があり、四人卓が四つ。卓を着けたり離したりできるようになっているようだ。座敷もテーブル席もたくさんの人が入っている。
「立ち呑みではないんだ・・・」と心の中でつぶやく。しかし、それは間違っていた。
奥の方を見ると、左手奥にL字カウンターを発見。皆さんが立っており、立つ場所が無さそうに見えるほど盛況である。
すると、すぐに私に気づいたお店の方がやってくる。
指一本を立てて、一人であることを示すと、カウンターの角辺りの人と人の間の隙間を示された。
その隙間の前に立ち、荷物を足元に置く。
「はい、お飲み物はどうされますか?」
「ホッピー白を氷り無しでお願いします・・・」と頼んだ。
まずは、ホッピー(四二〇円)の氷無し。
こちらのホッピーは最初から中生ジョッキに焼酎とホッピーを入れてもってくるタイプ。焼酎の入ったジョッキとホッピー瓶というセット式ではない。
おまかせホルモン(五〇〇円)とカニ風味マカロニサラダ(四〇〇円)を頼んだ。
並びの方たちもカニ風味マカロニサラダ食べている様子なので頼んだのである。
おまかせホルモンは、様々な部位が皿に盛られて出てくる。なかなかインパクトのあるホルモンである。カニ風味マカロニサラダは私の好きなタイプ。
後から後から新しくお客様がやってくる。その度に、大将らしき方と女将さんらしき方がどんどん仕切るのである。
立ち呑みカウンターの上で我々は、左右に行ったり来たりする。
「私がもっとあっちに行きましょうか?」と私。
「大丈夫ですよ、お知り合いが並べるようにね・・・」と大将が小声でおっしゃる。そして、ニヤリと笑う。
大将は知り合い同志がきちんと話せるように、そして、私のように初めて一人で来た人間にもちょっと声をかけてくれる。
大将の笑顔と大きな声、笑い声がすごい。
「恐れ入ります・・・ちょっと左へ」と女将さんに言われ、また移動する。嫌な気持ちにはならない。ちょっと楽しいのである。
※ ※ ※
昔、両国駅の構内、駅舎脇に仮設された黒色テントの中で見た【森田童子「ねじ式」黒色テント劇場】というライブを思い出した。雨の中、次々に客がやってくる。
ステージの近くの床のクッションに座った我々は、あまりにも混み合うテントの中で、座ったまま少しづつ前へ前へにじりよる。立ち上がったスタッフが声をあげる。
「皆様、外には傘をさしたお客様があと十名いらっしゃいます。最後尾にあと一列座っていただけるように御協力ください」
そして、「ヨイショ」の声と共に、座ったまま前進する。そして、雨の中、外で立たされていた観客も全員が黒色テント内に入り、森田童子の歌を楽しむことが出来た。心に残る思い出である。(参考=森田童子研究所)
※ ※ ※
二杯目は自家製玉ねぎ割り(四二〇円)というものを頼むことにした。
「あの、自家製玉ねぎ割りってどんな感じですか?」と私。
「玉ねぎの皮のエキスが入っているんですよ、身体の調子が悪い人が飲むものですよ」と笑顔の大将。
「悪いです」と私。
「玉ねぎ割り、一丁」と大将。
三浦長井新物わかめ出汁浸し(四二〇円)が気になった。
「あの、新物わかめ出汁浸しお願いします」と私。
「これ、いいね~」と笑顔の後、「新わかめ一丁!」と大将の声が店内に響く。
わかめにのった針生姜が効いている。うまい。
最初入った時からずれて、正面にテレビが見える辺りになる。
空いたサラはどんどん下げる。なにしろ、時々ずれなければならないので、下げてもらう方が良いのだ。
「すごいオペレーションの居酒屋だなぁ」と思った。
一杯目のホッピーは、氷無しで頼み、ジョッキ一杯に出来上がった状態で出てきた。
それなら氷り有りはどうなんだろうと思い、頼んでみた。
「すみません、黒ホッピー、今度は氷り有りで・・・」
出てきたものを見て、ちょっと驚いた。
いわゆる大生ジョッキに黒ホッピーと焼酎と氷が入ったものが出てきたのである。
普通の白ホッピーではなく、黒ホッピー(四二〇円)は面白いと思う。飲み応えがあり、見応えがある一杯だ。
集まってこられる方々は釣り好きの様子。最近の釣果の話で盛り上がっている。
釣り仲間が集まる居酒屋は良い店が多いと思っている。
テレビでは、長年やっている「鬼ころしのCM」が流れていた。テレビ東京である。
ニラのおひたし(三二〇円)を大将に頼む。
さらに左へ移動。
「新ワカメの出し汁、飲んだ方がいいですよ」と大将。
正しい。うまい。
ニラのおひたしが出てくる。新鮮で美しいニラである。
「ニラに醤油だけでなく酢を入れるとまたいいよ」と大将。
「ニラって、こんなに美味かったのか」と思う。
L字カウンターの中の焼き台で起こされる炭火が美しい。
偶然にみつけたすごい店。
どんどん位置の変わる立ち飲みカウンター。素敵である。
御勘定を頼むと、二九〇〇円であった。
お客さんへの配慮がすごい。外国人のお客さんたちもいて、老若男女、客層は様々である。
「居酒屋探偵」として、こんなに感動した酒場は久しぶりである。
大将は常連の方々との「写真撮影」を済ませた後、目ざとく一人帰る私を見つけて、外まで来てくれた。
「日吉ですか?」
「いろいろ回ってます」
大将の笑顔に送られ、帰路についた。
営業力に悩んだ居酒屋店主の方はこのお店に行ってみていただきたい。大将の姿は勉強になる。
滞在は午後七時から八時まで一時間ほど。
私としては食べ過ぎ飲み過ぎ。おなかも一杯、酔いも廻ってきている。
※ ※ ※
追記 思い出すのは、六年前の第190回で紹介した立ち呑み「寅七」さんである。日吉にはトラグループという飲食グループがあると聞いた。調べてみたいと思う。

日吉 立ち呑み「寅さん」
住所 神奈川県横浜市港北区日吉2-5-15
電話 045-564-1129
定休日 日曜日
営業時間 17:00~23:30。
交通 東急東横線・東急目黒線日吉駅下車徒歩3分。
街の手帖については、コトノハ/街の手帖編集部へ。
「ホッピーを原理主義的に飲む方法」はこちら。
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